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敷金ドットコムは、賃貸アパートを退去する際のトラブルを未然に防止するための情報サイトです。
国土交通省が発行している原状回復のガイドラインに基づき、適正な負担割合と客観的な退去費用の相場情報を提供しています。

部分的損耗でも全面張替えが必要とされる場合の費用負担の実情

原状回復をめぐるトラブルとガイドラインの冊子

賃貸住宅の退去時に発生する原状回復(元の状態に戻すこと)費用は、損耗の範囲と修復方法により大きく変わる複雑な問題です。

特に、部分的な損耗であっても全面張替えが必要となる場合、その費用負担をどう判断すべきかは実務上重要な争点となります。

今回ご紹介する春日井簡易裁判所平成9年6月5日判決は、この難しい問題に対して明確な判断基準を示した重要な判例です。

本事例では、一部の損耗が賃借人の責任によるものであっても、他の部分の自然損耗については賃貸人負担とする一方、施工上の必要性から全面張替えとなった場合の負担について具体的な判断が示されました。

また、退去時の清掃義務についても重要な基準が確立されており、賃貸借契約の実務に与える影響は大きいものとなっています。


行政書士 松村 元
監修者

1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。

日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号


目次

概要

本事例は、春日井市内のマンションにおける約6年間の賃貸借契約終了時の原状回復費用を巡る争いです。

平成2年4月16日に締結された契約は2年の当初期間で自動更新され、平成8年3月23日に終了しました。

マンションの外観
  • 物件
    春日井市内のマンション
  • 賃借期間
    平成2年4月〜平成8年3月(約6年間)
  • 月額賃料
    6万4000円(契約終了時7万4000円)
  • 敷金
    17万4000円

契約期間中の平成3年12月に当初の賃貸人が死亡し、その相続人が賃貸人の地位を承継したという特殊な経緯もありました。

退去時には賃借人・賃貸人の妻・宅建業者の三者立会いで修繕箇所の確認が行われ、賃借人は畳表(畳の表面のゴザ部分)やクロス(壁紙)張替え費用の一部負担は認めたものの、賃貸人側が主張する30万円を超える修繕費用について争いが発生しました。

この結果、敷金(入居時に預ける保証金)の返還を求める賃借人と、追加費用の支払いを求める賃貸人との間で訴訟に発展したのです。

契約内容と特約の詳細

本件賃貸借契約は、2年間の当初期間後に1年毎の自動更新となる一般的な契約形態でした。

退去立ち合いを終えて空っぽになった室内の様子
  • 基本的な契約条件
    • 当初契約期間:2年間(平成2年4月16日〜)
    • 更新方式:1年毎の自動更新
    • 賃料:月額6万4000円(終了時は7万4000円)
    • 敷金:17万4000円
  • 争点となった修繕項目
    • 和室A・B及び洗面所のクロス張替え
    • 和室A・Bの畳表替え
    • 退去時清掃費用
    • 総請求額:30万7940円

判決文からは具体的な原状回復特約の記載は確認できませんが、退去時の三者立会いで修繕箇所を確認する一般的な手続きが取られていました。

賃借人は一部の修繕費用については負担を認めていたものの、賃貸人側が主張する「通常の使用に伴って発生する自然的損耗をはるかに超える」との判断については争いました。

特に和室Bのクロスについては、部分的な損耗であっても施工上全面張替えが必要となるケースとして、費用負担の在り方が重要な争点となりました。

また、退去時の清掃状況についても、その不十分さが賃借人の責任として問われることになりました。

賃貸人・賃借人の主張のポイント

賃貸人と賃借人の間で、損耗の性質と修繕範囲について根本的な見解の相違がありました。

争点賃貸人側の主張賃借人側の主張
損耗の性質通常の使用に伴う自然損耗をはるかに超える使用状況一部の損耗は認めるが、多くは自然損耗の範囲内
修繕範囲全面的な張替えが必要(30万7940円)部分修繕で十分な箇所も多い(6万2700円程度)
清掃義務退去時清掃が不十分で追加費用が発生通常の清掃は実施済み
負担区分賃借人が大部分を負担すべき自然損耗分は賃貸人負担

賃貸人側は、約6年間の使用により建物の状況が通常の自然損耗を大きく超えており、修繕及び清掃に要した30万円超の費用は賃借人が負担すべきと主張しました。

特に和室のクロスや畳については、全面的な張替えが必要な状況であり、これらは賃借人の使用方法に起因するものだと強調しました。

一方、賃借人側は一部の損耗については責任を認めつつも、多くの修繕項目は通常の経年変化によるものであり、賃貸人が過大な修繕費用を請求していると反論しました。

また、敷金の返還を求める本訴に対して、賃貸人が11万円超の追加支払いを求める反訴を提起したことで、両者の主張の隔たりの大きさが浮き彫りになりました。

裁判所の判断と法的根拠

裁判所は、損耗の原因と修繕の必要性を個別に検討し、部分的損耗における全面張替えの負担について重要な判断基準を示しました。

判断項目裁判所の認定結論
和室Bのクロス部分的損耗でも全面張替えが必要となる場合、その原因が賃借人の行為によるものであれば全額負担全面張替え費用を賃借人負担
和室A・洗面所のクロス通常使用による自然損耗の範囲内であり、証拠不十分賃貸人負担
畳表替え必要性とバランスを考慮すると賃借人負担は不当賃貸人負担
清掃費用退去時清掃の不十分さが原因賃借人負担(2万円)

