
賃貸の障子が破れたときの修繕費用と退去時の負担の考え方
賃貸物件の障子が破れてしまい、「退去時にいくら請求されるのか」と不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
障子の張替え費用は1枚あたり2,000円から8,000円が目安ですが、障子紙のグレードや破損の程度によって請求額は大きく変わります。
さらに重要なのは、障子紙は国土交通省のガイドラインで消耗品として扱われるため、経過年数による減価償却が適用されず、破損時は張替え費用の全額が借主負担になる点です。
この記事では、賃貸物件の障子が破れた場合の修繕費用の相場、借主と貸主の負担区分、そして退去時に不当な請求を防ぐための対処法を解説します。
なお、退去費用全般の相場や適正額の見分け方については「退去費用の相場と適正額の判断基準」で詳しく解説しています。

監修者
1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。
日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号
賃貸の障子が破れたときの修繕費用は破損の種類で相場が異なる

- 障子の張替え費用は1枚2,000円から8,000円が相場になる
- 障子の破損原因によって借主負担か貸主負担かが決まる
- 障子の枠や骨組みまで損傷すると修繕費用が高額になる

障子が破れてしまったとき、まず気になるのは「修繕にいくらかかるのか」という費用面ではないでしょうか。
ここでは、破損の種類ごとの費用相場と、借主・貸主それぞれの負担区分を整理します。
まず障子の張替え費用は1枚2,000円から8,000円が相場になる

まず、障子紙の張替え費用は使用する障子紙のグレードによって大きく異なります。
一般的な普及品の障子紙であれば1枚あたり2,000円から4,000円程度ですが、破れにくい強化障子紙やプラスチック障子紙を使用する場合は1枚5,000円から8,000円程度の費用が発生します。
| 障子紙の種類 | 張替え費用(1枚) | 特徴 |
|---|---|---|
| 普及品(パルプ障子紙) | 2,000円〜4,000円 | 最も一般的で安価 |
| 強化障子紙 | 4,000円〜6,000円 | 破れにくい加工済み |
| プラスチック障子紙 | 5,000円〜8,000円 | 水拭き可能で耐久性が高い |
障子が4枚ある和室であれば、すべて張り替えた場合に普及品でも8,000円から16,000円、強化障子紙では20,000円から32,000円になる計算です。
民法第621条は、原状回復の対象を「通常の使用及び収益によって生じた損耗」と「経年変化」を除いた損傷に限定しています。
障子紙のグレードを事前に管理会社に確認しておくと、退去時の費用を正しく見積もることができます。
民法第621条:賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に回復する義務を負う。
次に障子の破損原因によって借主負担か貸主負担かが決まる


次に、障子の修繕費用を誰が負担するかは、破損の原因が「借主の故意・過失」か「経年劣化・通常損耗」かによって判断されます。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、日照による日焼けや自然劣化による障子紙の変色は通常損耗として貸主負担と明記されています。
- 借主負担:子どもやペットが障子を破った場合
- 借主負担:家具の移動で障子に穴を開けた場合
- 貸主負担:日焼けによる変色や自然劣化の場合
- 貸主負担:結露による障子紙のたるみの場合


一方で、子どもが遊んでいて障子に穴を開けた場合やペットのひっかき傷は借主の善管注意義務違反として借主負担になります。
民法第400条が定める善管注意義務は、借りた物を「善良な管理者の注意」で保存する義務を借主に課しています。
破損原因が経年劣化か過失かを正しく判断するためにも、入居時の写真記録が重要です。
民法第400条:債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
さらに障子の枠や骨組みまで損傷すると修繕費用が高額になる


さらに、障子紙だけでなく枠(框)や骨組み(桟)にまで損傷が及ぶと、障子本体の交換が必要になり費用は大幅に上がります。
障子本体を丸ごと交換する場合の費用は、1枚あたり15,000円から30,000円程度が相場です。
障子の枠や骨組みは建具に分類されるため、ガイドラインでは建物の耐用年数(木造22年、鉄筋コンクリート造47年)に準じた経過年数が考慮されます。
民法第601条は賃貸借契約の基本的な義務として、貸主が物件を使用可能な状態で提供し続ける義務を定めています。
枠や骨組みの損傷は障子紙だけの破れと比べて費用が3倍以上になることもあるため、早めに管理会社に相談することをおすすめします。
民法第601条:賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
退去費用の明細で障子の修繕費用に疑問を感じた場合は、ガイドラインの基準と照らし合わせて適正かどうかを確認しましょう。
複数の業者から見積もりを比較したい場合は、リフォーム一括見積もりサービスを活用する方法もあります。
障子紙は消耗品扱いのため経過年数による減価償却が適用されない


- 障子紙はガイドラインで消耗品に分類され経年劣化の減額がない
- 障子の枠や骨組みは建物の耐用年数に準じた減価償却が適用される
- 障子紙と枠の費用を分けて請求されているか確認が必要になる


クロスの張替えでは入居年数に応じた減価償却で借主の負担が軽くなりますが、障子紙にはこの仕組みが適用されません。
この違いを知らないと、退去時に想定外の費用を請求されることになります。
まず障子紙はガイドラインで消耗品に分類され経年劣化の減額がない


