
強制退去の期間は滞納から半年以上かかる理由と退去を回避する対処法
家賃の支払いが遅れてしまい「このまま強制退去になるのだろうか」と不安を感じていませんか。
結論として、家賃を3ヶ月以上滞納すると強制退去のリスクが高まりますが、催告から強制執行までには半年以上の期間がかかるのが一般的です。
貸主が借主を強制退去させるためには裁判所を通じた法的手続きが必要であり、その間に借主が対処できる時間と方法は十分に残されています。
この記事では、家賃滞納で強制退去になるまでの期間と流れ、契約解除の条件、そして退去を回避するための具体的な対処法を解説します。
なお、退去に伴う費用の精算については「退去費用の相場を間取り別と項目別に解説する目安金額と高額請求への対処法」で詳しく解説しています。

監修者
1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。
日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号
家賃滞納で強制退去になるまでの期間と流れ

- 家賃滞納3ヶ月が契約解除の目安とされる理由
- 催告から契約解除通知までの具体的な流れ
- 裁判所による明渡し判決と強制執行の手続き

「家賃を滞納したら、いつ追い出されるのだろう」と焦る気持ちは多くの方に共通しています。
ただ、貸主が借主を退去させるには法律上の手続きが必要で、滞納してすぐに部屋を明け渡す必要はありません。
家賃滞納3ヶ月が契約解除の目安とされる理由

まず、法律上は「何ヶ月滞納したら強制退去」という明確な基準は定められていません。
しかし、裁判の判例では3ヶ月以上の滞納が契約解除の目安とされています。
裁判所が賃貸借契約の解除を認めるかどうかは「貸主と借主の信頼関係が破壊されたかどうか」で判断されるため、1〜2ヶ月の一時的な滞納では強制退去に至らないのが一般的です。
ただし、過去に繰り返し家賃の支払いが遅れた履歴がある場合は、3ヶ月未満の滞納でも信頼関係の破壊が認められて契約解除となるケースがあります。
3ヶ月という目安は判例上の基準であり、滞納の経緯や誠意ある対応の有無で判断が変わります。
民法第601条:賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
催告から契約解除通知までの具体的な流れ


次に、家賃滞納が発生してから契約解除通知が届くまでの流れを確認しましょう。
貸主はまず借主に対して電話や書面で催告(支払いの督促)を行い、期限内に支払いがない場合に内容証明郵便で契約解除通知を送付します。
催告では「○日以内に滞納分を支払わなければ契約を解除する」という内容が記載されるのが一般的で、この催告期間は通常1〜2週間に設定されます。
催告に応じず支払いもなかった場合、契約解除が成立しますが、この時点ではまだ強制退去には至りません。
催告書が届いた時点で管理会社に連絡すれば、分割払いなどの相談に応じてもらえる可能性があります。
民法第541条:当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
裁判所による明渡し判決と強制執行の手続き


さらに、契約解除が成立しても借主が退去しない場合、貸主は裁判所に明渡し訴訟を提起する必要があります。
裁判所が明渡しの判決を出した後も借主が自主的に退去しなければ、貸主は強制執行を申し立てます。
強制執行は裁判所の執行官が実施する手続きで、借主の荷物を搬出して部屋を明け渡す形で行われ、この費用は30〜50万円程度になります。
催告から強制執行までの全手続きを合わせると通常6ヶ月〜1年程度の期間を要するため、滞納が発覚してすぐに追い出されることはありません。
強制執行にかかる費用は最終的に借主にも請求されるため、その前の段階で対処することが重要です。
民法第415条:債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
家賃滞納で発生する費用と遅延損害金の仕組み


- 遅延損害金の利率と具体的な計算方法
- 滞納が長引くほど膨らむ費用の内訳
- 敷金から滞納家賃が差し引かれる仕組み


強制退去の手続き自体にも費用がかかりますが、借主にとって見落としやすいのが滞納中に日々膨らんでいく遅延損害金です。
滞納額だけでなく、付随して発生する費用の全体像を把握しておくことが冷静な判断につながります。
遅延損害金の利率と具体的な計算方法


まず、家賃を滞納すると遅延損害金が発生します。
多くの賃貸借契約では遅延損害金の利率が年利14.6%と定められているのが一般的です。
契約書に利率の定めがない場合は、民法上の法定利率である年3%が適用されます。
たとえば家賃8万円を3ヶ月滞納し、契約書に年利14.6%と記載されている場合の遅延損害金は合計で約8,760円となり、滞納期間が延びるほど金額はさらに膨らみます。
遅延損害金は日割りで加算されるため、1日でも早く対処するほど負担を抑えられます。
民法第419条第1項:金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
滞納が長引くほど膨らむ費用の内訳
加えて、滞納が長引くと遅延損害金だけでなく、訴訟費用や強制執行費用など複数の費用が加算されていきます。
| 費用項目 | 金額の目安 | 負担者 |
|---|---|---|
| 滞納家賃(3ヶ月分) | 24万円(家賃8万円の場合) | 借主 |
| 遅延損害金(年14.6%) | 約8,760円(3ヶ月分) | 借主 |
| 明渡し訴訟の費用 | 1万円〜3万円(印紙代・切手代) | 貸主→借主へ請求の場合あり |
| 弁護士費用(訴訟代理) | 20万円〜50万円 | 貸主→借主へ請求の場合あり |
| 強制執行費用 | 30万円〜50万円 | 貸主→借主へ請求の場合あり |
上記のとおり、滞納家賃に加えて総額100万円を超える負担になる可能性もあります。
貸主が訴訟で勝訴した場合、裁判費用の一部を借主に請求することが認められるケースがあります。
これらの費用を回避するためにも、催告が届いた段階で早急に対応することが最善の方法です。
費用の全体像を把握しておくと、早期対応の重要性がよくわかります。
民法第1条第2項:権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
敷金から滞納家賃が差し引かれる仕組み