最も重要な判断は、和室Bのクロスに関するものでした。裁判所は「部分のみを修復したのでは、部屋全体が木に竹を継いだような結果となり、結局部屋全体のクロスを張替え修復せざるをえない」と認定しました。

そして「それはとりもなおさず賃借人の責によるものである」として、施工上の必要性から生じる全面張替え費用も賃借人負担とする重要な法理を確立しました。

一方で、他の箇所については「通常の使用にともなって発生する自然的損耗をはるかに超える事実を認めるに足りる証拠はない」として、賃貸人の負担とする厳格な判断を示しています。

結果として、賃借人の負担は21万2940円の修繕費用と2万円の清掃費用の合計23万2940円とされ、敷金を超える追加負担が発生しました。

判例から学ぶポイント

この判例は、部分的損耗における全面修繕の負担について重要な判断基準を示しました。

六法全書を開いて調べている様子

施工上の必要性による全面修繕の考え方

  • 原因者負担の原則
    部分的損耗の原因が賃借人にある場合、施工上必要な全面修繕も賃借人負担
  • 美観統一の必要性
    「木に竹を継ぐような結果」を避けるための全面施工は合理的
  • 個別判断の重要性
    各箇所の損耗原因を厳格に区別して判断する必要性

実務上最も重要な教訓は、部分的な損耗であっても、その原因が賃借人の責任にある場合は、施工上の必要から生じる全面修繕費用も負担することになるという点です。

また、証拠による立証の重要性も明確になりました。賃貸人側が「通常使用を超える」と主張しても、それを裏付ける十分な証拠がなければ賃借人負担とはなりません。

賃貸借契約書が入ったクリアファイル

清掃義務に関する重要な基準

  • 退去時の清掃義務は賃借人の基本的責務
  • 清掃不十分による追加費用は賃借人負担
  • 専門的清掃との区別が重要

清掃義務についても明確な基準が示され、退去時の基本的な清掃を怠った場合の費用負担が確立されました。

この判例は、その後の類似事例における判断の基礎となり、部分損耗と全面修繕の関係性について重要な指針を提供しています。

賃貸借契約における実践的対策

賃貸借契約において、部分的損耗が全面修繕につながるリスクを理解し、適切な対策を講じることが重要です。

賃貸借契約書にサインをさせられる賃借人の様子

契約締結時の確認事項

  • 部分修繕と全面修繕の基準を明文化
  • 施工上の必要性による追加負担の範囲を確認
  • 清掃義務の具体的内容を明記

借主の皆様にアドバイスしたいのは、まず賃貸借契約書で「部分損耗による全面修繕」に関する条項を確認することです。

この判例により、たとえ小さな損傷でも、施工上全面修繕が必要となれば賃借人負担となる可能性があることを理解しておく必要があります。

入居時には室内の状況を詳細に写真記録し、特にクロスや床材の既存の傷や汚れについては、立会い確認書に明記してもらうことが重要です。

居住中は、家具の移動時の壁面保護や、結露対策などによる適切な維持管理を心がけ、小さな損傷も早期に発見・対処することをお勧めします。

退去時には、基本的な清掃を十分に行い、可能であれば専門業者による清掃も検討することで、追加費用の発生を防ぐことができます。

借主の権利を守るため、契約条項の理解と予防的対策の実施が不可欠です。

まとめ

春日井簡易裁判所の本判決は、賃貸住宅における部分的損耗と全面修繕の関係について重要な法的基準を確立しました。

「部分的な損耗であっても、その原因が賃借人にある場合は施工上必要な全面修繕費用も賃借人負担となる」との判断は、実務に大きな影響を与えています。

同時に、損耗の原因については厳格な立証が必要であり、証拠が不十分な場合は賃貸人負担となることも明確化されました。

また、退去時の基本的清掃義務についても重要な基準が示され、賃借人の注意義務の範囲が具体化されています。

この判例を踏まえ、契約時の条項確認と居住中の適切な管理により、不要な紛争を予防し、公正な原状回復の実現が可能となります。

重要なポイント
  • 部分的損耗でも原因が賃借人にある場合、施工上必要な全面修繕費用は賃借人負担となる
  • 「木に竹を継ぐような結果」を避けるための全面施工は合理的な必要性として認められる
  • 損耗の原因については厳格な立証が必要で、証拠不十分なら賃貸人負担となる
  • 退去時の基本的清掃は賃借人の義務であり、不十分な場合は追加費用を負担する
  • 各箇所の損耗原因を個別に判断し、自然損耗と賃借人の責任を厳格に区別する必要がある

参照元:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)【判例11】

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1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。

正しい情報を掲載するよう注意しておりますが、誤った情報があればご指摘ください。

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