退去費用の相場と賃借人の過失について。知っておくべきポイント
平成10年に始まった賃貸契約は、平成21年に終了しました。しかし、未納の使用料と建物の損傷が発端となり、賃借人と賃貸人の間でトラブルが発生しました。裁判所は賃貸人の主張を認め、賃借人の保証金の返還を拒否する判決を下しました。

監修者
サレジオ学院高等学校を昭和57年に卒業後、法曹界への志を抱き、中央大学法学部法律学科へと進学。同大学では法律の専門知識を着実に積み重ね、昭和62年に卒業。
その後、さまざまな社会経験を経て、より専門的な形で法務サービスを提供したいという思いから、平成28年に行政書士試験に挑戦し、合格。この資格取得を機に、平成29年4月、依頼者の皆様に寄り添った丁寧なサービスを提供すべく「綜合法務事務所君悦」を開業いたしました。
長年培った法律の知識と実務経験を活かし、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えできるよう、日々研鑽を重ねております。
日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号
賃貸借契約
平成10年4月27日、賃貸人Y(大田区)は賃借人Xに対し、同年5月6日から使用期限の定めなく月額15万7200円の使用料で大田区民住宅条例に基づき使用許可を出しました。
賃借人Xは保証金31万4400円を賃貸人Yに交付し、入居が開始されました。
賃貸借契約は、賃借人Xが物件を適切に使用し、保証金は最終的に返還されることが約束されていました。
- 賃貸人Yは平成10年4月27日に賃借人Xに対し、大田区民住宅条例に基づいて賃貸契約を結んだ。
- 使用料は月額15万7200円、保証金は31万4400円。
- 使用許可期間は平成10年5月6日から使用期限の定めなし。
- 使用許可は平成21年4月26日に終了し、賃借人Xは建物を賃貸人Yに明け渡した。
トラブルの発端
平成21年4月26日に使用許可が終了し、賃借人Xは物件を明け渡しました。
しかし、返還時に賃借人Xには未納の使用料と共益費が合計13万9500円ありました。
また、建物には多数の損傷があり、賃貸人Yはこれを社会通念上通常の使用による損耗ではないと主張しました。
そのため、賃借人Xの保証金は賠償金として全額控除され、返還されませんでした。
賃借人Xはこれに納得せず、裁判を起こしました。
- フローリング材剥がれ (18万4000円)
- 襖(大)破損・剥がれ・穴・しみ (合計1万3800円)
- 台所・洗面金具 (3万5200円)
- 排水溝菊割ゴム紛失 (1650円)
- クーラーキャップ3個 (1万1550円)
- シール剥がし跡、フック取り付け箇所 (合計1万9800円)
- トイレ配管 (1万1000円)
- バルコニー間仕切り固定金具 (1万1000円)
- 鍵4個 (5600円)
- 鍵(エレベータートランク) (1420円)
- 合計原状回復費用は29万5020円。
裁判および判決
裁判では、賃借人Xが11年間の入居期間中に建物に発生した損耗が通常の使用によるものであると主張しましたが、証拠により通常の使用とは認められないとされました。
また、賃借人Xの未納使用料、共益費および賠償金の合計額は43万4520円であり、賃借人Xの保証金を超過していました。
これにより裁判所は賃貸人Yの主張を認め、賃借人Xに対して保証金の返還をしないと判決しました。
結果として、賃借人Xの控訴は棄却されました。
- 賃借人Xは未納の使用料(13万円)及び共益費(9500円)を支払っていない。
- 賠償金29万5020円の支払義務があるため、保証金31万4400円から差し引きされる。
- 賃借人Xの未納使用料、共益費、賠償金の合計額は43万4520円であり、保証金を超過しているため賃貸人Yが保証金を返還する義務はない。
- 賃借人Xの訴えは棄却された。
まとめ
この記事では、賃借人Xと賃貸人Yの間で結ばれた賃貸契約が終了した際に生じたトラブルと、それに続く裁判および判決の詳細が説明されています。
賃借人Xは、未納の使用料と建物の損傷により保証金が返還されないことに納得せず、裁判に訴えましたが、裁判所は賃貸人Yの主張を支持し、賃借人Xの保証金返還を拒否しました。
この事例から、契約内容を遵守し、物件の管理に責任を持つことの重要性が強調されています。
特に、未納の使用料や損耗が発生した場合には、賠償金として保証金が控除される可能性があることを理解することが重要です。
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