国土交通省 賃貸住宅の原状回復ガイドラインをわかりやすく解説!退去時の費用負担はどうなる?

賃貸物件を退去する際、「原状回復費用」という名目で高額な請求を受けている借主は少なくありません。
「これって本当に払う必要があるの?」と疑問に思ったことのある方も多いでしょう。
実は、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」という指針を公表しており、これに基づけば不当な請求から身を守ることができます。
このガイドラインは、賃貸住宅の退去時における原状回復の費用負担のルールを明確にしたもので、借主と貸主の間で生じやすいトラブルを未然に防ぐことを目的としています。
最新版では、経年劣化や通常使用による損耗については借主に修繕費用の負担義務がないことがはっきりと示されています。
この記事では、原状回復ガイドラインの内容をわかりやすく解説し、耐用年数や経年劣化、減価償却の考え方、そして退去時の費用負担の割合について詳しく説明します。
これを理解することで、退去時のトラブルを避け、不当な請求から自分を守るための知識を得ることができます。

監修者
1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。
日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号
原状回復の意味と基礎知識

原状回復とは、賃借人(借主)が賃貸物件を借りた当時の状態に戻すことを指します。
しかし、すべてを元の状態に戻す必要があるわけではありません。
国土交通省のガイドラインでは、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されています。
- 日常生活で生じる自然な劣化(経年劣化)や通常の使用による損耗は借主負担ではない
- タバコのヤニや落書き、ペットによる傷などは「通常の使用を超える損耗」として借主負担となる
- ガイドラインは法的拘束力はないが、裁判の判断基準として用いられることが多い
賃貸の退去費用に関する注意点

退去費用は、賃貸契約書に記載された原状回復の規定や、物件の経年劣化、損耗の程度によって大きく変わります。
一般的には、敷金から原状回復費用や清掃費用が差し引かれて返還されますが、修繕が必要な場合は追加で費用が請求されることもあります。
国土交通省のガイドラインによると、通常の使用による損耗は賃貸人が負担し、故意・過失や通常の使用を超える損耗は賃借人が負担するのが原則です。
例えば、壁紙の一部が傷んだ場合、その部分だけを修復する費用は賃借人の負担となりますが、部屋全体の壁紙を張り替える必要がある場合は賃貸人が負担すべきとされています。
また、経過年数や入居年数を考慮して負担割合が調整されるため、長期間住んでいた場合の負担は軽減される傾向にあります。
退去費用の相場を把握するためには、契約内容や物件の状態をしっかり確認し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることが重要です。
1.退去時には修繕と清掃作業を実施する

賃貸物件を退去する際、賃貸人が定めた契約書に原状回復に関する規定がある場合は、その規定に従わなければなりません。
つまり、賃貸人が指定した業者によって原状回復を行わなければならず、自分自身や指定業者以外に原状回復を行わせることはできません。
ただし、賃貸借契約書に賃借人が自分で原状回復を行う旨が規定されている場合は、自分で行ったり、指定業者に行わせたりすることができます。
- 契約書に原状回復に関する規定がある場合は、その規定に従う
- 賃貸人が指定した業者によって原状回復を行うのが通例
2.敷金返還請求および原状回復費用の減額請求をする
入居時に敷金を預けている方は、賃貸借契約書に基づいて、原状回復費用や清掃費用などが差し引かれた金額が返金されます。
また、入居時にハウスクリーニング代を支払っている方は、清掃作業のみであれば追加で原状回復費用の請求はないでしょう。
一方、修繕が必要であった場合は、原状回復費用を請求される可能性があります。
賃借人の原状回復義務の範囲
契約終了時には、建物の損耗について賃貸人と賃借人で責任を分担するため、通常の使用による損耗とそれ以外の損耗に区分けがされています。
- 賃借人の通常の使用による損耗
- 賃借人の通常の使用により生ずる損耗以外の損耗
通常の使用による損耗については原状回復義務がなく、それ以外の損耗については原状回復義務があります。
つまり、通常の損耗については賃貸人が費用を負担し、それ以外の損耗については賃借人が費用を負担することになります。

国土交通省のガイドラインによると、建物が劣化したり損傷を受けた場合、建物の価値が下がると考えられます。
そのため、建物の修繕費用を決める際に、損耗の程度を分かりやすくするため、損耗を3つに分類しています。
- 賃借人の通常の使用による損耗
- 経年変化
建物・設備等の自然的な劣化・損耗等 - 通常損耗
賃借人の通常の使用により生ずる損耗等
- 賃借人の通常の使用により生ずる損耗以外の損耗
- 特別損耗
賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等
このうち、国土交通省のガイドラインでは❸を念頭に置いて、原状回復が定義されています。
したがって、賃貸物件に住む際、建物の補修・修繕費用について、賃借人が負担すべき費用は、故意・過失や通常使用を超えた❸特別損耗に限られます。
一方、賃貸人が負担すべき費用は、入居者を確保するためのリフォームや通常使用による損耗の修繕です。

