
敷金が返ってくる割合の目安と全額返還を目指すための具体的な方法
「退去したら敷金はどのくらい返ってくるのか」と不安を感じていませんか。
敷金の返還割合は入居年数や部屋の損耗状態によって30%から100%まで大きく異なり、一概に「いくら戻る」とは言い切れません。
ただし、国土交通省のガイドラインに基づいて経年劣化を正しく計算すれば、入居6年以上では敷金の70%以上が戻ってくるケースも珍しくありません。
この記事では、入居年数ごとの敷金返還割合の目安、全額返ってこない場合の原因、そして返還額を最大化するために退去前から準備できる方法を解説します。
退去費用全体の目安については「退去費用の相場を間取り別と項目別に解説する目安金額と高額請求への対処法」を参考にしてください。

監修者
1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。
日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号
敷金の返還割合は入居年数と部屋の状態で変わる

- 入居年数が長いほど経年劣化が進み返還割合は高くなる
- 入居6年以上ではクロスの残存価値が1円になり借主負担が大幅に減る
- ハウスクリーニング費用の特約がある場合は敷金から差し引かれる

「敷金はどの程度戻ってくるのか」と疑問に感じる方は多いですが、その答えは入居期間と部屋の使い方によって大きく異なります。
まずは入居年数ごとの返還割合の目安を確認し、ご自身のケースと照らし合わせてみましょう。
入居年数が長いほど経年劣化が進み返還割合は高くなる
クロス・カーペット・クッションフロア等の耐用年数は6年です。要は入居期間が6年以上であれば、原状回復費用は発生しない(0円)ということになります。
まず、国土交通省のガイドラインでは、壁紙(クロス)やカーペットの耐用年数は6年と定められており、入居期間が長くなるほど残存価値が下がります。
例えば、入居3年で退去した場合はクロスの残存価値が約50%あるため、敷金から差し引かれる修繕費用も新品費用の半額程度になります。
一方、6年以上住んだ場合はクロスの残存価値が1円となるため、クロス張替え費用の借主負担はほぼゼロになります。
このように、入居年数が長いほど経年劣化による減額が大きくなり、結果として敷金の返還割合が高くなる仕組みです。
ガイドラインの耐用年数を知っておくだけで、ご自身の敷金がどの程度戻ってくるかの目安がわかります。
民法第622条の2:賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。)を受け取っている場合において、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
入居年数別の敷金返還割合は部屋の状態で30%から100%まで変わる
次に、入居年数ごとの敷金返還割合の目安を確認してみましょう。
以下の表は、通常損耗のみの場合と借主の過失がある場合で、敷金がどの程度戻ってくるかの目安をまとめたものです。
| 入居年数 | 通常損耗のみ | 軽微な過失あり | 重度の過失あり |
|---|---|---|---|
| 1年未満 | 80%〜100% | 50%〜70% | 0%〜30% |
| 1〜3年 | 80%〜100% | 50%〜80% | 10%〜40% |
| 3〜6年 | 90%〜100% | 60%〜90% | 20%〜50% |
| 6年以上 | 90%〜100% | 70%〜100% | 30%〜60% |
注目すべき点は、入居6年以上の場合でも重度の過失があると返還割合が30%程度まで下がることです。
ガイドラインでは「通常の使用」の範囲を超えた損耗については借主負担と定めているため、ペットの引っかき傷やタバコのヤニ汚れがある場合は経年劣化の減額を受けても相当額が差し引かれます。
ご自身の入居年数と部屋の状態を上記の表に照らし合わせれば、返還額のおおよその見当がつきます。
民法第621条:賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に回復する義務を負う。
ハウスクリーニング費用の特約があると敷金から差し引かれる


さらに、賃貸借契約書にハウスクリーニング費用を借主が負担する特約が記載されている場合、その金額が敷金から差し引かれます。
ハウスクリーニング費用の相場は1Kで2万5,000円〜4万円、2LDKで4万円〜7万円程度です。
仮に敷金が家賃1ヶ月分の6万円で、クリーニング特約が3万円だった場合、通常損耗のみでも返還額は3万円程度にとどまります。
ただし、クリーニング特約が有効となるには契約時に「具体的な金額」「借主負担の範囲」「特約の必要性」が明確に説明されている必要があり、要件を満たさない特約は「退去時のクリーニング費用特約が無効になる3つの条件と交渉の進め方」で解説している条件に該当する可能性があります。
契約書のクリーニング特約の記載内容を退去前に確認しておくと、精算時に慌てずに対応できます。
民法第601条:賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
退去費用の精算書が届いたら、まずは内訳の項目ごとにガイドラインの基準と照合して適正かどうかを確認してみてください。
敷金が全額返ってこない場合には明確な理由がある


- 借主の過失による損傷があると修繕費が敷金から差し引かれる
- 特約で鍵交換やクリーニングが借主負担になっている場合がある
- 家賃の滞納や未払いがあると敷金から充当される


「通常に使っていたのに敷金が減額された」と感じる方も少なくありません。
ここでは敷金が全額返還されない代表的な3つの原因を確認し、不当な差し引きを見極める力をつけましょう。
借主の過失による損傷があると修繕費が敷金から差し引かれる


まず、ガイドラインでは「通常の使用」を超える損耗は借主負担と明記されています。
具体的には、家具を引きずってできたフローリングの深い傷、ペットの爪によるクロスの剥がれ、タバコのヤニによる変色などが該当します。
フローリングの部分補修で1万円〜3万円、クロスの張替えは1面あたり2万円〜5万円が相場であり、複数箇所の損傷が重なると敷金を超える請求になることもあります。
ただし、修繕費用の算出にはガイドラインに基づく経年劣化の減額が適用されるため、入居6年以上であればクロス部分の借主負担はほぼ発生しません。
損傷があっても経年劣化による減額が適用されるため、精算書を鵜呑みにせず確認することが大切です。
民法第400条:債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
特約で鍵交換やクリーニングが借主負担になっている場合がある


