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国土交通省が発行している原状回復のガイドラインに基づき、適正な負担割合と客観的な退去費用の相場情報を提供しています。

大阪高裁が示した原状回復特約の限界と賃借人保護への影響

原状回復をめぐるトラブルとガイドラインの冊子

賃貸借契約における原状回復(元の状態に戻すこと)義務の範囲は、賃貸人と賃借人間のトラブルで最も争われる問題の一つです。

特に「通常損耗(普通に使っていてできる傷み)」についての賃借人の負担義務は、契約条項の解釈をめぐって数多くの裁判例が蓄積されています。

今回ご紹介する大阪高等裁判所平成12年8月22日判決(判例タイムズ1067-209)は、この分野において画期的な判断を示した重要な判例です。

この事例では、契約書に「当初契約時の原状に復旧」と明記され、さらに媒介業者から詳細な覚書が交付されていたにも関わらず、裁判所は通常損耗について賃借人の負担義務を否定しました。

本記事では、この判例の詳細な分析を通じて、原状回復特約の有効要件と、賃貸借契約における公正な負担分担の原則について解説いたします。


行政書士 松村 元
監修者

1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。

日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号


目次

概要

本事例は、平成8年3月に締結された賃貸借契約における原状回復費用の負担を巡る争いです。

月額賃料12万円余の賃貸物件について、約2年4か月の賃借期間を経て平成10年7月に契約が終了しました。

マンションの外観
  • 契約期間
    平成8年3月〜平成10年7月(約2年4か月)
  • 月額賃料
    12万円余
  • 敷金
    37万5000円
  • 賃借人請求額
    24万4600円の返還請求

賃貸人は、契約書の原状回復条項及び媒介業者から交付された覚書を根拠として、通常損耗分も含む原状回復費用が敷金(入居時に預ける保証金)を上回ると主張し、敷金の返還を拒否しました。

これに対し賃借人は、通常損耗に対する補修費用は賃借人の負担とはならないとして、24万4600円の敷金返還を求めて提訴したのが本件の経緯です。

一審・二審ともに賃貸人勝訴の判決でしたが、高等裁判所が契約解釈を根本的に見直し、原審を破棄して差し戻すという劇的な展開となりました。

契約内容と特約の詳細

本件では、賃貸借契約書に加えて媒介業者からの詳細な覚書が交付されており、一見すると通常損耗についても賃借人負担とする合意が成立しているように見えました。

退去立ち合いを終えて空っぽになった室内の様子
  • 契約書第21条の規定
    • 「借主は、本契約が終了したときは、借主の費用をもって本物件を当初契約時の原状に復旧させ、貸主に明け渡さなければならない」
  • 媒介業者の覚書内容
    • 「本物件の解約明け渡し時に、借主は契約書21条により、本物件を当初の契約時の状態に復旧させるため、クロス、建具、畳、フロア等の張替費用及び設備器具の修理代金を実費にて清算されることになります」
    • 賃借人は署名押印して媒介業者に交付

契約書第21条は「当初契約時の原状に復旧」という包括的な表現を用いており、一般的な原状回復義務を定めたものでした。

さらに重要なのは、媒介業者から交付された覚書で、具体的に「クロス(壁紙)、建具、畳、フロア等の張替費用及び設備器具の修理代金を実費にて清算」と明記されていた点です。

賃借人はこの覚書に署名押印しており、表面的には通常損耗についても負担することに合意したかのように見える状況でした。

しかし、敷金37万5000円に対して賃貸人主張の原状回復費用が敷金を上回る額となっており、約2年4か月の居住期間に対する負担としては過大であることが問題となりました。

賃貸人・賃借人の主張のポイント

賃貸人側は契約書の明文規定と覚書への署名を根拠として、通常損耗も含む包括的な原状回復義務の履行を求めました。

争点賃貸人側の主張賃借人側の主張
契約条項の解釈契約書21条により「当初契約時の原状に復旧」する義務あり一般的な原状回復義務を定めたものに過ぎない
覚書の効力具体的な負担項目を明記した覚書に署名押印済み通常損耗負担の明確な合意とは言えない
通常損耗の扱い契約条項により通常損耗も賃借人負担と合意済み通常損耗は賃貸借の対価に含まれており賃借人負担外

賃貸人の主張は、契約書第21条の「当初契約時の原状に復旧」との文言により、通常の使用による損耗も含めて元の状態に戻す義務があるというものでした。

さらに、媒介業者からの覚書で「クロス、建具、畳、フロア等の張替費用」が具体的に列挙され、賃借人が署名押印していることから、明確な合意が成立していると主張しました。

