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国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン ≫

自然損耗等(クロス・クッションフロア・襖・畳)について賃借人に原状回復義務を負わすことが認められなかった事例

賃貸物件に住んでいると、退去時の修繕費用の負担について気になることがあるかもしれません。今回は、実際に京都地方裁判所で行われた裁判をもとに、賃貸物件に関するルールや判例をわかりやすくまとめました。

この事例では、賃貸借契約に修理・取替え特約が付されていても、通常の使用による損耗や汚損については賃借人の負担とはならず、賃借人の故意または重大な過失による汚損についてのみ修繕義務が生じるとの判断が下されています。

賃貸借契約における修理・取替え特約の解釈と、賃借人の原状回復義務の限界を示す重要な事例となっていますので、クロスの張替えや畳の表替え、設備の取替えなどの退去費用でお困りの方はぜひ参考にしてください。


行政書士 松村 元
監修者

敷金の返還請求、立ち退きや退去費用に関するトラブルなど、様々な問題について、適切なアドバイスをしております。
裁判所での訴訟等については、業務の範囲外となるため、サポートに限りはありますが、借主の皆様が、より安心して住まいを利用できるよう、最善の解決策をご提案いたします。


目次

トラブル事例の概要

請求額の内訳/入居期間5年7ヵ月
入居期間7年8ヵ月
請求額の内訳
未払水道料金
2,359円
クロスの張替えなど11箇所の修理費用
72万5,233円
請求額の合計

727,592

関連記事:クロス・クッションフロア・畳床・カーペットの相場

関連記事:ドア・浴槽・石膏ボード・下駄箱など

賃貸借契約からトラブル解決までの経緯

1987年5月

賃貸借契約

賃貸借契約

1987年5月、賃貸人Xは賃借人Aとの間で賃貸借契約を締結しました。賃料は月額6万8000円、敷金30万円、礼金27万円、更新料20万4000円でした。

賃貸借契約の概要
  • 賃料:月額6万8000円
  • 敷金:30万円
  • 礼金:27万円
  • 更新料:20万4000円
  • 修理・取替え特約:有
行政書士 松村 元

賃貸借契約書の特約の内容には気を付けましょう。

1992年9月

賃借人の死亡

1992年9月、賃借人Aが死亡し、Yさんが賃借人Aの地位を承継しました。

1992年11月

合意解除

1992年11月、賃貸借契約は合意解除されました。

1992年12月

建物の明け渡し

1992年12月、賃借人YさんはXさんに建物を明け渡しました。

1993年1月~1994年11月

退去費用の請求

退去費用の請求

賃貸人Xは、クロス、クッションフロア及び襖の張替え、畳裏返し・表替え、塗装工事、設備の取替えなど11箇所の修理費用として72万7592円を請求。敷金30万円との差額42万9951円と未払水道料金2359円の支払いを求めました。

請求の概要
  • 未払水道料金:2,359円
  • 修繕/原状回復費用:72万5233円
    • クロス・クッションフロア・襖・畳の裏返し・表替え・塗装工事・設備の取替えなど11箇所
1994年11月22日

京都簡易裁判所判決

京都簡易裁判所判決

一審では、通常の使用による汚損等は賃借人が支払った更新料等で賄うべきとされ、賃借人Yの負担部分はないと判断。賃貸人Xは敷金から未払水道料金を控除した29万7641円を返還するよう命じられました。

判決内容
  • 未払水道料金:2,359円
1995年10月5日

京都地方裁判所判決

京都地方裁判所判決

二審でも一審判決が支持され、賃貸人Xの控訴は棄却されました。修理・取替え特約は賃貸人の修繕義務を免除することを定めたものであり、通常の使用による損耗について賃借人に原状回復義務はないと判断されました。

判決内容
  • 未払水道料金:2,359円
1996年3月19日

大阪高等裁判所判決

大阪高等裁判所判決

上告審でも控訴審判決が維持されました。

判決内容
  • 未払水道料金:2,359円

まとめ:退去費用の内訳と合計

退去費用の内訳と合計/入居期間5年7ヵ月
入居期間5年7ヵ月
退去費用の内訳
未払水道料金
2,359円
クロスの張替えなど11箇所の修理費用
賃借人が支払った更新料等で賄うため 0円
退去費用の合計

2,359

請求額の内訳
未払水道料金
2,359円
クロスの張替えなど11箇所の修理費用
72万5,233円
請求額の合計

727,592

本件では、賃貸借契約に修理・取替え特約が付されていましたが、賃料以外にも多額の更新料、礼金、敷金が支払われていた事実を考慮し、通常の使用による損耗や汚損については、これらの費用で賄うべきとされました。

また、修理・取替え特約は賃貸人の修繕義務を免除する趣旨であり、賃借人に積極的な修繕義務を課すものではないと解釈されました。そのため、賃借人は故意または重大な過失による汚損以外の修繕費用を負担する必要がないとの判断が示されています。

関連記事:クロス・クッションフロア・畳床・カーペットの相場

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参照元:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)

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