貸主から退去費用の内容証明郵便が届いても無視して問題ない?知っておくべき対応と注意点

賃貸物件を退去した後、思わぬ高額の請求が内容証明郵便で届くことがあります。
「クロスの張替えで10万円」「ハウスクリーニング費用が8万円」など、予想外の金額に驚いた経験はありませんか?
そんなとき、「この請求は本当に払わなければならないのか」「無視してもいいのではないか」と考える方も多いでしょう。
しかし、内容証明郵便を安易に無視することは、さらなるトラブルを招く可能性があります。
この記事では、内容証明郵便の法的な意味や適切な対応方法、無視することのリスクについて解説します。
また、実際のトラブル事例や解決策も紹介しますので、不当な請求から身を守るための知識を身につけましょう。
正しい知識と冷静な対応で、退去費用のトラブルを最小限に抑え、あなたの権利を守るための具体的な方法を学んでいきましょう。

監修者
サレジオ学院高等学校を昭和57年に卒業後、法曹界への志を抱き、中央大学法学部法律学科へと進学。同大学では法律の専門知識を着実に積み重ね、昭和62年に卒業。
その後、さまざまな社会経験を経て、より専門的な形で法務サービスを提供したいという思いから、平成28年に行政書士試験に挑戦し、合格。この資格取得を機に、平成29年4月、依頼者の皆様に寄り添った丁寧なサービスを提供すべく「綜合法務事務所君悦」を開業いたしました。
長年培った法律の知識と実務経験を活かし、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えできるよう、日々研鑽を重ねております。
日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号
内容証明郵便とは?退去費用請求で届いたときの基礎知識

内容証明郵便とは、いつ、誰が、誰に対して、どのような内容の文書を送ったかを公的に証明する郵便サービスです。
差出人が作成した文書の内容と、いつ相手に届いたかが日本郵便によって証明されます。
つまり、送った側が「確かにこの内容の文書を、この日に送りました」という証拠を残すための手段なのです。
賃貸の退去費用に関する内容証明郵便は、大家さんや不動産管理会社が「正式に請求しました」という事実を残すために送られてくることが多いです。
法的には、内容証明郵便自体に特別な法的効力はありません。
しかし、将来的に裁判になった場合の重要な証拠となり、送った側が「ちゃんと請求したのに支払ってもらえなかった」と主張するための準備でもあります。
また、退去費用に関する請求は、通常の経年劣化による修繕費用は貸主負担、入居者の故意・過失による損傷の修繕費用は借主負担という原則があります。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、壁紙の通常の変色や、日常的な使用による床の摩耗などは経年劣化として貸主負担とされています。
このガイドラインは法的拘束力はありませんが、裁判では重要な判断基準として参照されることが多いのです。

賃貸退去費用の内容証明が届いたらどう対応すべきか

内容証明郵便が届いたら、まず冷静になり、内容をしっかり確認しましょう。
請求の内訳や金額、支払期限、連絡先などの情報をメモしておくことが大切です。
そして、請求内容が妥当かどうかを判断しましょう。
退去時の立会い時に撮影した写真や、退去時に交わした書類などがあれば、それらと照らし合わせて確認します。
請求内容に納得できない場合は、まずは電話やメールで貸主側に連絡を取り、疑問点を伝えましょう。
その際、感情的にならず、具体的な根拠(ガイドラインの内容や写真など)を示しながら冷静に交渉することが重要です。
話し合いで解決できそうな場合は、できるだけ書面やメールでのやり取りを残し、後々のトラブル防止に役立てましょう。
また、請求金額が高額で納得できない場合は、消費生活センターや弁護士などの専門家に相談することも検討してください。
特に国民生活センターや各地の消費生活センターでは無料で相談に乗ってもらえる場合が多いです。
- 内容証明が届いたらすぐに内容を確認し、コピーを取っておく
- 請求内容と金額が妥当かどうか、退去時の証拠と照らし合わせる
- 納得できない場合は、根拠を示して貸主側に問い合わせる
- 交渉内容は必ず書面やメールで記録に残す
- 高額な請求には専門家(消費生活センターや弁護士)に相談する
内容証明を無視するとどうなる?重要な注意点と対策

内容証明郵便を単純に無視することは、問題解決にはなりません。
むしろ状況を悪化させる可能性が高いです。
内容証明を無視し続けると、最終的には訴訟を起こされるリスクがあります。
特に少額訴訟や支払督促といった簡易な手続きで請求されると、対応が遅れた場合、自動的に支払い義務が確定してしまうこともあります。
また、無視を続けると、次のステップとして裁判所からの「訴状」が届く可能性もあります。
訴状が届いた場合に応答しないと「欠席判決」として、相手の言い分がそのまま認められてしまうことがあります。
さらに、債権回収業者(いわゆる「サービサー」)に債権が譲渡され、より強硬な取り立てを受ける可能性もあるのです。
正しい対応としては、まず内容証明に対して「検討中」という返答をすることで時間を稼ぎ、その間に専門家に相談したり証拠を集めたりするのが得策です。
特に請求金額に納得できない場合は、「全額の請求には応じられないが、正当な金額であれば支払う意思がある」という姿勢を示すことで、交渉の余地を残せます。
- 内容証明を完全に無視すると訴訟リスクが高まる
- 少額訴訟や支払督促には速やかに対応する必要がある
- 訴状が届いて放置すると、欠席判決で敗訴する可能性がある
- まずは「検討中」と返答し、その間に対策を練る
- 部分的に支払う意思があることを示すと交渉がスムーズになる場合が多い
まとめ

賃貸退去時の内容証明郵便は、決して無視すべきものではありません。
内容証明郵便には特別な法的効力はないものの、無視し続けることで訴訟などの法的手続きに発展するリスクがあります。
重要なのは、請求内容を冷静に確認し、不当な請求には根拠を持って対応することです。
退去前から備えておくべきこととしては、入居時・退去時の写真をきちんと撮っておくこと、退去時の立会い確認は必ず行い、確認書にはサインする前に内容をよく確認することが挙げられます。
また、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の内容を知っておくことも、不当な請求から身を守るために役立ちます。
内容証明郵便が届いたら、まずは内容を確認し、納得できない点があれば貸主側に連絡して交渉しましょう。
交渉がうまくいかない場合は、消費生活センターや法テラス、弁護士などの専門家に相談することで、適切な解決策を見つけることができます。
内容証明郵便への対応は、あなたの権利を守るための重要なステップなのです。