大前提として、契約終了時には、建物の元の状態に戻す義務があることを理解しておくことが大切です。
賃借人の負担対象範囲


賃借人の負担対象範囲の基本的な考え方として、原状回復とは、借りた物件を返す際に、元の状態に戻すことを指します。
このとき、壊れてしまった部分を修復することが必要ですが、その修復の範囲は最小限にとどめ、できるだけ壊れた部分だけを直すことが原則です。
例えば壁のクロスの場合、毀損箇所だけを修繕するだけでは商品価値を維持できない場合があり、部屋全体のクロスの張替えが必要になることがありますが、クロスの色や模様が一致しなくても、物件としての価値が低下するわけではありません。
このような場合、全体のクロスを揃えることは、物件の価値を維持するためには必要ですが、原状回復の範囲を超える利益を得ることになるため、賃貸人が負担するべきとなります。
一方、毀損した部分だけを修復しても、その箇所が目立ってしまうことがあります。
このような場合は、毀損した部分を含む一面分のクロスを張替えることが妥当と考え、この費用は、毀損を引き起こした賃借人が負担することになります。
このように、賃貸人と賃借人の間に認識の違いがある場合は、補修工事の最低施工可能範囲や負担を考慮し、客観的に判断する必要があります。
建物の損耗等について


建物が経年変化や通常の使用によって傷んでいくことは避けられません。
しかし、具体的にどの程度の傷みが「通常の使用」とされ、賃貸人と賃借人の負担割合がどうなるかは定義が曖昧でトラブルの原因になります。
このため、国土交通省のガイドラインでは、具体的な苦情や相談事例をもとに、判断基準を設け、トラブルを予防・解決するためのガイドラインを示しています。
建物の経年変化や通常の使用による損耗は、賃貸契約期間中に起こる予想されることであり、その修繕費用は賃料に含まれています。
つまり、通常の使用によって生じた修繕費用は、賃借人が負担する必要がなく、賃貸人が負担することになります。
しかし、賃借人の住み方や使い方によって生じる損耗の中には、意図的な過失、注意義務の違反などによる❸特別損耗が含まれます。
したがって、意図的な過失、注意義務の違反が見受けられる場合は、借人の原状回復の義務を負い、費用の負担についても検討が必要になります。
賃借人が手入れを怠ったことで損耗が広がった場合、賃借人には管理の怠慢があると考えられ、❸特別損耗と見なされる場合があります。



これらの個々の事例においては、客観的で合理的な基準がなく、実務的にも煩雑であるため、国土交通省のガイドラインでは詳細な負担割合の算定は行っていません。
経過年数の考え方



例えば、クロスの耐用年数は6年です。2021年に入居していれば、現在のクロスの残存価値は、333円/㎡です。2027年に退去(入居期間が6年)すれば、原状回復費用は発生しない(0円)ということになります。
物件の賃貸契約において、設備や家具などは経年劣化するため、一定の期間が経過すると価値が下がります。
これを「減価償却」と言います。
賃借人が、建物や設備を壊したり、手入れを怠って損傷が生じた場合、賃貸人は、賃借人に修繕費用の負担を求めることができますが、通常の損耗や年数経過による劣化は、契約期間中に支払った賃料に含まれており、修繕費用の全額を賃借人が負担することはありません。
なぜなら、通常の損耗や年数経過による劣化は、賃貸人と賃借人が契約する際に、互いに前提としているものだからです。
そのため、これらの費用は、賃貸人と賃借人が契約期間中に支払った賃料で補てんされるため、明け渡し時には、通常の損耗や年数経過による劣化による費用は賃借人が負担する必要がないとされています。
また、賃借人が建物や設備を1年で損傷させた場合と、10年で損傷させた場合では、後者の場合の方が、経年変化や通常の損耗がより大きくなっているはずです。
そのため、建物や設備の経年年数を考慮して、賃借人の負担割合を調整することが適切となります。
つまり、経年年数が長い場合には、賃借人の負担割合を低く設定することが必要となります。
関連記事:自分で原状回復費用を計算してみる
入居年数による代替


経過年数を考慮する場合、新築でない賃貸物件では、設備や修繕のタイミングは異なります。
そのため、管理者が完全に把握することは難しく、入居時に提示された経過年数も確認できないことがあります。
他方、入居年数は明確でわかりやすいため、国土交通省のガイドラインでは、経過年数を入居年数で代替する考え方を採用しています。
ただし、入居時の設備状態は、必ずしも新品のものばかりではないため、その設備状況によって経過年数を調整して負担割合を決定します。
なお、契約当事者が協議して決定し、設備交換をした場合は設備の価値は新品の扱いとなりますが、そうでない設備は建築後の経過年数や損耗を考慮して適切な負担割合を決定します。
賃借人は物件を注意して使う義務があることも忘れずに注意しましょう。
経過年数(入居年数)を考慮しない修繕


