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国土交通省が発行している原状回復のガイドラインに基づき、適正な負担割合と客観的な退去費用の相場情報を提供しています。

通常使用による損耗は、特約があっても賃借人の負担対象とならないのか?

原状回復をめぐるトラブルとガイドラインの冊子

建物賃貸借契約における原状回復(元の状態に戻すこと)義務は、賃貸人と賃借人の間で最も争いの多い問題の一つです。

特に「通常の使用により生ずる損耗」と「賃借人の責任による損耗」の境界線は、しばしば法的争点となります。

今回ご紹介する名古屋地方裁判所平成2年10月19日判決(判例時報1375-117)は、この重要な境界線を明確にした画期的な判例です。

この事例では、賃貸人が修繕特約を根拠に包括的な原状回復費用を請求したものの、裁判所は「通常の使用によって生ずる損耗・汚損」は特約による損害賠償の対象外であると判断しました。

本記事では、この判例の詳細な分析を通じて、賃貸借契約における原状回復義務の適正な範囲と、実務上の対策について解説いたします。


行政書士 松村 元
監修者

1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。

日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号


目次

概要

本事例は、名古屋市内の賃貸マンションにおける原状回復費用の負担を巡る争いです。

昭和55年8月31日に締結された賃貸借契約は、月額賃料12万円で約8年間継続し、昭和63年4月30日に終了しました。

マンションの外観
  • 物件
    名古屋市内の賃貸マンション
  • 賃借期間
    昭和55年8月〜昭和63年4月(約8年間)
  • 月額賃料
    12万円
  • 争点となった金額
    原状回復費用50万4200円(賃貸人請求額)

契約終了後、賃貸人は未払賃料66万1315円に加えて、原状回復費用として畳・襖・障子・クロス(壁紙)・じゅうたんの張替え費用並びにドア・枠のペンキ塗替え費用合計50万4200円の支払いを求めて提訴しました。

賃貸人の請求根拠は、建物専用部分の修理・取替えを賃借人負担とする修理特約と、故意過失(わざとまたは不注意でつけた傷)を問わず毀損・汚損等の損害賠償を賃借人に求める賠償特約でした。

総請求額は116万円を超える高額なものとなり、長期賃借における原状回復の範囲が主要な争点となりました。

契約内容と特約の詳細

本件賃貸借契約には、賃借人の負担を大幅に拡大する2つの重要な特約が設けられていました。

退去立ち合いを終えて空っぽになった室内の様子
  • 修繕特約の内容
    • 建物専用部分についての修理・取替え(畳、襖、障子、その他の小修繕等)は賃借人において行う
    • 故意過失を問わず毀損、滅失、汚損その他の損害を与えた場合は賃借人が損害賠償をしなければならない
  • 賃貸人が請求した原状回復項目
    • 畳、襖、障子、クロス及びじゅうたんの張替え
    • ドア・枠のペンキ塗替え
    • 温水器取替え工事費18万5000円
    • 上記原状回復費用の合計:50万4200円

第一の修理特約は、「建物専用部分についての修理、取替え(畳、襖、障子、その他の小修繕等)は賃借人において行う」というものでした。

第二の賠償特約は、「故意過失を問わず毀損、滅失、汚損その他の損害を与えた場合は賃借人が損害賠償をしなければならない」という包括的な責任条項でした。

これらの特約により、賃貸人は通常の使用による自然損耗も含めて、あらゆる修繕費用を賃借人に転嫁しようとしていました。

月額賃料12万円という当時としては高額な設定にも関わらず、実質的に賃借人が建物の維持管理費用をすべて負担する契約構造となっていました。

このような特約の有効性と適用範囲が、本件の核心的な争点でした。

賃貸人・賃借人の主張のポイント

賃貸人側は、契約書に明記された2つの特約を根拠として、包括的な原状回復費用の支払いを求めました。

争点賃貸人側の主張賃借人側の主張
原状回復義務の根拠契約書に明記された特約に基づき、賃借人は原状回復義務を負う通常の使用による自然的損耗は賃借人の負担範囲外
損害賠償特約の適用故意過失を問わない損害賠償特約により、退去時の損耗はすべて賃借人負担
温水器の取扱い温水器も小修繕の範囲に含まれる設備である温水器は高額な設備であり、小修繕の範囲を超える
結露による汚損結露による壁クロスの汚損は建物の構造的問題

賃貸人の主張によれば、修理特約により賃借人は畳・襖・障子等の小修繕を負担し、賠償特約により故意過失を問わずあらゆる損耗について損害賠償責任を負うとしていました。

また、約8年間の使用期間中に生じた内装の劣化は、すべて賃借人の使用に起因するものであり、特約の文言通りに解釈すべきだと主張しました。

一方、賃借人側の具体的な反論内容は判決文では詳述されていませんが、経年変化や通常使用による自然損耗について争ったものと推察されます。

特に、壁クロスの汚損が結露によるものであった点など、賃借人の故意・過失によらない損耗が多数含まれていることが後の判決で認定されています。

裁判所の判断と法的根拠

裁判所は、賃貸借契約の性質に基づいた明確な判断基準を示しました。

判断項目裁判所の認定結論
温水器取替え費用かなり長期の使用を予定して設置される設備で、「小修繕」の範囲には該当しない賃借人の負担義務なし
修繕特約の解釈賃貸人の修繕義務を免除することを定めたものであり、積極的に賃借人に修繕義務を課したものではない特別の事情がない限り、賃借人負担とはならない
損害賠償特約の適用範囲賃借物の通常の使用によって生ずる損耗、汚損は含まれないドア等の著しい汚損のみが賃借人負担(2万円)