加えて、賃貸借契約書に原状回復の特約が記載されている場合、本来は貸主負担となる費用まで借主が負担するケースがあります。
代表的な特約として、ハウスクリーニング費用(2万5,000円〜7万円)、鍵交換費用(1万5,000円〜3万円)、エアコンクリーニング費用(1万円〜2万円)などがあります。
これらの特約がすべて有効と認められた場合の合計額は5万円〜12万円にのぼり、敷金1ヶ月分では足りないこともあります。
特約が有効となる要件については「賃貸の特約は拒否できるか無効になる条件と交渉術」で詳しく解説しています。
特約の有効性には3つの要件があり、1つでも欠けていれば無効を主張できる可能性があります。
民法第90条:公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
家賃の滞納や未払いがあると敷金から充当される


そのうえで、退去時に家賃の未払いがある場合は、敷金から未払い家賃が充当されます。
例えば、家賃7万円の物件で1ヶ月分の滞納がある場合、敷金7万円から未払い分7万円が差し引かれ、原状回復費用を差し引く前に返還額がゼロになります。
民法第622条の2では、敷金は「賃貸借に基づいて生じた債務」の担保として位置づけられているため、未払い家賃への充当は法律上認められた処理です。
退去前に未払い家賃がないかを確認し、滞納がある場合は退去日までに清算しておくことで、敷金の返還額を確保できます。
退去前に家賃の支払い状況を確認し、未払いがあれば先に清算しておくことをおすすめします。
民法第415条第1項:債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
敷金の返還割合を高めるために退去前にできる準備がある


- 退去前に室内の写真を撮影して通常損耗を証明する
- 精算書をガイドラインの基準と照合して不当な項目を見つける
- 敷金が返ってこないときは内容証明郵便で返還を請求する


敷金の返還割合は退去後の精算で決まりますが、退去前の準備次第で結果を大きく変えることができます。
ここからは、返還額を最大化するために今すぐ始められる具体的な対策を紹介します。
退去前に室内の写真を撮影して通常損耗を証明する


まず、退去前にスマートフォンで室内の壁・床・水回り・設備のすべてを撮影しておきましょう。
写真は日付が記録される設定にし、各部屋の四方と天井、キッチン、浴室、トイレを重点的に撮影してください。
退去後に「この傷は借主の過失だ」と主張された場合でも、退去前の写真が最も有力な証拠になります。
入居時の写真がある場合は、退去前の写真と比較することで、通常損耗と経年変化を客観的に立証できます。
退去前の写真撮影は数分で終わる作業ですが、後の交渉で何万円もの差を生む可能性があります。
民法第1条第2項:権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
精算書をガイドラインの基準と照合して不当な項目を見つける


次に、精算書が届いたら、各項目の金額をガイドラインの耐用年数と経年劣化の計算方法に照らし合わせてチェックしましょう。
チェックすべきポイントは「入居年数に応じた経年劣化の減額が適用されているか」「通常損耗まで借主負担にされていないか」「修繕の範囲が適正か(1面のクロス汚れで全面張替えにされていないか)」の3点です。
不明な項目がある場合は管理会社に書面で内訳の説明を求める権利が借主にはあります。
退去費用の内訳を確認する具体的な方法は「退去費用の内訳を教えてくれないときの対処法」で詳しく解説しています。
精算書に納得がいかない場合は、支払いを急がず書面で根拠の説明を求めてください。
民法第533条:双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
敷金が返ってこないときは内容証明郵便で返還を請求する


さらに、管理会社に何度問い合わせても敷金が返還されない場合は、内容証明郵便で正式に返還を請求しましょう。
内容証明郵便は「いつ・誰が・誰に・どのような内容を送ったか」を郵便局が証明してくれるため、後の交渉や訴訟で有力な証拠になります。
費用は書留料金を含めて1,500円〜2,000円程度で送付でき、多くのケースで内容証明を送るだけで返還が動き出すという効果があります。
具体的な書き方と送付手順については「敷金返還請求書の書き方と内容証明郵便での送付手順」で解説しています。
内容証明郵便は費用も安く手続きも簡単なので、返還が滞っている場合はまず検討してみてください。
民法第703条:法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
敷金の返還に納得がいかない場合や管理会社との交渉が難航している場合は、契約書と精算書を手元に準備したうえで弁護士や司法書士への無料相談を活用してみてください。
よくある質問
まとめ
- 敷金の返還割合は入居年数と部屋の状態で30%〜100%まで変動する
- 入居6年以上はクロスの残存価値が1円となり借主負担が大幅に減る
- 借主の過失による損傷や特約の費用は敷金から差し引かれる
- 退去前の写真撮影と精算書のチェックが返還額を左右する
- 返還されない場合は内容証明郵便で請求することで解決につながる
敷金の返還割合は、入居年数が長いほどガイドラインの経年劣化により借主負担が減少して返還額が増える仕組みです。
「敷金が返ってこないのは普通ではない」ということを知っておくだけで、不当な請求に対して冷静に対応できるようになります。
まずは契約書の特約内容を確認し、退去前に室内の写真を撮影しておくことから始めてみてください。
敷金が返ってこないことが本当に普通なのかどうかについては「敷金が返ってこないのは普通ではない理由と対処法」でも解説しています。
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