【重要事項説明書とは】賃貸借契約の注意点

賃貸トラブルを避けるためには、重要事項説明書と契約書の内容を事前にしっかりと確認することが最も効果的な対策です。
重要事項説明書には物件の基本情報や契約条件が詳細に記載されており、契約書には具体的な権利義務関係が明示されています。
本記事では、賃貸でトラブルが生じた借主の方に向けて、重要事項説明書のチェックポイントと契約書の適切な読み方の流れを具体的に解説いたします。
適切な確認により、入居後のトラブルを未然に防ぎ、安心した賃貸生活を送ることができるでしょう。

監修者
1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。
日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号
重要事項説明書と契約書の基本的なチェック方法とは?

- 重要事項説明書の法的位置づけと役割を理解する
- 契約書との違いと相互関係を把握する
- 説明を受ける際の基本的な確認手順を覚える
賃貸契約において重要事項説明書と契約書は、それぞれ異なる法的意義を持つ重要な書類です。
重要事項説明書は宅地建物取引業法に基づき、契約前に借主が十分な情報を得るための説明書類になります。
両書類の内容を正しく理解し、適切な手順で確認することがトラブル防止の第一歩となるでしょう。
重要事項説明書の法的位置づけと役割を理解する
重要事項説明書は宅地建物取引業法第35条に基づき、宅地建物取引士が契約締結前に説明することが義務付けられた法定書類です。
物件の基本情報、契約条件、法令上の制限、インフラ設備の状況など、賃貸借契約を判断するために必要な情報が網羅的に記載されています。
説明は対面で行われることが原則で、借主が十分に理解できるまで質問や確認を行う権利があります。
重要事項説明書の内容に虚偽や重大な不備があった場合、契約の取り消しや損害賠償を請求することが可能です。
説明を受ける際は録音や詳細なメモを取り、後日確認できるよう記録を残すことをおすすめします。
契約書との違いと相互関係を把握する
重要事項説明書は「契約前の情報提供」が目的であるのに対し、賃貸借契約書は「当事者間の権利義務を定める」ことが主たる目的になります。
重要事項説明書に記載された内容と契約書の条項に相違がある場合、一般的には契約書の内容が優先されることになります。
ただし、重要事項説明書で説明された内容と契約書の条項が著しく異なる場合は、説明義務違反として不動産業者の責任を問える可能性があります。
両書類の内容を照合し、矛盾や不明な点があれば契約前に必ず確認と修正を求めてください。
特に家賃、敷金、礼金、更新料、原状回復の範囲などの金銭に関わる条項は、両書類で一致していることを確認しましょう。
説明を受ける際の基本的な確認手順を覚える
重要事項説明を受ける際は、事前に物件の見学時に気になった点をリストアップし、具体的な質問を準備してください。
説明中は宅地建物取引士証の提示を求め、説明者が適切な資格を持っていることを確認することが法的に認められています。
各項目の説明を受ける際は、専門用語の意味や曖昧な表現について積極的に質問し、納得できるまで説明を求めましょう。
説明内容で理解できない部分があれば、その場で即座に確認し、後日のトラブルを防ぐことが重要です。
説明終了後は重要事項説明書の内容を再度確認し、署名・押印前に十分な検討時間を取ることをおすすめします。

重要事項説明は契約判断の基礎となる重要な手続きです。分からないことがあれば遠慮せずに質問し、納得できるまで説明を求めてください。急かされても慌てずに、十分な検討時間を確保することが大切です。
重要事項説明書で確認すべき具体的なポイントとは?


- 物件の基本情報と設備の詳細な確認方法
- 契約条件と費用負担の明確な把握
- 法令制限と近隣環境の重要な確認事項
重要事項説明書には多岐にわたる項目が記載されており、特にトラブルになりやすい部分を重点的に確認することが必要です。
物件の基本的な情報から契約条件、法的制限まで、段階的にチェックポイントを把握しておきましょう。
見落としがちな項目についても事前に知識を得ることで、適切な判断ができるようになります。
物件の基本情報と設備の詳細な確認方法
物件の所在地、構造、建築年、専有面積については、登記簿謄本の内容と一致しているかを確認してください。
水道、電気、ガス等のライフラインの設備状況と、各設備の最後の点検日や交換時期も重要な確認事項になります。
エアコン、給湯器、洗濯機置場などの付帯設備については、故障時の修繕責任が貸主と借主のどちらにあるかを明確にしてください。
インターネット設備の有無と利用可能な回線種別、通信速度についても、テレワークや在宅ワークを予定している場合は特に重要な確認項目です。
駐車場や駐輪場の利用条件、追加費用、空き状況についても詳細に確認し、必要に応じて契約書に明記してもらいましょう。
契約条件と費用負担の明確な把握
項目 | 確認ポイント | 注意事項 |
---|---|---|
敷金・礼金 | 金額と返還条件 | 原状回復費用の負担範囲 |
月額家賃 | 支払日と遅延損害金 | 更新時の家賃改定条件 |
共益費・管理費 | 含まれるサービス内容 | 将来的な変更の可能性 |
更新料 | 金額と支払時期 | 更新拒絶の条件 |
家賃の支払方法(銀行振込、口座振替など)と支払期日、遅延した場合の損害金の利率を必ず確認してください。
敷金の返還時期と返還方法、原状回復費用として差し引かれる可能性のある項目について詳細な説明を求めましょう。
契約期間と更新条件、更新料の有無と金額については、長期居住を予定している場合は特に注意深く確認することが必要です。
火災保険や家財保険の加入義務と保険料の負担者、保険金額の設定についても重要な確認事項になります。
法令制限と近隣環境の重要な確認事項
建築基準法や都市計画法などの法令による制限がある場合、将来的な建て替えや増改築の可能性について確認してください。
用途地域の指定により、近隣に建設される可能性のある建物の種類や高さ制限について把握しておくことが重要です。
近隣の商業施設、教育施設、医療機関へのアクセスと、将来的な都市計画による変更の可能性についても確認しましょう。
騒音や振動の状況、特に幹線道路や鉄道からの影響については、実際の時間帯での現地確認と合わせて説明を求めてください。
災害リスク(洪水、土砂崩れ、地震等)についてのハザードマップ上の位置と、避難場所までの経路も重要な確認事項です。



