【退去費用の請求書を無視するリスク】敷金以上の請求にどう対処する?

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賃貸物件の退去時に敷金以上の請求があった場合、請求書を無視することは法的なリスクを招く可能性があります。
国土交通省の原状回復ガイドラインに基づけば、通常の使用による損耗や経年変化は貸主負担となるため、借主は冷静に請求内容を精査し、根拠の不明確な費用については適切な手順で異議を申し立てることが重要でしょう。
請求書を放置すると将来的に法的手続きや信用情報への悪影響といった深刻な問題につながる恐れがあるため、適切な知識をもとに冷静かつ効果的な対処を講じる必要があります。

監修者
1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。
日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号
退去費用の請求書を無視するとどうなる?
賃貸物件の退去時に敷金を超える費用を請求された場合、請求書を無視することは決して適切な対処法ではありません。
請求書を放置することで生じる主要なリスクについて、法的な観点から詳しく解説していきましょう。
法的手続きによる強制執行のリスク
貸主は請求に対する適切な回答を得られない場合、民事訴訟や支払督促といった法的手続きを開始する権利を持っています。
特に支払督促では、借主が異議を申し立てない限り、裁判所が債務名義を付与し、最終的に強制執行による財産の差し押さえが可能となってしまいます。
信用情報機関への登録による影響
貸主が債権回収会社に債権を譲渡したり、裁判所による債務名義を取得したりした場合、借主の信用情報に延滞や債務不履行の記録が残る可能性があります。
この信用情報への悪影響は、将来の住宅ローン審査やクレジットカードの申込時に重大な障害となるでしょう。

請求書を無視するのではなく、まずは請求内容の妥当性を冷静に判断することが大切です。国土交通省のガイドラインを参考に、適切な対処を心がけましょう。
原状回復の基本ルールとは?
退去費用の妥当性を判断するには、国土交通省が定める原状回復ガイドラインの基本的な考え方を理解することが不可欠でしょう。
原状回復ガイドラインでは、損耗の原因や使用状況に応じて貸主負担と借主負担を明確に区分しており、借主はこれらの基準をもとに請求の妥当性を判断できます。
貸主負担となる通常損耗と経年変化
原状回復ガイドラインによれば、以下のような損耗は貸主が負担すべき範囲に含まれています。


- 家具の設置による床の凹みやカーペットの設置跡
- テレビや冷蔵庫などの電気やけによる黒ずみ
- 日照や建物構造上の欠陥による畳やクロスの変色
- 次の借主を確保するための設備の交換やグレードアップ
- 鍵の交換(破損・鍵紛失がない場合)
借主負担となる故意過失による損傷
一方で、借主の故意や過失、通常の使用方法に反する使用によって生じた損傷については、借主が費用を負担する必要があります。


- 故意に付けた傷や落書き
- タバコのヤニやにおいの付着
- ペットによる損傷や臭いの付着
- 清掃や手入れを怠ったことによるカビやシミ
- 鍵の紛失や破損による交換費用



重要なのは、請求された項目がどちらに該当するかを客観的に判断することです。曖昧な項目については積極的に説明を求めることをお勧めします。
敷金以上の請求への具体的対処法とは?
敷金を超える退去費用の請求を受けた場合、請求内容を詳細に検証し、段階的に適切な対処を講じることが重要になります。
感情的にならず、法的根拠をもとに冷静に対応することで、妥当でない請求から身を守ることができるでしょう。
請求書の詳細な内容確認と記録保存
まず第一に、請求書に記載された各項目の詳細を確認し、以下の情報が明記されているかをチェックしましょう。


- 修繕箇所の具体的な場所と損傷状況の詳細
- 修繕工事の内容と使用する材料の仕様
- 工事業者の見積書や領収書の添付
- 損傷の原因と借主負担とする法的根拠
- 経年劣化や減価償却を考慮した費用算出方法
入居時と退去時の状況比較
請求の妥当性を判断するため、入居時に撮影した写真や入居時チェックリストと退去時の状況を比較しましょう。
入居前から存在していた損傷や設備の不具合については、借主が責任を負う必要はありません。
また、契約期間中の通常使用による摩耗や経年変化についても、貸主負担となる可能性が高いでしょう。



