18年以上の喫煙者が退去する際の費用相場とは?
賃貸借契約の終了に伴い、賃借人Xさんが敷金の返還を求めましたが、賃貸人Yさんとの間で原状回復費用を巡るトラブルが発生しました。裁判所は、自然な損耗と人為的な汚損を区別し、賃借人Xさんに一定の返還額を認める判決を下しました。

監修者
サレジオ学院高等学校を昭和57年に卒業後、法曹界への志を抱き、中央大学法学部法律学科へと進学。同大学では法律の専門知識を着実に積み重ね、昭和62年に卒業。
その後、さまざまな社会経験を経て、より専門的な形で法務サービスを提供したいという思いから、平成28年に行政書士試験に挑戦し、合格。この資格取得を機に、平成29年4月、依頼者の皆様に寄り添った丁寧なサービスを提供すべく「綜合法務事務所君悦」を開業いたしました。
長年培った法律の知識と実務経験を活かし、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えできるよう、日々研鑽を重ねております。
日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号
賃貸借契約
昭和63年1月20日、賃借人Xさんは、某企業との間で、本件建物に関する賃貸借契約を締結しました。
その契約は2年ごとに更新され、更新料として新賃料の1か月分が支払われました。
その後、平成14年12月4日、賃貸人Yさんが、この建物を購入し、賃貸人としての地位を承継しました。
平成15年12月21日には、賃借人Xさんと賃貸人Yさんの間で、賃料月額6万9000円、期間2年、敷金13万8000円という条件で更新契約が締結されました。
そして、平成17年12月頃には再度更新が行われ、平成18年4月30日に双方の合意により契約は終了し、賃借人Xさんは建物を明け渡しました。
- 賃貸借契約締結日: 昭和63年1月20日
- 賃料: 月額6万9000円
- 賃貸借期間: 2年毎の合意更新
- 敷金: 13万8000円
- 更新料: 新賃料の1か月分
- 賃貸人の地位承継: 平成14年12月4日
- 契約終了日: 平成18年4月30日
- 明け渡し日: 平成18年4月30日
トラブルの発端
賃借人Xさんが建物を明け渡す際、彼は敷金の返還を求めましたが、賃貸人Yさんは、原状回復費用として22万420円を請求しました。
賃貸人Yさんは、賃借人Xさんの使用方法や喫煙により建物が汚損・毀損されたと主張しました。
一方、賃借人Xさんは、建物の汚損は時間の経過による自然な損耗であり、自分には責任がないと反論しました。
また、更新料支払いに関しても、消費者契約法に基づいて無効であるとして返還を求めました。
- クロスの張替え費用: 賃借人負担なし
- 天井塗装、玄関扉のサビ、クロス下地のボード等: 費用の20%を賃借人負担
- 和室の窓のカビ防止シール剥がし費用: 賃借人負担 1050円
裁判および判決
裁判所は、賃借人Xさんが18年以上にわたり建物を使用していたこと、内装の修理や交換が一度も行われていなかったことを考慮し、和室の畳や襖、扉の汚損は自然な損耗と判断しました。
また、クロスの張替えに関しては、経過年数を考慮すると賃借人Xさんの負担すべき費用はないとされました。
天井塗装や玄関扉のサビなどの修繕費用についても、一部を賃借人Xさんの負担としました。
最終的に、敷金から一部の費用を控除した11万1330円の返還を賃貸人Yさんに命じました。
- 自然の損耗・汚損は賃借人負担なし
- 各部屋のカビ: 賃借人の管理に問題があるが、クロスに関して賃借人負担なし
- 更新料支払特約は消費者契約法10条に反して無効であるとはいえない
- 敷金返還額: 11万1330円(2万6670円控除)
まとめ
この事例では、賃貸借契約終了後に発生した敷金返還トラブルを巡る詳細な裁判の経過と結果を伝えています。
賃借人Xさんが長期間使用していた建物の自然な損耗と喫煙などによる汚損が争点となり、賃貸人Yさんと賃借人Xさんの間で意見が対立しました。
最終的に裁判所は、自然な損耗を考慮し、賃借人Xさんの負担すべき費用を一部認めつつも、大部分の敷金返還を命じました。
この事例は、長期にわたる賃貸借契約における原状回復費用の取り扱いや、消費者契約法に基づく更新料の有効性についても重要な示唆を提供しています。
最も重要な点は、裁判所が自然な損耗と人為的な汚損を明確に区別し、公正な判断を下したことです。
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