退去費用の相場を知る!壁クロスの修理から換気扇の取替えまで
賃借人Xは平成11年3月に賃貸人Yと賃貸借契約を結びましたが、平成13年3月に契約を解除しました。その後、賃貸物件の修理費用や清掃費用をめぐってトラブルが発生し、裁判所はXの過失や負担すべき費用を判断し、最終的にXに敷金の一部を返還する判決を下しました。

監修者
サレジオ学院高等学校を昭和57年に卒業後、法曹界への志を抱き、中央大学法学部法律学科へと進学。同大学では法律の専門知識を着実に積み重ね、昭和62年に卒業。
その後、さまざまな社会経験を経て、より専門的な形で法務サービスを提供したいという思いから、平成28年に行政書士試験に挑戦し、合格。この資格取得を機に、平成29年4月、依頼者の皆様に寄り添った丁寧なサービスを提供すべく「綜合法務事務所君悦」を開業いたしました。
長年培った法律の知識と実務経験を活かし、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えできるよう、日々研鑽を重ねております。
日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号
賃貸借契約
平成11年3月、賃借人Xは賃貸人Yと月額賃料7万1000円で賃貸借契約を結びました。
この契約に基づき、Xは敷金として14万2000円を支払い、住まいを得ることとなりました。
契約期間中、Xは賃料を払い、物件を借りて生活しましたが、平成13年3月に契約を合意解除し、物件をYに返還しました。
その際、両者は原状回復費用や敷金返還について意見が対立し、問題が発生しました。
- 賃借人Xと賃貸人Yは平成11年3月に賃貸借契約を締結
- 賃料は月額7万1000円
- 敷金は14万2000円
トラブルの発端
契約解除後、Yは物件の壁に開いた穴や修理費、清掃業者による清掃費用として24万4100円をXに請求しました。
これに対してXは、敷金14万2000円および日割戻し賃料1万1774円を相殺した後の残金9万326円を求めて提訴しました。
一方、Xは壁の穴以外の修理費用については自分の負担ではなく保険で支払うと主張し、敷金を含む15万3774円の支払いを求めて提訴しました。
こうして、両者の間でトラブルが発生し、法的な解決が必要となりました。
- 壁ボードの穴修理費用:1万5000円
- 周辺の壁クロスの損傷修理費用:5100円(㎡単位1700円 × 5㎡ × 60%)
- 台所換気扇の焼け焦げ修理費用:2500円(新規交換価格2万5000円の10%)
- 清掃費用:3万5000円
- 合計:6万480円
裁判および判決
裁判所は、まずXの過失による壁の穴の修理費用として1万5000円の負担を認めました。
次に、壁クロスの損傷については、2年経過後の残存価値を考慮し、Xの負担額を5100円としました。
さらに、台所換気扇の劣化についてはXの不相当な使用によるものとし、2万5000円の10%である2500円をXに負担させました。
また、清掃費用3万5000円もXの負担とされました。
以上から、Xが請求できる額は敷金および日割戻し賃料から6万480円を差し引いた9万3294円となり、この金額の返還が認められました。
- 賃貸人Yは原状回復費用として計6万480円を支出
- 賃借人Xは敷金14万2000円および日割戻し賃料1万1774円の合計15万3774円を請求
- 賃貸人Yは対等額で相殺した後の残金9万3294円を賃借人Xに支払う義務がある
まとめ
本件では、賃貸借契約の解除後に発生した原状回復費用をめぐるトラブルが裁判となり、その判決が下されました。
最も重要な点は、裁判所が賃借人Xの過失を認めつつも、経過年数を考慮して負担すべき費用を算定したことです。
具体的には、壁の穴の修理費用や壁クロスの損傷、台所換気扇の取替え費用、清掃費用について、Xの負担額が明確に示されました。
これにより、賃借人Xが請求できる金額が決定され、敷金の一部が返還されました。
この判決は、賃貸借契約における原状回復費用の負担についての指針となり、双方が納得できる形での解決が図られました。
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