まず修理特約については、「一定範囲の小修繕についてこれを賃借人の負担において行う旨を定めるものは、賃貸人の修繕義務を免除することを定めたものであって、積極的に賃借人に修繕義務を課したと解するには、更に特別の事情が存在することを要する」と判断しました。

次に賠償特約については、「賃貸借契約の性質上、その損害には賃借物の通常の使用によって生ずる損耗、汚損は含まれないと解すべきである」との重要な法理を確立しました。

具体的な損耗の判定では、ドア等の通常使用を超える汚損のみを賃借人負担とし、壁クロスの結露による汚損は「建物の構造により発生の基本的条件が与えられるもの」として賃貸人負担と判断し、最終的に賃借人負担は2万円のみとしました。

判例から学ぶポイント

この判例は、原状回復義務の適正な範囲を示す重要な先例となりました。

六法全書を開いて調べている様子

特約の解釈に関する重要な原則

  • 限定的解釈の原則
    修繕特約は賃貸人の義務免除にとどまり、賃借人への積極的義務付けではない
  • 通常損耗の除外
    故意過失を問わない特約でも、通常使用による損耗は除外される
  • 具体的判断の必要性
    「小修繕」等の文言は、設備の性格を考慮して個別判断すべき

最も重要な教訓は、契約書に「故意過失を問わず」という文言があっても、賃貸借契約の本質的性質により通常使用による損耗は除外されるという点です。

また、修繕特約の解釈についても、単なる賃貸人の修繕義務免除にとどまり、賃借人に積極的な修繕義務を課すものではないとの判断が示されました。

賃貸借契約書が入ったクリアファイル

実務への重要な影響

  • 包括的な原状回復特約も万能ではない
  • 居住期間の長さは自然損耗の重要な判断要素
  • 建物の構造的問題による損耗は賃借人負担外

実務的には、長期間の賃貸借において経年変化と賃借人の責任を明確に区別する必要性が確認されました。

さらに、結露のような建物構造に起因する問題は、特別な事情がない限り賃借人の責任とならないという重要な基準も示されています。

この判例は、その後の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の理論的基礎となった画期的判決として位置づけられています。

賃貸借契約における実践的対策

賃貸借契約書の締結前には、原状回復に関する条項を慎重に確認することが重要です。

賃貸借契約書にサインをさせられる賃借人の様子

契約締結時の注意点

  • 修繕特約の具体的な適用範囲を書面で確認
  • 「小修繕」「通常損耗」の定義を明確化
  • 高額設備(給湯器、エアコン等)の修繕負担を明記

借主の皆様にアドバイスしたいのは、まず「通常損耗(普通に使っていてできる傷み)」と「特別損耗」の区別が明確に記載されているかをチェックすることです。

「故意過失を問わず」「一切の損耗」などの包括的な表現がある場合は要注意で、このような条項はこの判例により無効とされる可能性があります。

また、具体的な負担区分(誰が費用を払うかの分け方)表が添付されているか、経年変化による減価償却(時間とともに価値が下がること)の考慮があるかも重要な確認ポイントです。

敷金(入居時に預ける保証金)の返還条件についても、「原状回復費用」の定義が曖昧な契約書は避けるべきです。

契約書に疑問がある場合は、署名前に専門家に相談し、必要に応じて条項の修正や明確化を求めることをお勧めします。

借主の正当な権利を守るため、契約内容の十分な理解と事前チェックが不可欠です。

まとめ

名古屋地方裁判所の本判決は、賃貸借契約における原状回復義務の適正な範囲を明確にした重要な判例です。

「賃貸借契約の性質上、通常の使用によって生ずる損耗・汚損は損害賠償の対象に含まれない」との判断は、その後の判例法理の基礎となりました。

この判例により、包括的な修繕特約があっても通常損耗は除外されることが確立され、賃借人の権利保護に大きく貢献しています。

実務においては、契約条項の明確化と負担区分の適正化により、紛争の予防が可能となります。

賃貸借契約は長期間にわたる法律関係であるため、公正で明確な原状回復条項の設定が、健全な賃貸住宅市場の発展に不可欠です。

重要なポイント
  • 通常使用による損耗は賃貸借契約の性質上、特約があっても賃借人負担の対象外となる
  • 修繕特約は賃貸人の義務免除であり、賃借人への積極的義務課税ではない
  • 建物構造に起因する問題(結露等)は原則として賃貸人負担となる
  • 契約書では通常損耗と特別損耗の区別を明確に定める必要がある
  • 経年変化や減価償却の概念を契約条項に盛り込むことが公正な負担分担につながる

参照元:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)【判例1】

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1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。

正しい情報を掲載するよう注意しておりますが、誤った情報があればご指摘ください。

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