まず、国土交通省のガイドラインでは、障子紙は襖紙と同様に「消耗品」として分類されています。
消耗品に分類されるということは、クロス(壁紙)のように耐用年数6年の定額法で残存価値を計算する仕組みが障子紙には適用されないことを意味します。
つまり、入居10年であっても借主の過失で障子紙を破いた場合は、張替え費用の全額を借主が負担する必要があるのです。
このルールは「退去費用を払わなくていい年数の考え方」で詳しく解説しているクロスの仕組みとは大きく異なります。
クロスと障子紙では減価償却の扱いが違うため、同じ感覚で費用を見積もると予想外の出費になることがあります。
民法第622条の2:賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。)を受け取っている場合において、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
加えて障子の枠や骨組みは建物の耐用年数に準じた減価償却が適用される


加えて、障子紙とは異なり、障子の枠(框)や骨組み(桟)は「建具」として建物の一部に分類されます。
建具に該当するため、ガイドラインでは建物の構造に応じた耐用年数(木造22年、鉄筋コンクリート造47年)に準じて経過年数に応じた減価償却が適用されます。
例えば、木造アパートに10年間入居して障子の枠を破損した場合、残存価値は新品の約55%まで減少するため、交換費用30,000円であれば借主負担は約16,500円になる計算です。
この耐用年数と減価償却の仕組みについては「ガイドラインの耐用年数一覧と退去費用の計算」で詳しく解説しています。
障子紙の費用と枠の費用を分けて計算することが、適正な退去費用を把握するための基本です。
民法第608条第1項:賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
そのうえで障子紙と枠の費用を分けて請求されているか確認が必要になる


そのうえで、退去時の精算書を受け取ったら、障子紙の張替え費用と枠の交換費用が分けて記載されているかを必ず確認してください。
管理会社によっては障子紙と枠の費用をまとめて「障子交換一式」として請求するケースがあり、この場合は枠の減価償却の未反映可能性があります。
精算書の内訳が不明確な場合は、管理会社に対して障子紙と枠それぞれの費用と経過年数の減額計算を書面で開示するよう求めましょう。
民法第1条第2項は信義誠実の原則を定めており、貸主にも透明性のある精算を行う義務があります。
精算書の内訳が「一式」とだけ書かれている場合は、必ず明細の開示を求めることが大切です。
民法第1条第2項:権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
退去費用の精算書が届いたら、まずは内訳の確認とガイドラインの基準との照合から始めてみてください。
障子の修繕費用の請求額を適正に抑えるための対処法がある


- 退去前に破損箇所を日付入り写真で記録しておく
- 精算書の単価をガイドラインの相場と照合して確認する
- 不当な請求には書面で減額交渉を行う


障子の修繕費用が相場より高いと感じたとき、具体的にどのような行動をとればよいのでしょうか。
ここでは、退去前から実践できる対処法を3つのステップで紹介します。
まず退去前に破損箇所を日付入り写真で記録しておく


まず、退去前の準備として、障子の破損箇所をスマートフォンで日付入り写真に記録しておくことが重要です。
写真がない場合は、管理会社が独自に判断した損傷範囲に基づいて修繕費用を請求するため、借主に不利な金額設定傾向があります。
撮影のポイントは、破損箇所の全体写真と近接写真の両方を撮影し、可能であれば入居時の写真と比較できる状態にしておくことです。
退去時の写真記録については「退去時に写真を撮っていないときの対処法」でも詳しく解説しています。
写真記録は退去費用のトラブル防止に最も効果的な手段のひとつです。
民法第415条第1項:債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
次に精算書の単価をガイドラインの相場と照合して確認する


次に、退去後に届いた精算書の障子修繕費用を、ガイドラインに記載された相場と照合します。
普及品の障子紙であれば1枚あたり2,000円から4,000円が適正な範囲であり、この金額を大幅に超える請求がある場合は管理会社に根拠の説明を求める必要があります。
また、障子紙の張替えだけで済むのに障子本体の交換費用を請求されていないか、必要以上に高額なグレードの障子紙で計算されていないかも確認すべきポイントです。
精算書の内訳確認の方法は「退去費用の内訳を教えてくれないときの対処法」で具体的に説明しています。
精算書が届いたら、まずは各項目の単価をガイドラインの基準と比較するところから始めましょう。
民法第533条:双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
さらに不当な請求には書面で減額交渉を行うことが有効になる


さらに、ガイドラインの相場と比較して不当に高い金額が請求されている場合は、書面で減額交渉を行うことが有効です。
口頭のやり取りでは証拠が残らないため、内容証明郵便による減額交渉方法が実務的に効果的です。
内容証明郵便の書き方と送付手順については「敷金返還請求書の書き方と内容証明郵便での送付手順」で解説しています。
民法第95条は錯誤による意思表示の取消しを認めており、精算書の内容に事実と異なる記載がある場合には法的な対抗手段が存在します。
書面での交渉は証拠として残るため、後のトラブル防止にもつながります。
民法第95条第1項:意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
よくある質問
まとめ
- 障子紙の張替え費用は1枚2,000円から8,000円が相場
- 借主の過失による破損は借主負担、経年劣化は貸主負担
- 障子紙は消耗品扱いで耐用年数の減価償却が適用されない
- 障子の枠は建物の耐用年数に準じた減価償却が適用される
- 精算書では障子紙と枠の費用が分けて記載されているか確認する
賃貸物件の障子が破れた場合、修繕費用の負担は破損原因と障子の部位によって大きく異なります。
障子紙は消耗品扱いのため入居年数に関わらず全額借主負担になりますが、枠や骨組みは建物の耐用年数に応じた減価償却が適用されるため、精算書の内訳を確認することが重要です。
退去費用の明細に不明な点がある場合は、ガイドラインの基準と照合し、必要に応じて書面で減額交渉を行いましょう。
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