耐用年数を超えた製品一覧!賃貸に1年未満住んだ場合の退去費用相場は?

賃貸住宅を1年未満で退去する際、「壁紙交換費用5万円、畳交換費用3万円」といった請求を受けて驚いた経験はありませんか?
多くの短期入居者は、設備や内装材の耐用年数と原状回復費用の関係について正しく理解していないため、不当に高額な費用を請求されてしまうケースが後を絶ちません。
実は、賃貸の多くの設備や内装材には「耐用年数」が設定されており、この期間を経過した製品については入居者が全額負担する必要がないことをご存知でしょうか?
この記事では、国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づき、耐用年数を超えた製品の一覧と1年未満居住時の適正な退去費用について詳しく解説します。
例えば、築10年のアパートに8ヶ月住んで退去する場合、壁紙の張替え費用を全額負担する必要があるのでしょうか?
正しい知識を身につけて、適正な退去費用で円満に退去手続きを進めましょう。

監修者
1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。
日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号
耐用年数による費用負担の基本的な考え方とその法的根拠
賃貸の退去費用における責任の所在は、「設備の耐用年数を超えた自然劣化」なのか「入居者の故意・過失による損傷」なのかによって判断されます。
1年未満の短期入居の場合、設備の残存価値が非常に高いため、故意・過失による損傷があると入居者負担が重くなる傾向があります。
民法第606条および第621条では、賃借人には「善管注意義務」があり、通常の注意をもって物件を使用・管理する義務があるとされています。
短期入居であっても、この義務に違反した場合は相応の責任を負うことになります。

- 民法第606条(賃貸人による修繕等)
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責に帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
- 民法第621条(賃借物の返還等)
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、設備ごとに具体的な耐用年数が定められており、経過年数に応じて入居者負担割合が算定されます。
壁紙・クロス、カーペット・畳床、エアコンなどの主要設備は6年の耐用年数が設定されています。
1年未満の入居では、これらの設備の残存価値が83~100%と非常に高く、故意・過失による損傷が発生した場合、修繕費用のほぼ全額を入居者が負担することになります。
また、畳表については耐用年数を考慮しないため、入居期間に関係なく故意・過失による損傷は全額入居者負担となります。
つまり、賃貸に1年未満住んだ場合の退去費用は、耐用年数を超えた製品がほとんど存在しないため、故意・過失による損傷に対する入居者負担が非常に重くなり、短期入居特有の高額な退去費用のリスクが存在します。
賃貸を1年未満住んだ場合の設備・内装材の耐用年数と退去費用相場
1年未満の居住でも、前入居者からの使用期間を含めると、すでに耐用年数を超過している設備がある可能性があります。
以下の表は、国土交通省ガイドラインに基づく主な設備の耐用年数と、前入居者の使用期間も考慮した場合の状況を示したものです。

設備・内装材 | 一般的な耐用年数 | 耐用年数の状況 | 退去費用の相場 |
---|---|---|---|
畳 | 5〜6年 | 約17-20% | 市場価格の約80-83% |
ふすま・障子 | |||
壁紙(クロス) | 6〜8年 | 約13-17% | 市場価格の約83-87% |
クッションフロア | |||
フローリング | 8〜15年 | 約7-13% | 市場価格の約87-93% |
エアコン | 8〜10年 | 約10-13% | 市場価格の約87-90% |
給湯器 | |||
照明器具 | |||
ドア・建具 | 10〜12年 | 約8-10% | 市場価格の約90-92% |
キッチン設備 | 8〜12年 | 約8-13% | 市場価格の約87-92% |
洗面台 | |||
浴室設備 | 10〜15年 | 約7-10% | 市場価格の約90-93% |
トイレ設備 | |||
便器・浴槽 | 15〜20年 | 約5-7% | 市場価格の約93-95% |
この表から分かるように、1年未満の居住期間では、多くの設備で借主負担割合が高めになる傾向がありますが、物件の築年数や前入居者の使用期間によっては、すでに耐用年数に近づいている場合もあります。
特に、リフォームされていない築古物件の場合、退去時の交渉材料になる可能性があります。
賃貸を1年未満住んだ場合の退去費用相場を知るポイントと賃貸借契約書に記載のある注意すべき条項例
短期間の居住であっても、賃貸借契約書には借主が注意すべき特別な条項が記載されており、これらを見落とすと予想外の退去費用が発生する可能性があります。
特に1年未満の入居者に適用される特約条項は慎重な確認が必要です。
代表的な注意条項として「短期解約特約」があり、1年未満で退去する場合は敷金の一部返還を制限する内容が含まれることがあります。
また「設備故障時の修理費用負担」条項では、エアコンや給湯器などの設備が故障した際の修理費用を借主負担とする場合があります。
「原状回復の特約」では、通常の使用による劣化であっても借主負担とする内容が記載されている場合もあります。
さらに「ペット飼育に関する特約」「喫煙に関する特約」「楽器演奏に関する特約」などは、短期間であっても大きな費用負担につながる可能性があります。
契約前にこれらの条項を十分に理解し、不明な点は管理会社に確認することが重要です。
- 短期解約特約により、1年未満の退去では敷金返還が制限される場合がある
- 設備故障時の修理費用負担条項は、短期居住でも高額な費用が発生するリスクがある
- 原状回復の特約条項では、通常使用による劣化も借主負担とされる可能性がある
- ペット・喫煙・楽器演奏に関する特約は、短期間でも重大な費用負担につながる
- 契約書の特約条項は事前に十分確認し、不明点は必ず管理会社に質問する
1年未満居住時の退去費用に関するよくある質問
まとめ

この記事では、耐用年数を超えた製品一覧と1年未満居住時の退去費用について、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づいて詳しく解説してきました。
重要なのは、各設備・内装材には明確な耐用年数が設定されており、この基準に基づく按分計算により適正な費用負担が決定されることです。
特に1年未満の短期居住では、経年劣化による価値減少を考慮した大幅な負担軽減が適用されるため、適切な知識を持って交渉すれば不当な高額請求を回避できます。
また、入居時の詳細な現状記録と退去時の迅速な対応が、適正な費用負担確保の鍵となることを理解し、計画的な賃貸生活を送ることが大切です。
退去費用について疑問や不安がある場合は、消費生活センターや住宅紛争処理支援センターなどの専門機関に相談し、客観的なアドバイスを受けることをお勧めします。
正しい知識と適切な対応により、賃貸生活における金銭的なトラブルを最小限に抑え、安心して住み替えを行いましょう。
