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原状回復ガイドラインのまとめ ≫

[事例25]本件敷引特約は、消費者契約法10条により無効であるとされた事例

この事例の概要

本件は、賃借人Xが賃貸人Yとの賃貸借契約において敷引特約の無効を主張し、敷金の返還を求めた事案です。裁判所は、敷引特約が消費者契約法10条に該当し無効であると判断し、敷金の大部分を返還するよう命じました。


行政書士 松村 元
監修者

サレジオ学院高等学校を昭和57年に卒業後、法曹界への志を抱き、中央大学法学部法律学科へと進学。同大学では法律の専門知識を着実に積み重ね、昭和62年に卒業。
その後、さまざまな社会経験を経て、より専門的な形で法務サービスを提供したいという思いから、平成28年に行政書士試験に挑戦し、合格。この資格取得を機に、平成29年4月、依頼者の皆様に寄り添った丁寧なサービスを提供すべく「綜合法務事務所君悦」を開業いたしました。
長年培った法律の知識と実務経験を活かし、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えできるよう、日々研鑽を重ねております。

日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号


目次

事例の背景

賃借人Xと賃貸人Yは、平成16年3月22日に賃貸借契約を締結しました。

契約内容は、賃料月額13万5000円、契約期間2年、敷金80万円、解約時敷引金50万円でした。

賃借人Xは平成17年6月末日に建物を明け渡し、敷引特約が無効であるとして敷金の返還を求めました。

賃貸人Yは、敷引金や原状回復費用などを控除した金額のみを返還すべきと主張しました。

  • 洗面台の傷の修復費用
  • ミラーキャビネットの入れ替え工事費用
  • 水道料金立替金

裁判所の判断

裁判所は以下の点を判断しました。

賃借人の負担項目

  • 水道料金立替金

賃貸人の負担項目

  • 洗面台とミラーキャビネットの入れ替え工事費用

裁判所は、賃貸人Yが法人であることから消費者契約法上の「事業者」に該当し、賃借人Xは「消費者」であるため、本件契約に消費者契約法が適用されると判断しました。

敷引特約については、敷引金が敷金の約62.5%、賃料の約3.7倍であり、契約期間や損害の有無にかかわらず差し引かれる内容が賃借人Xに一方的で不当に不利であるとして、消費者契約法10条に該当し無効とされました。

また、洗面台の傷は賃借人Xの故意または過失によるものとは認められず、原状回復費用の請求は認められませんでした。

その結果、敷金80万円のうち、賃貸人Yが立替払いした水道料金5169円を控除した79万4831円の返還が命じられました。

裁判所は、敷引特約を無効とし、敷金の大部分を賃借人Xに返還するよう賃貸人Yに命じたことで、本件は結論づけられました。

まとめ

結論
賃貸人からの請求金額:800,000円
裁判所の判決:5,169円
預け入れた保証金:800,000円
保証金の返還額:794,831円

本判決から得られる実務的な示唆は以下の通りです。

  • 敷引特約の有効性
  • 原状回復費用の請求
  • 実務上の注意点

敷引特約の有効性は、その内容が一方的で不当に不利かどうかが判断基準となり、消費者契約法10条に該当するかどうかが問われます。

原状回復費用の請求については、賃借人の故意または過失による損傷が明確に立証されなければ認められません。

実務上、賃貸人は敷引特約の内容が不当に不利でないよう留意し、原状回復費用の請求においては証拠を十分に整えることが重要です。

参照元:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)

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