建物の部位で、長い期間使える部分や、部分的に修繕できる箇所(例えば、フローリング)については、経過年数を考慮する必要はありません。
なぜなら、部分的に修繕しても、将来的には全体を張替えることが一般的であり、部分的に修繕したからといっても、全体の価値が上がるわけではないからです。
つまり、賃貸人が負担するのが妥当です。
それに、部分的に修繕した場合でも、フローリング全体の価値は減っている可能性があるので、修繕費用を全額賃借人に負担させるのは不合理です。
また、襖紙や障子紙、畳表などの消耗品についても、経過年数を考慮する必要はありません。
なぜなら、これらのものはすぐに価値が下がってしまうからです。
減価償却資産のうち、これらのものの使用可能期間が1年未満のものや取得価額が10万円未満のものは、消耗品として処理することができます。
ただし、フローリング全体の張替えが必要な毀損の場合には、経過年数を考慮して費用を分担する必要があります。
- 賃借人が負担すべき費用は、故意・過失や通常使用を超えた損耗に限られる
- 通常の損耗や年数経過による劣化は、契約期間中に支払った賃料に含まれている
- 経年年数が長い場合には、賃借人の負担割合を低く設定することが必要
- 建物の部位で、長い期間使える部分や、部分的に修繕できる箇所(例えば、フローリング)については、経過年数を考慮する必要はない
- フローリング全体の張替えが必要な毀損の場合には、経過年数を考慮して費用を分担する
- 襖紙や障子紙、畳表などの消耗品についても、経過年数を考慮する必要はない
3.トラブルに発展した際は少額訴訟とADRを検討


賃貸住宅におけるトラブルは、当事者同士の話し合いで解決することが一般的ですが、解決できない場合は裁判で決着を図ることになります。
しかし、裁判にかかる費用や時間の問題で、多くの人は裁判まで進むことができません。
そのため、最近では少額の請求については費用や時間が少なくて済む簡易裁判所の制度を活用することが多く、また、中立的な第三者を介入させてトラブル解決を図るADRという制度も注目されています。
今後はこれらの制度を利用することで、トラブルが円滑に迅速に解決できることが期待されています。
- 調停(相談・あっせん)
民事調停は、民事紛争を解決する制度で、調停機関が当事者の話し合いを仲介し、互いに譲り合って問題を解決することを目的としています。
手続きが簡単で時間がかからず、少額訴訟よりも解決が早いというメリットがあります。
また、国民生活センターや消費生活センターなどの紛争調整機関では、話し合いや調停が行われ、円満な解決を目指します。
- 仲裁
仲裁とは、法律上の問題がある場合に、裁判所ではなく、私人の第三者(仲裁人)による判断で解決する方法です。
仲裁人の選定が公平かどうかといった問題もありますが、弁護士会や司法書士会、行政書士会などの仲裁センターでは、特別な制限がない場合には様々な問題に対応しています。
調停に比べて仲裁の実績は多くありませんが、取り扱う事案は多岐にわたっており、原状回復や敷金返還請求などの問題も仲裁で解決することができます。
以上のように、トラブル解決には、当事者が自分たちで判断して利用できる簡易的な制度があります。
一般的には、最初に相談・あっせんが試みられ、解決できない場合には、調停、訴訟、仲裁が利用されます。



賃貸住宅に関する相談や苦情処理は、地方自治体の相談窓口や消費生活センターなどの行政機関でも対応しています。しかし、具体的な解決に至っていないのが実情です。
- 当事者同士の話し合いで解決できない場合は現行制度を活用する
- 少額訴訟手続は、60万円以下の金額について、1回の審理で解決できる
- 裁判外紛争処理制度(ADR)は、少額訴訟よりも解決が早い
- 消費生活センターなどの行政機関では、トラブル防止に向けた啓発や紛争解決への助言・仲介、紛争解決制度の情報提供などを行っている
4.賃貸の退去費用に関する注意点のまとめ


賃貸物件を退去する際、退去費用の相場やトラブル防止策を理解することが重要です。
退去後の原状回復トラブルを円滑に解決するためには、契約書の規定を遵守し、賃貸人指定の業者による修繕を基本とし、賃借人は故意・過失や通常使用を超えた損耗に対してのみ費用負担を行い、通常の損耗や経年劣化は賃料に含まれていることを理解する必要があります。
特に、フローリングや消耗品の修繕については経過年数を考慮し、当事者間での話し合いが難しい場合は、少額訴訟手続(60万円以下)やADR、消費生活センターなどの行政機関が提供する紛争解決制度を活用して、公平かつ迅速な解決を目指すべきです。
それでは、ここからは、賃貸の退去立ち会い時の注意点について、国土交通省の原状回復ガイドラインに基づき詳しく見ていきましょう。
賃貸の退去立ち会い時の注意点