そのうえで、入居時に敷金を預けている場合は、敷金から滞納家賃や遅延損害金が差し引かれる仕組みを理解しておきましょう。
民法第622条の2では、賃貸借が終了し賃貸物の返還を受けたときに、貸主は敷金から未払い賃料などの債務を控除した残額を借主に返還すると定めています。
つまり、滞納額が敷金を超えると追加の支払い義務が発生し、敷金が返還されないだけでなく差額も請求されます。
敷金が家賃2ヶ月分の16万円で3ヶ月分の滞納がある場合、差額の8万円に加えて遅延損害金と原状回復費用も別途請求されることになります。
敷金の残額は退去後の精算で初めて確定するため、滞納がある場合は特に注意が必要です。
民法第622条の2:賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。)を受け取っている場合において、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
家賃の支払いが困難な場合は滞納が長引く前に公的な支援制度が利用できるか確認しましょう
強制退去を回避するための具体的な対処法


- 滞納に気づいたらすぐに貸主や管理会社に連絡する
- 住居確保給付金などの公的支援制度を活用する
- 弁護士や法テラスに相談して法的な対処を検討する


家賃を滞納してしまったとき「もう手遅れだ」とあきらめる必要はありません。
強制退去に至るまでには法的手続きが必要で、その間に借主が取れる対策は複数あります。
滞納に気づいたらすぐに貸主や管理会社に連絡する


まず、家賃の支払いが遅れていることに気づいたら、すぐに貸主や管理会社に連絡しましょう。
早めの連絡と支払い意思の提示が、信頼関係の維持につながります。
何も連絡せずに滞納を続けると、貸主との信頼関係が崩壊したと判断されやすくなり、契約解除が認められる方向に傾きます。
分割払いや支払い猶予の相談に応じてもらえるケースも多いため、誠意を持って事情を説明することが強制退去を回避する第一歩です。
連絡なしの滞納は信頼関係の破壊と判断される大きな要因になりますので、まずは正直に相談しましょう。
民法第400条:債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
住居確保給付金などの公的支援制度を活用する
次に、収入の減少や失業で家賃の支払いが困難になった場合は、住居確保給付金の申請を検討することをお勧めします。
- 離職や収入減で住居を失うおそれがある方が対象
- 自治体が家賃相当額を原則3ヶ月間支給する
- 条件を満たせば最長9ヶ月まで延長が可能


申請は居住地の自立相談支援機関やハローワークの窓口で受け付けており、収入と預貯金が一定の基準以下であることが主な条件です。
このほかにも消費者センターへの相談や、社会福祉協議会の緊急小口資金なども活用できる場合があります。
公的支援制度を利用して家賃を支払えれば、信頼関係の破壊を防ぎ契約解除を回避できる可能性が高まります。
住居確保給付金は自治体の窓口で申請できますので、条件に該当するか早めに確認してください。
民法第621条:賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
弁護士や法テラスに相談して法的な対処を検討する


最後に、貸主から契約解除通知を受けた場合や退去費用の交渉が必要な場合は、弁護士や法テラスへの相談を検討しましょう。
法テラス(0570-078374)では、収入が一定以下の方であれば弁護士への無料法律相談を利用することができます。
契約解除の有効性や滞納額の妥当性について法的な観点からアドバイスを受けることで、不利な条件で退去することを防げます。
貸主が法律に反する方法で退去を迫る行為(鍵の交換・荷物の搬出・威圧的な訪問など)は違法であり、民法第90条の公序良俗違反に該当する可能性があります。
法テラスなら無料で弁護士に相談できますので、一人で悩まずにご利用ください。
民法第90条:公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
退去に関する不安がある場合は弁護士や司法書士に早めに相談して今後の対策を立てましょう
家賃滞納と強制退去に関するよくある質問
強制退去の期間と回避策のまとめ
家賃の滞納は誰にでも起こりうる問題ですが、早期の対応が強制退去を防ぐ鍵になることを覚えておきましょう。
滞納に気づいたらすぐに管理会社へ連絡し、住居確保給付金や法テラスの無料相談を活用することで最悪の事態を回避できます。
- 家賃3ヶ月以上の滞納で強制退去のリスクが高まる
- 催告から強制執行まで通常6ヶ月〜1年程度かかる
- 滞納したらすぐに管理会社に連絡して支払い方法を相談する
- 住居確保給付金や法テラスの無料相談を活用する
- 敷金ドットコムは、情報提供を目的としたサイトです。行政書士が記事の監修および執筆を行っておりますが、根本的な問題やトラブルの解決を目的としたものではありません。トラブルの解決については、弁護士または認定司法書士にご相談ください。










