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修理特約の実態 賃貸人の義務を免除するものか、賃借人への新たな負担か

原状回復をめぐるトラブルとガイドラインの冊子

賃貸借契約において「修理・取替え特約」が設けられる場合、その法的効果の解釈は実務上極めて重要な問題となります。

特に、賃貸人の修繕義務を軽減する目的の特約が、賃借人に対してどこまでの義務を課すのかという点は、多くの紛争の原因となっています。

今回ご紹介する京都地方裁判所平成7年10月5日判決は、この重要な問題に明確な指針を示した画期的な判例です。

本事例では、「所定の修理、取替えに要する費用は借主負担」とする特約の解釈が争われ、裁判所は「賃貸人の修繕義務を免除することを定めたものであり、積極的に賃借人に修繕義務を課したものではない」との判断を示しました。

この判決は、修理特約の限定的解釈という重要な法理を確立し、賃借人の負担軽減に大きく貢献した先例として高く評価されています。


行政書士 松村 元
監修者

1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。

日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号


目次

概要

本事例は、昭和62年5月に締結された京都市内の建物賃貸借契約における修理費用負担を巡る争いです。

当初の賃借人が平成4年9月に死亡し、その地位を承継した賃借人が同年11月に合意解除により退去した際の原状回復(元の状態に戻すこと)費用が争点となりました。

マンションの外観
  • 物件
    京都市内の建物(新築物件)
  • 賃借期間
    昭和62年5月〜平成4年11月(約5年半)
  • 月額賃料
    6万8000円
  • 争点となった金額
    修理費用72万7592円(賃貸人請求額)

賃貸人は、敷金(入居時に預ける保証金)30万円、礼金(お礼として支払うお金)27万円、更新料20万4000円という高額な初期費用設定にも関わらず、退去時には更に72万円を超える修理費用を請求しました。

賃貸人の請求は、敷金30万円との差額42万9951円に未払水道料金2359円を加えた金額で、新築物件での約5年半の居住に対して極めて高額な負担を求める内容でした。

この事例は、修理特約の解釈と自然損耗の取扱いについて、二審制での詳細な検討が行われた重要な判例となりました。

契約内容と特約の詳細

本件賃貸借契約には、賃借人の修理負担を定める包括的な特約が設けられていました。

退去立ち合いを終えて空っぽになった室内の様子
  • 修理・取替え特約の内容
    • 所定の修理、取替えに要する費用は借主負担とする
    • 契約期間中及び終了時の修繕義務を賃借人に課す包括的条項
  • 賃貸人が請求した修理項目
    • 襖、床及び壁・天井クロスの張替え
    • 畳表替え・裏返し、塗装工事
    • パイプ棚・流し・ガス台取替え
    • 雑工事、洗い工事
    • 修理費用合計:72万7592円

契約条件を見ると、月額賃料6万8000円に対して、敷金30万円、礼金27万円、更新料20万4000円という高額な諸費用が設定されていました。

特に注目すべきは、本件建物が「新しく改築した建物」であったにも関わらず、賃貸人が包括的な修理費用負担を賃借人に求めた点です。

修理・取替え特約は、具体的な範囲や金額の上限を定めない包括的な内容であり、実質的に賃借人が建物の維持管理費用のほぼ全額を負担する構造となっていました。

このような特約の有効性と適用範囲、特に賃借人に課される義務の性質が本件の核心的争点でした。

賃貸人・賃借人の主張のポイント

賃貸人側は、契約書に明記された修理・取替え特約を根拠として、退去時の包括的な修理費用の支払いを求めました。

争点賃貸人側の主張賃借人側の主張
修理特約の効力契約書に明記された特約により、賃借人は修理・取替え費用を負担する義務がある修理特約は賃貸人の義務免除に過ぎず、賃借人への積極的義務課税ではない
負担範囲の解釈契約期間中及び終了時のすべての修理費用が賃借人負担通常の使用による経年劣化は賃借人の負担範囲外
建物の性質新築建物であっても特約により賃借人が原状回復義務を負う新築建物での通常使用による損耗は自然的なもの
費用負担の根拠賃料や諸費用の支払いとは別に修理費用負担義務がある高額な礼金・更新料により修理費用は既に賄われている

賃貸人の主張は、特約の文言を字義通りに解釈し、賃借人に対して契約期間中及び終了時の包括的な修理義務を課すものでした。

また、新築建物であったことを理由に、退去時には契約開始時の状態への完全な回復を求めるとしていました。

一方、賃借人側は、高額な礼金や更新料を支払っていることを考慮すれば、通常の使用による損耗について別途修理費用を負担する合理性がないと反論しました。

特に、本件で争われた損耗はすべて通常の使用や経年によるものであり、賃借人の故意・重過失による特別な損耗は存在しないと主張していました。

裁判所の判断と法的根拠

一審・二審とも賃借人側の主張を全面的に認める判決を下しましたが、それぞれ異なる法的根拠に基づいています。

審級判断の要点法的根拠
一審(京都簡易裁判所)高額な礼金・更新料の支払いを考慮し、通常使用による損耗は既払い金で賄うべき契約の全体的考慮による衡平の原則
二審(京都地方裁判所)修理特約は賃貸人の修繕義務免除であり、賃借人への積極的義務課税ではない賃貸借契約の本質と修理特約の限定的解釈