退去費用の相場について知りたい方にとって、まず理解しておくべきことは、退去時の手続きや立ち合いの重要性です。
これまでも見てきた通り、退去費用は、物件の状態や修繕が必要な箇所によって大きく変動します。
一般的に、退去費用には清掃費や修繕費が含まれ、これらは入居時の状態に戻すための原状回復費用として計算されます。
特に、通常の使用による損耗や経年劣化は賃貸人が負担する場合が多いですが、入居者の不注意による損傷や汚れは、入居者が負担することになります。
そのため、退去時には部屋の清掃や必要最低限の修繕を行い、トラブルを未然に防ぐことが重要です。
また、退去立ち合いの際には、チェックリストや写真を使って物件の状態を記録し、入居時との比較を行うことで、認識の違いを減らし、適切な費用負担を確認することができます。
敷金の返金も、これらの費用を差し引いた金額となるため、退去時の手続きをしっかりと行うことが、費用の透明性を高める鍵となります。
ここからは、原状回復に関するトラブルを未然に防止するために必要な退去手続きにおいて押さえておくべきポイントを国土交通省のガイドラインに沿って解説しています。
1.賃貸人に退去の意思を伝え、退去日(退去立ち合い日)を決定する


退去する予定がある場合は、できるだけ早めに不動産会社や大家さんに退去の意思を伝える必要があります。
契約書に退去の手続きに関する記載がある場合は、その手続きに従って進めなければなりません。
また、退去日は、契約書に記載された通りの日付を遵守する必要があります。
仮に急用で日時の変更が必要な場合であったとしても、できる限り契約書に沿った内容で進めることが退去トラブルを防止するために必要なことです。
その他、退去日に合わせて、電気・ガス・水道などの端末設備の解約手続きも忘れずに行いましょう。
解約手続きには事前に賃貸人に確認が必要な場合があるので、早めの対応が必要です。



忘れがちな情報はWEBカレンダーに登録して通知機能を使うと良いです。
- 退去日は、契約書に記載された通りの日付を遵守する
- 急用で日時の変更が必要な場合であったとしても、できる限り契約書に沿った内容で進める
- 退去日に合わせて、電気・ガス・水道などの端末設備の解約手続きも忘れずに行う
2.部屋の清掃と最低限の修繕は実施する


退去時における修繕費用に関する問題は、入居時からの損耗や損傷が原因かどうかや、いつ発生したかなどの事実が明確でないことが、大きな問題の一つです。
賃貸物件を借りる際には、入居者には「善良な管理者」としての注意が求められます。
特に建物を借りる場合には、普段の掃除や退去時の清掃をしっかり行い、通常の使用による損耗・損傷以外の大きな被害を与えないように注意する必要があります。
もし、通常の注意を怠ってカビやシミを発生させたり、物件や設備を壊した場合には、入居者は「善管注意義務」に違反したことになり、賠償責任を負うことになります。
また、物件や設備が壊れた場合には、修繕費用は賃貸人が負担することになっていますが、入居者は修繕が必要になった場合には、賃貸人に必ず通知する必要があります。
通知を怠って隣の部屋にまで被害が及んでしまった場合には、入居者が賠償責任を負うことになる場合があるため、退去時には注意が必要です。
したがって、退去時には、清掃は勿論、損耗や損傷が見受けられる個所はできる限り修繕するように心がけて、不要な退去トラブルのリスクを下げることが重要です。
契約書には、物件や設備の適切な使い方や手入れの方法、注意点などを特約として明記されている場合があります。
- 普段の掃除や退去時の清掃をしっかり行い、通常の使用による損耗・損傷以外の大きな被害を与えないように注意する
- 修繕が必要になった場合には、退去までに賃貸人に必ず通知する
- 退去時には、清掃は勿論、損耗や損傷が見受けられる個所はできる限り修繕する
3.退去立ち合いではチェックリストや写真などで記録を残す


前述の「賃貸の入居前にやることの流れと注意点」でも解説していますが、トラブルの原因の一つは、入居時や退去時に物件の状態をきちんと確認しないことです。
特に、長期間の賃貸契約では、当事者の記憶だけでは曖昧になり、損耗や破損などが起きた場所や時期についてトラブルが起こりやすくなります。
そのため、入居時に作成したチェックリストなどの記録を見返し、部屋の状態を部位ごとに確認することが大切です。
入居時と退去時の物件の状態を比較することで、当事者間の認識の違いを減らすことができ、退去トラブルを防止することができます。
また、退去時の立会いで、損傷などがあるということで確認サインを求められることがあります。
賃貸人と賃借人が一緒に立ち会って、物件の状態を確認する退去立ち合いは、原状回復費用負担の決定に関わるため、疑問がある場合は、サインをする前に質問するなど慎重に行うことが必要です。
なお、入居時に敷金を預けている方は、退去後に敷金の返金手続きを行います。
敷金は、賃貸借契約書に基づいて、原状回復費用や清掃費用などが差し引かれた金額が返金されます。
賃貸契約書に原状回復に関する特約がない場合は、賃借人が故意・過失でない限り負担する必要のないものであり、確認サインをしていたとしても、その分について負担する理由はありません。



入居時にチェックリストを記録している人は少ないですが、入居時と退去時の物件の状態を比較することで、当事者間の認識の違いを減らすことができます。
- 入居時に作成した記録を見返し、入居時と退去時の物件の状態を比較する
- 退去時の立会いで、確認サインを求められたら慎重になる
- 入居時に敷金を預けている方は、退去後に敷金の返金手続きを行う
4.賃貸の退去立ち会い時の注意点のまとめ