入居時の写真撮影や記録作成は、後のトラブル回避に非常に有効です。まだ実施していない方は、今後の参考にしてください。
内容証明郵便による異議申立て手順とは?
請求内容に納得できない場合、内容証明郵便による正式な異議申立てが最も効果的な対処法となります。
内容証明郵便は、いつ・誰が・誰に・どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明する制度であり、法的な効力を持つ重要な手続きでしょう。
異議申立て書の作成ポイント
効果的な異議申立て書を作成するには、以下の要素を明確に記載することが必要になります。


- 請求項目のどの部分に異議があるかの具体的な指摘
- 原状回復ガイドラインに基づく法的根拠の明示
- 入居時からの経過年数と減価償却の考慮
- 通常損耗と借主の故意過失の区別
- 今後の対応についての明確な要求事項
第三者機関への相談と調停申立て
内容証明郵便による交渉が不調に終わった場合、以下の第三者機関への相談や調停申立てを検討しましょう。
相談機関 | 特徴とメリット |
---|---|
消費生活センター | 無料相談が可能で、専門相談員によるアドバイスを受けられます |
各都道府県の宅建協会 | 不動産取引の専門知識を持つ相談員が対応してくれます |
簡易裁判所の民事調停 | 裁判官と調停委員による公的な調停手続きが利用できます |
これらの機関は、借主と貸主双方の主張を客観的に検討し、原状回復ガイドラインに基づいた妥当な解決策を提示してくれるでしょう。



法的手続きを進める際は、認定司法書士や弁護士への相談をお勧めします。専門家のサポートにより、より確実な解決が期待できます。
将来のトラブルを防ぐための予防策とは?
退去時のトラブルを未然に防ぐには、入居時からの適切な準備と居住中の注意深い管理が不可欠でしょう。
特に賃貸借契約書の内容確認と記録保存は、将来的なトラブル回避に重要な役割を果たします。
入居時の契約内容確認と記録作成
賃貸借契約を締結する際は、原状回復に関する特約事項を詳細に確認し、借主負担となる範囲を明確にしておきましょう。
また、入居時の室内状況を写真や動画で記録し、貸主との間で現状確認書を作成することが重要になります。


- 壁・床・天井の傷や汚れの撮影
- 設備機器の動作状況と外観の確認
- 窓ガラスやサッシの状態記録
- 水回り設備の不具合やカビの有無
- 鍵や付属品の動作確認
居住中の適切な使用と維持管理
日常的な清掃や適切な換気を心がけ、設備機器の定期的なメンテナンスを実施することで、退去時の追加費用を最小限に抑えることができるでしょう。
特に水回りのカビ対策や、喫煙による壁紙への影響を避けることは重要になります。
また、小さな傷や設備の不具合を発見した際は、早期に貸主へ報告し、適切な修繕を依頼することをお勧めします。



予防策は手間がかかりますが、退去時の高額請求を避けるための最も確実な方法です。日頃からの心がけが大切でしょう。
まとめ
賃貸物件の退去時に敷金以上の費用を請求された場合、請求書を無視することは法的リスクを招く危険な行為であることがお分かりいただけたでしょう。
国土交通省の原状回復ガイドラインに基づき、通常損耗や経年変化は貸主負担、故意過失による損傷は借主負担という基本原則を理解し、請求内容を冷静に精査することが重要になります。
妥当でない請求に対しては、内容証明郵便による異議申立てや第三者機関への相談など、段階的かつ効果的な対処を講じましょう。
さらに将来のトラブルを防ぐため、入居時の記録作成と居住中の適切な管理を心がけることで、退去時の不当な費用請求から身を守ることができるでしょう。
複雑な法的手続きが必要な場合は、認定司法書士や弁護士への相談を検討し、専門家のサポートを受けながら適切な解決を目指すことをお勧めします。
- 請求書を無視せず、まずは内容の詳細な確認を行いましょう
- 原状回復ガイドラインを参考に、請求の妥当性を冷静に判断しましょう
- 異議がある場合は内容証明郵便による正式な申立てを検討しましょう
- 第三者機関への相談や専門家のサポートを積極的に活用しましょう
- 今後は入居時の記録作成と適切な維持管理を心がけましょう