一方、賃借人側は、通常損耗に対する補修費用は賃貸借契約の本質的性質上、賃借人の負担とはならないと主張しました。

また、約2年4か月という比較的短期間の居住に対して敷金を上回る原状回復費用を請求することの不合理性も争点となったと推察されます。

裁判所の判断と法的根拠

大阪高等裁判所は、賃貸借契約の本質に立ち返った画期的な判断を示しました。

判断項目裁判所の認定結論
賃借人の原状回復義務の範囲①賃借人が付加した造作の取り除き②通常使用の限度を超える損耗の復旧費用のみ通常損耗は賃借人負担外
通常損耗の性質賃貸借本来の対価であり、賃料に含まれて回収されるもの賃借人に二重負担をさせることは不当
契約条項の解釈「原状に復旧」は一般的な原状回復義務を規定したもの通常損耗負担の明確な合意なし
覚書の効力契約書21条を引用するのみで、これを超える定めなし通常損耗負担の根拠とならない

裁判所は、まず賃貸借契約における原状回復義務の本来的範囲を明確に定義しました。

「賃貸期間中の経年劣化(時間が経って自然に古くなること)、日焼け等による減価分や、通常使用による賃貸物の減価は、賃貸借本来の対価というべきであって、賃借人の負担とすることはできない」との重要な法理を確立しました。

契約条項の解釈については、「『契約時の原状に復旧させ』との文言は、契約終了時の賃借人の一般的な原状回復義務を規定したものとしか読むことはできない」と判断しました。

最も重要な点は、通常損耗を賃借人負担とする場合の要件として、「契約条項に明確に定めて、賃借人の承諾(同意すること)を得て契約すべき」との基準を示したことです。本件では、覚書も契約書21条を引用するのみで、これを超える明確な定めがないと認定され、原審判決が破棄されました。

判例から学ぶポイント

この判例は、原状回復特約の有効要件について重要な指針を提供しています。

六法全書を開いて調べている様子

契約条項解釈の重要原則

  • 明確性の原則
    通常損耗負担には明確で具体的な合意が必要
  • 実質的判断
    形式的な文言より契約の実質的内容を重視
  • 賃貸借の本質
    通常損耗は賃貸借の対価として賃料に含まれる

最も重要な教訓は、単に「原状回復」や「当初の状態に復旧」という文言があっても、それだけでは通常損耗負担の明確な合意とは認められないという点です。

また、媒介業者からの詳細な説明書面があり、賃借人が署名押印していても、その内容が契約書の一般的条項を説明するに留まる場合は、通常損耗負担の根拠とならないことが示されました。

賃貸借契約書が入ったクリアファイル

実務への重要な影響

  • 包括的な原状回復条項では通常損耗負担の根拠不十分
  • 媒介業者の説明書面も明確な合意形成には限界がある
  • 賃借人保護の観点から厳格な要件が求められる

この判例により、その後の最高裁判所平成17年12月16日判決(事例24)の理論的基礎が形成され、現在の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方にも大きな影響を与えています。

賃貸借契約における実践的対策

賃貸借契約書の原状回復条項を確認する際は、通常損耗と特別損耗の区別が明確になっているかを重点的にチェックすることが重要です。

賃貸借契約書にサインをさせられる賃借人の様子

契約締結時の重要チェックポイント

  • 「原状回復」の定義が具体的に明記されているか
  • 通常損耗と特別損耗の区分表が添付されているか
  • 賃借人負担となる修繕項目が明確に列挙されているか

借主の皆様には、まず「当初の状態に復旧」「元の状態に戻す」といった曖昧な表現の契約書には十分注意していただきたいと思います。

事例14が示すように、このような包括的な文言だけでは通常損耗負担の明確な合意とは認められません

重要事項説明(契約前の重要な説明)書や媒介業者からの説明書面についても、単なる一般的説明に留まっていないか、具体的な負担区分(誰が費用を払うかの分け方)が明記されているかを確認してください。

また、敷金の額と想定される原状回復費用のバランスも重要な判断材料となります。

契約条項に疑問を感じた場合は、署名前に「通常の使用による損耗はどこまで借主負担になるのか」を具体例を挙げて確認し、書面での回答を求めることをお勧めします。

まとめ

大阪高等裁判所の本判決は、賃貸借契約における通常損耗負担について画期的な判断を示した重要な判例です。

「通常損耗は賃貸借本来の対価」との法理により、包括的な原状回復条項があっても通常損耗の賃借人負担には明確で具体的な合意が必要であることが確立されました。

媒介業者からの詳細な説明書面があり、賃借人が署名押印していても、契約書の一般的条項を説明するに留まる場合は通常損耗負担の根拠とならないとの判断も示されています。

この判例により、賃借人保護の法理が強化され、その後の最高裁判決やガイドラインの理論的基礎が築かれました。

実務においては、契約条項の明確化と負担区分の具体的記載により、公正で透明性の高い賃貸借関係の構築が求められています。

重要なポイント
  • 通常損耗は賃貸借の対価として賃料に含まれており、原則として賃借人負担外である
  • 包括的な「原状回復」条項だけでは通常損耗負担の明確な合意とは認められない
  • 媒介業者の説明書面があっても、契約書の一般的説明に留まる場合は根拠不十分
  • 通常損耗負担には具体的で明確な契約条項と賃借人の明確な承諾が必要
  • 賃貸借契約では賃借人保護の観点から厳格な要件が求められる

参照元:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)【判例14】

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1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。

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