退去時の手続きや立ち合いの重要性を理解し、退去費用の相場やトラブル防止策を把握することが重要です。
退去の際は、契約書に記載された退去日を厳守し、やむを得ず変更する場合でも可能な限り原契約に沿って進めることが重要です。
退去前に電気・ガス・水道などの設備解約手続きを忘れず、日常的な清掃と退去時の徹底的な清掃を行い、通常の使用による以外の大きな損傷を避けてください。
物件に修繕が必要な箇所がある場合は、退去前に必ず賃貸人に通知し、可能な限り自身で修繕を行います。
入居時の記録と比較しながら物件の状態を確認し、退去時の立会いでは確認サインに慎重に対応し、敷金を預けている場合は退去後に返金手続きを確実に行いましょう。
次に、賃貸の入居時の注意点について、国土交通省の原状回復ガイドラインに基づいて解説します。
賃貸の入居時の注意点


退去時の原状回復費用は、物件の状態や契約内容によって大きく異なるため、事前の確認が不可欠です。
入居日やることとして、部屋の状態を徹底的に確認し、チェックリストや写真、平面図などを活用して記録を残すことで、退去時のトラブルを防ぐことができます。
また、賃貸借契約書に記載された原状回復に関する条件をしっかりと確認し、特に修繕負担範囲や施工目安単価などを明確にしておくことが重要です。
特約が設けられている場合は、その内容が法的に有効かどうかも確認し、賃借人としての負担が過重にならないよう注意しましょう。
これらのポイントを押さえることで、退去費用の相場を把握し、予期せぬ出費を防ぐことが可能になります。
賃貸に入居する前に部屋の状態を確認することで、退去時のトラブルを防ぐことができます。
1.契約前に部屋の状態を確認する


トラブルの原因の一つは、入居時や退去時に物件の状態をきちんと確認しないことです。
特に、長期間の賃貸契約では、当事者の記憶だけでは曖昧になり、損耗や破損などが起きた場所や時期についてトラブルが起こりやすくなります。
そのため、入居時には、チェックリストを作成し、部屋の状態を部位ごとに確認することが大切です。
チェックリストの他にも具体的な箇所や程度を平面図に書いたり、写真を撮るなどのビジュアルな手段を併用することで、当事者間の認識の違いを減らすことができます。
チェックリストなどの記録は、後でトラブルが起こった場合に証拠として役立つため、迅速な解決につながります。
- 入居時にチェックリストを作成する
- 写真を撮る
2.原状回復に関する契約条件を確認する


現在、賃貸借契約において原状回復に関する契約条件については、法的な規制が特に存在していません。
しかし、賃貸借契約において原状回復にかかる費用は、入居時には発生しないものの、将来的に賃借人が負担する可能性があるため、契約時にその内容や金額等の条件が明確になっていることは重要です。
そのため、契約書に原状回復に関する条件を明記し、賃貸人と賃借人の双方が合意した上で契約を締結することが望ましいです。
具体的には、賃借人の修繕負担、負担範囲、原状回復工事施工目安単価などを明確にしておく必要があります。
また、原状回復工事施工目安単価はあくまでも目安であり、例外的な特約としてクロス張替費用(ペット飼育を認める場合)などが想定されることもあります。
以上のように、原状回復に関する契約内容は、賃貸借契約を締結する際に重要なポイントの一つであり、賃貸人と賃借人が事前に合意したうえで契約を行うことが望ましいです。
したがって、契約時に退去トラブルに発展しそうな原状回復に関する契約条件(契約書に記載のある項目)を確認するようにしましょう。



賃貸借契約は、賃貸人と賃借人が契約内容を十分に理解して同意する必要があります。
- 契約書の原状回復に関する条件を確認する
- 修繕負担、負担範囲、原状回復工事施工目安単価を確認する
- 契約内容に疑問点・不明点があれば契約前に賃貸人に確認する
3.賃貸借契約書の特約の要件を理解して契約する


賃貸借契約書には、原則として強行法規に反しない限り特約を設けることができます。
特約とは、通常の原状回復義務を超えた修繕などの義務を賃借人に負わせることができることを指しますが、特定の修繕費用を賃借人が負担する旨の特約は、賃貸人の修繕義務を免除する意味しかなく、有効とはみなされません。
また、経年変化や通常の損耗に対する修繕費用を賃借人が負担する特約は、賃借人に新たな義務を課すことになるため、特定の要件を満たしていない場合は、契約内容が無効となる可能性があります。
賃貸借契約書には、建物の劣化や価値の減少に関する費用負担について特約が設けられることがありますが、その費用を賃借人が負担するためには、契約書に負担額が明確に記載されている必要があります。
また、消費者契約法では、消費者の権利を制限する契約条項は無効とされています。
そのため、賃貸借契約書に特約を設ける場合は、契約書に明確に記載し、賃借人の了解を得ることが重要です。



賃貸借契約書の特約の要件を理解して契約することで、退去時の原状回復に関するトラブルが発生した際に冷静に交渉することができます。
- 経年変化や通常の損耗に対する修繕費用を賃借人が負担する旨の特約がないか確認する
- 建物の劣化や価値の減少に関する費用負担の特約がないか確認する
- 契約内容に疑問点・不明点があれば契約前に賃貸人に確認する
4.賃貸の入居時の注意点のまとめ