一審の京都簡易裁判所は、賃料や高額な諸費用の支払い状況を総合的に考慮し、「借主の通常の使用中に生じた汚損等は借主の支払った出資で賄うべき」との判断を示しました。

二審の京都地方裁判所は、より法理論的な観点から「本件修理・取替え特約の趣旨は、賃貸借契約継続中における賃貸人の修繕義務を免除することを定めたものと解される」との重要な法理を確立しました。

特に注目すべきは、二審が「賃貸目的物の通常の使用利益に伴う自然の損耗や汚損について、賃借人が積極的にその修繕等の義務を負担し、あるいは、賃貸目的物の返還にあたって、自然の損耗等についての改修の費用を負担して賃貸当初の原状に復する義務を負っていたとは認められない」と明確に判示した点です。

この判断により、修理特約は単なる賃貸人の義務免除条項に過ぎず、賃借人に新たな積極的義務を課すものではないとの法理が確立されました。

判例から学ぶポイント

この判例は、修理特約の解釈に関する重要な原則を確立し、賃借人保護の法理を明確化しました。

六法全書を開いて調べている様子

修理特約の限定的解釈原則

  • 義務免除vs義務課税
    修理特約は賃貸人の修繕義務免除であり、賃借人への積極的義務課税ではない
  • 自然損耗の除外
    通常使用による自然損耗は特約があっても賃借人負担外
  • 契約全体の考慮
    礼金・更新料等の支払い状況も負担判断の重要要素

最も重要な教訓は、修理特約の法的性質に関する明確化です。多くの賃貸人が誤解しているのは、修理特約により賃借人に包括的な修理義務を課すことができるという点ですが、本判例はこれを明確に否定しました。

また、新築建物であっても、通常使用による経年変化は避けられないものであり、これを賃借人の負担とすることは不合理であるとの判断も示されています。

賃貸借契約書が入ったクリアファイル

実務への重要な影響

  • 包括的修理特約の効力限界が明確化
  • 賃借人保護の法理論的基盤が確立
  • 契約条件の総合的考慮の重要性

実務的には、この判例により修理特約を盾にした過度な請求が困難となり、賃貸借契約の公正性向上に大きく貢献しました。

また、礼金や更新料などの一時金の位置づけについても、修理費用の前払い的性格を有するとの考え方が示されたことは、契約実務に重要な影響を与えています。

賃貸借契約における実践的対策

賃貸借契約書において修理・取替え特約が設けられている場合の対応策について解説します。

賃貸借契約書にサインをさせられる賃借人の様子

契約締結時の重要チェックポイント

  • 修理特約の具体的適用範囲と上限額の明記
  • 「通常使用による損耗」の除外条項の有無
  • 礼金・更新料との関係性の明確化

借主の皆様には、まず修理特約の文言が包括的すぎないかをチェックしていただきたいと思います。

「所定の修理費用は借主負担」のような曖昧な表現は、この判例により限定的に解釈されることを覚えておきましょう。

特に重要なのは、礼金や更新料を支払っている場合、これらが修理費用の前払い的性格を有するという法的解釈です。高額な初期費用を支払っているにも関わらず、さらに包括的な修理負担を求める契約条項は不合理とされる可能性があります。

契約書で「賃借人は一切の修理費用を負担する」といった条項がある場合は、この判例を参考に、その効力は限定的であることを理解しておくことが重要です。

不明な点や不安がある場合は、契約締結前に宅地建物取引士や専門家に相談し、条項の修正や明確化を求めることをお勧めします。

まとめ

京都地方裁判所の本判決は、修理・取替え特約の法的性質を明確にした画期的な判例です。

「修理特約は賃貸人の修繕義務を免除するものであり、賃借人への積極的義務課税ではない」との法理は、その後の判例実務の基盤となりました。

この判例により、包括的な修理特約があっても通常使用による自然損耗は除外されることが確立され、賃借人の権利保護が大幅に向上しています。

また、契約条件の総合的考慮、特に礼金や更新料の支払い状況も修理費用負担の判断要素となることが明確化されました。

賃貸借契約における公正な負担分担の実現には、特約条項の適正な解釈と運用が不可欠であり、この判例が示した法理は現在でも重要な指針となっています。

重要なポイント
  • 修理特約は賃貸人の義務免除であり、賃借人への積極的義務課税ではない
  • 通常使用による自然損耗は修理特約があっても賃借人負担の対象外となる
  • 礼金・更新料等の支払い状況も修理費用負担判断の重要要素となる
  • 包括的な修理特約の効力は限定的に解釈される
  • 新築建物であっても通常使用による経年変化は賃借人の責任範囲外である

参照元:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)【判例8】

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1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。

正しい情報を掲載するよう注意しておりますが、誤った情報があればご指摘ください。

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