賃貸物件を入居する前に、退去時の原状回復費用やトラブル防止策を理解することが重要です。
入居前に、契約書を慎重に確認し、入居時チェックリストを作成するとともに、物件の写真を撮影し、原状回復の条件、修繕負担範囲の項目を確認するようにしましょう。
特に、経年変化や通常損耗に関する修繕費用の特約、建物の劣化や価値減少に関する費用負担条項を注意深く点検し、不明な点や疑問がある場合は、契約締結前に賃貸人に対して明確な説明を求め、後々のトラブルを未然に防ぐことが重要です。
ここからは、実際に、国土交通省の原状回復ガイドラインに掲載されてある、賃貸の退去費用に関する相談事例をわかりやすくまとめました。
これまでの内容を踏まえて実際にどういった相談事例が寄せられているか参考にしていただければと思います。
賃貸の退去費用に関する相談事例


賃貸物件に関するQ&Aを通じて、賃貸契約の際に注意すべきポイントや退去時のトラブルを回避するための重要な知識を得ることができます。
本段落では、契約書の特約や原状回復に関する条項、ハウスクリーニング特約などについて詳しく解説します。
これまでの内容をしっかりと理解した上で、退去時に備えるための事例として参考にしてください。
1.退去後によくある相談事例


敷金の返還請求のタイミングについて
貸主が変わった際の敷金の返還請求先について
退去立会いでサインをした際の原状回復費用の支払いについて
原状回復費用の明細請求について
2.修繕費でよくある相談事例


敷金について
クロスを張替える原状回復費用について
退去時に襖や障子、畳表を張替えについて
「賃借人の善管注意義務」について
少額訴訟制度の制度について
原状回復費用の請求書に納得できない場合の対処法について
原状回復工事の指定について
3.賃貸借契約書でよくある相談事例


賃貸借契約書の特約について
賃貸借契約書で定められた損害賠償額について
「賃借人は原状回復をして明け渡しをしなければならない。」という賃貸借契約書の条項について
賃貸借契約書のハウスクリーニング特約について
4.入居前によくある相談事例


退去時にトラブルを回避するための注意点
賃貸物件を借りる際の注意点
5.賃貸の退去費用に関する相談事例のまとめ


賃貸物件に関するQ&Aを通じて、退去時のトラブルを回避するための重要な注意点や賃貸借契約書の特約について理解を深めることができます。
賃貸物件を借りる際や退去時には、契約書をしっかりと確認し、質問があれば賃貸人に確認することが不可欠です。
特に敷金や修繕費用に関する条件、原状回復の義務、ハウスクリーニング特約については十分に理解しておく必要があります。
また、退去時には物件の状態を確認し、必要な修復を行うこと、部屋の状況をチェックリストに記録すること、そして写真やビデオで証拠を残すことが重要です。
賃貸人との信頼関係を築き、コミュニケーションを大切にすることで、スムーズな退去手続きが実現できます。
最後に、こちらも国土交通省の原状回復ガイドラインに掲載されてあるトラブル事例(判例)をまとめました。
各それぞれ異なるトラブル事例で様々な判決となっています。
こちらも、相談事例と同様に、実際にどういったトラブル事例が寄せられているか参考にしていただければと思います。
賃貸の原状回復費用に関するトラブル事例


原状回復や敷金返還をめぐるトラブルでは、数万円から数十万円の金額が争われることが多く、簡易裁判所が管轄する場合がほとんどです。
主な争点は、退去後の修繕対象が通常の使用による損耗を超えるかどうか、および特約により賃借人が修繕義務を負うかどうかの2点です。
判例では、通常の使用による損耗と認められる場合が多く、特約の有効性については契約時の説明や合意が重視されています。
また、消費者契約法に基づく特約の無効性が争われる事例も増えており、判例は特約の明確性や合意の有無を厳格に判断しています。
これらの判例や解説を参考にすることで、賃貸生活におけるトラブルを未然に防ぎ、安心して生活を送るとともに、退去時にもスムーズな手続きができるよう備えることができるでしょう。
1.耐用年数6年の製品および損耗品に関するトラブル事例


国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」によると、耐用年数6年の製品および損耗品は、壁紙(クロス)や畳などの通常の生活で損耗しやすい物や家電製品が多いと思われます。
- 壁紙(クロス)
- カーペット
- クッションフロア
- 畳
- エアコン
- ガスコンロ
- 冷蔵庫
- インターホン
- 照明
これらの製品は、一般的に耐用年数が設定されており、経年劣化や損耗に応じて原状回復の必要性が判断されます。
耐用年数は、製品の種類や使用状況によって異なる場合があります。
以下は、国土交通省が定める耐用年数6年の製品および損耗品を扱った事例になります。
原状回復ガイドラインに掲載のトラブル事例一覧
-
[事例6]まっさらに近い状態に回復すべき義務ありとするには客観的理由が必要であり、特に賃借人の義務負担の意思表示が必要とされた事例
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[事例18]ペット可の賃貸の退去費用が50万円?原状回復費用を賃借人負担とする特約が有効とされた事例
-
[事例31]喫煙不可の賃貸アパートでの退去費用は減額できる?修繕費用の減価分が考慮された事例
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[事例1]毀損・汚損等の損害賠償を定めた特約には通常の使用によるものは含まれないとされた事例
-
[事例4]通常の損耗に関する費用は約定された敷引金をもって当てると解するのが相当であるとされた事例
-
[事例17]経過年数を考慮した賃借人の負担すべき原状回復費用が示された事例
-
[事例12]更新時に追加された原状回復の特約は賃借人が自由な意思で承諾したとは認められないとされた事例
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[事例7]原状回復の特約条項は故意過失又は通常でない使用による損害の回復を規定したものと解すべきとした事例
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[事例10]原状回復義務ありとするためには義務負担の合理性、必然性が必要であり更に賃借人がそれを認識し又は義務負担の意思表示をしたことが必要とした事例
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[事例2]通常の使用による汚損・損耗は特約にいう原状回復義務の対象にはならないとされた事例
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[事例14]通常損耗を賃借人の負担とする特約が否認された事例
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[事例13]特約条項に規定のないクリーニング費用等の賃借人による負担が認められなかった事例
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[事例26]カビの発生は賃借人の手入れに問題があった結果であるが、経過年数を考慮するとクロスの張替えに賃借人が負担すべき費用はない、との判断を示した事例
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[事例5]賃貸借契約書に約定されていた畳表の取替え費用のみが修繕費用として認められた事例
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[事例3]原状回復の特約及び別記の「修繕負担項目」により損耗の程度に応じた賃借人の負担を認めた事例
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[事例9]賃貸のカビの退去費用はいくら?賃借人の手入れにも問題があったとされた事例
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[事例39]通常の使用によって生じた損耗とは言えないとして未払使用料等含めて保証金の返還金額はないとされた事例
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[事例40]敷引契約について消費者契約法 10 条に違反しないとされた事例
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[事例8]修理・取替え特約は賃貸人の義務を免除することを定めたものと解され自然損耗等について賃借人が原状に復する義務を負っていたとは認められないとされた事例
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[事例20]過失による損傷修復費用のうち経年劣化を除いた部分が賃借人の負担すべき費用とされた事例
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[事例30]通常損耗補修特約は合意されたとはいえず、仮に通常損耗補修特約がなされていたとしても、消費者契約法10条に該当して無効とされた事例
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[事例35]賃貸借契約終了時に敷金から控除された原状回復費用について賃借人の返還請求が一 部認められた事例
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[事例11]賃借人に対して和室 1 室のクロス張替え費用及び不十分であった清掃費用の支払を命じた事例
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[事例29]保証金解約引特約が消費者契約法10条により無効とされた事例
関連記事:自分で耐用年数6年の製品および損耗品の原状回復費用を計算してみる
2.耐用年数8年の製品に関するトラブル事例


国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」によると、耐用年数8年の製品は、書棚やタンスなどの木材を使用した家具製品が多いと思われます。
- 書棚
- タンス
- 戸棚
- 網戸
これらの製品は、一般的に耐用年数が設定されており、経年劣化や損耗に応じて原状回復の必要性が判断されます。
耐用年数は、製品の種類や使用状況によって異なる場合があります。
以下は、国土交通省が定める耐用年数8年の製品を扱った事例になります。
原状回復ガイドラインに掲載のトラブル事例一覧
関連記事:自分で耐用年数8年の製品および損耗品の原状回復費用を計算してみる
3.耐用年数10年の製品に関するトラブル事例


国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」によると、耐用年数10年の製品は、水回りの製品が多いと思われます。
- 洗濯機用防水パン
- 給湯器
- シャワー水栓
これらの製品は、一般的に耐用年数が設定されており、経年劣化や損耗に応じて原状回復の必要性が判断されます。
耐用年数は、製品の種類や使用状況によって異なる場合があります。
以下は、国土交通省が定める耐用年数10年の製品を扱った事例になります。
原状回復ガイドラインに掲載のトラブル事例一覧
関連記事:自分で耐用年数10年の製品および損耗品の原状回復費用を計算してみる
4.耐用年数15年の製品に関するトラブル事例


国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」によると、耐用年数15年の製品は、ステンレス製が多い流し台や陶器が使用されている便器や洗面台など比較的丈夫な製品が多いと思われます。
- 郵便ポスト
- 換気扇
- 流し台
- 給排水設備
- 便器
- 洗面台
これらの製品は、一般的に耐用年数が設定されており、経年劣化や損耗に応じて原状回復の必要性が判断されます。
耐用年数は、製品の種類や使用状況によって異なる場合があります。
以下は、国土交通省が定める耐用年数15年の製品を扱った事例になります。
原状回復ガイドラインに掲載のトラブル事例一覧
関連記事:自分で耐用年数15年の製品および損耗品の原状回復費用を計算してみる
5.耐用年数が関係しない製品に関するトラブル事例


国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」によると、耐用年数が関係しない製品は、障子や襖といった紙類、交換がしづらいがダメージの受けやすいフローリングなどが挙げられます。
- 障子
- 襖
- 網戸
- 鍵
- フローリング
- ハウスクリーニング
これらの製品は、一般的に耐用年数が設定されており、経年劣化や損耗に応じて原状回復の必要性が判断されます。
耐用年数は、製品の種類や使用状況によって異なる場合があります。
以下は、国土交通省が定める耐用年数が関係しない製品を扱った事例になります。
原状回復ガイドラインに掲載のトラブル事例一覧
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[事例6]まっさらに近い状態に回復すべき義務ありとするには客観的理由が必要であり、特に賃借人の義務負担の意思表示が必要とされた事例
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[事例18]ペット可の賃貸の退去費用が50万円?原状回復費用を賃借人負担とする特約が有効とされた事例
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[事例31]喫煙不可の賃貸アパートでの退去費用は減額できる?修繕費用の減価分が考慮された事例
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[事例4]通常の損耗に関する費用は約定された敷引金をもって当てると解するのが相当であるとされた事例
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[事例17]経過年数を考慮した賃借人の負担すべき原状回復費用が示された事例
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[事例12]更新時に追加された原状回復の特約は賃借人が自由な意思で承諾したとは認められないとされた事例
これらの製品は、一般的に耐用年数が設定されており、経年劣化や損耗に応じて原状回復の必要性が判断されます。
耐用年数は、製品の種類や使用状況によって異なる場合があります。
以下は、国土交通省が定める耐用年数が関係しない製品を扱った事例になります。
関連記事:自分で耐用年数が関係しない製品の原状回復費用を計算してみる
6.建物の耐用年数が適用される製品に関するトラブル事例


国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」によると、建物の耐用年数が適用される製品は、建物と一体化になっており取替えが難しい物が多いと思われます。
- 建具
- ボード
- 扉(ドア)
- 下駄箱
- 浴槽(バスタブ)
これらの製品は、一般的に耐用年数が設定されており、経年劣化や損耗に応じて原状回復の必要性が判断されます。
耐用年数は、製品の種類や使用状況によって異なる場合があります。
以下は、国土交通省が定める建物の耐用年数が適用される製品を扱った事例になります。
原状回復ガイドラインに掲載のトラブル事例一覧
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[事例1]毀損・汚損等の損害賠償を定めた特約には通常の使用によるものは含まれないとされた事例
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[事例17]経過年数を考慮した賃借人の負担すべき原状回復費用が示された事例
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[事例7]原状回復の特約条項は故意過失又は通常でない使用による損害の回復を規定したものと解すべきとした事例
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[事例26]カビの発生は賃借人の手入れに問題があった結果であるが、経過年数を考慮するとクロスの張替えに賃借人が負担すべき費用はない、との判断を示した事例
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[事例3]原状回復の特約及び別記の「修繕負担項目」により損耗の程度に応じた賃借人の負担を認めた事例
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[事例39]通常の使用によって生じた損耗とは言えないとして未払使用料等含めて保証金の返還金額はないとされた事例
7.賃貸の原状回復費用に関するトラブル事例のまとめ
原状回復や敷金返還をめぐるトラブルを防ぐためには、賃貸借契約書の内容をしっかりと理解し、特に特約条項や修繕義務、原状回復に関する条件について確認することが重要です。
判例を参考にすると、通常の使用による損耗とそれ以上の損耗の区別や、特約の有効性が争点となることが多く、契約時の説明や合意が重視されています。
退去時には、物件の状態を記録し、写真やビデオで証拠を残すことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
これらのポイントを押さえることで、安心して賃貸生活を送り、スムーズな退去手続きを実現しましょう。
まとめ


国土交通省の原状回復ガイドラインは、賃貸住宅の退去時における費用負担のルールを明確にした重要な指針です。
このガイドラインによれば、経年劣化や通常の使用による損耗については借主の負担とはならず、借主の故意・過失による損傷のみが借主負担となります。
設備や内装材には耐用年数が設定されており、これを基に減価償却計算が行われます。
例えば、壁紙の耐用年数は6年、フローリングは15年などと定められており、経過年数に応じて借主の負担割合が減少していきます。
耐用年数を超えた設備の修繕費用は、原則として借主負担はゼロです。
退去時には、敷金精算書の内容をしっかりと確認し、不明点があれば説明を求めることが大切です。
また、退去時の立会いや写真による記録は、後のトラブル防止に有効です。
原状回復をめぐるトラブルを防ぐためには、入居前に契約内容をよく確認し、退去時の費用負担について理解しておくことが重要です。
国土交通省のガイドラインは法的拘束力はありませんが、裁判の判断基準として用いられることが多く、自分の権利を守るための強力な味方となります。
賃貸住宅に関するトラブルは、知識があれば多くは防ぐことができます。
このガイドラインの内容を理解し、必要に応じて専門家に相談することで、不当な請求から自分を守り、適正な費用負担で退去手続きを進めることができるでしょう。