重要事項説明書の確認では、現在の状況だけでなく将来的な変更可能性についても質問してください。特に費用負担や近隣環境の変化は、長期居住における重要な判断材料になります。
契約書の読み方と注意すべき条項の確認方法


- 契約当事者と物件特定条項の正確性確認
- 賃料と諸費用に関する詳細条項の把握
- 禁止事項と解約条件の重要な確認方法
賃貸借契約書は当事者間の権利義務を具体的に定めた法的拘束力のある文書です。
契約書の各条項を丁寧に読み込み、特にトラブルの原因となりやすい項目については詳細に確認することが必要になります。
専門的な法律用語や曖昧な表現についても、納得できるまで説明を求めることが重要でしょう。
契約当事者と物件特定条項の正確性確認
契約書冒頭の貸主・借主の氏名、住所、連絡先が正確に記載されているかを入念に確認してください。
貸主が法人の場合は、代表者名と法人の正式名称、本店所在地が登記簿謄本の内容と一致していることを確認しましょう。
物件の所在地、建物名、部屋番号、専有面積については、重要事項説明書と登記簿謄本の記載内容との照合が必要です。
契約期間の開始日と終了日、更新の可否と更新方法について、借主の権利と義務が明確に規定されているかを確認してください。
連帯保証人の設定がある場合は、保証人の氏名、住所、保証範囲と保証期間についても詳細に確認する必要があります。
賃料と諸費用に関する詳細条項の把握
月額賃料の金額、支払期日、支払方法、遅延損害金の利率について詳細に確認してください。賃料改定の条件と手続きについても把握することが重要です。
敷金の預託額と返還条件、礼金の位置づけと返還の有無を明確にしてください。原状回復費用として差し引かれる範囲についても詳細な確認が必要です。
共益費や管理費に含まれるサービス内容と、将来的な金額変更の可能性について確認してください。清掃、維持管理の範囲も重要な確認事項です。
更新料の有無と金額、支払時期について、地域の慣習と法的な妥当性を考慮して確認してください。
火災保険料、鍵交換費用、クリーニング費用などの初期費用について、借主負担の根拠と妥当性を慎重に検討することが必要です。
退去時の原状回復費用の負担区分については、国土交通省のガイドラインとの整合性を確認することをおすすめします。
禁止事項と解約条件の重要な確認方法
ペット飼育、楽器演奏、友人の宿泊など、日常生活に関わる禁止事項について具体的な内容と違反時の措置を確認してください。
転貸(又貸し)の禁止条項と例外規定、家族構成の変更時の手続きについても重要な確認事項になります。
借主からの解約条件については、解約予告期間、解約手続きの方法、違約金の有無と金額を詳細に確認しましょう。
貸主からの解約や契約解除の条件について、借主の権利保護の観点から適切な規定になっているかを慎重に検討してください。
契約違反時の措置と手続き、修繕義務の範囲と費用負担についても、借主の立場から不利な条項がないかを確認することが重要です。



契約書の条項で不明な点や疑問があれば、署名前に必ず確認してください。特に禁止事項や解約条件は、入居後の生活に大きく影響するため、具体的な事例を示して説明を求めることが大切です。
契約書確認後に注意すべきポイント


- 契約書類の適切な保管と記録の維持
- 入居時の現状確認と記録の重要性
- 契約内容の変更時の正しい手続き方法
契約書に署名・押印した後も、適切な管理と継続的な注意が必要になります。
契約書類の保管から入居後の手続きまで、段階的に注意すべきポイントを把握しておきましょう。
将来的なトラブル防止のために、記録の維持と適切な対応方法を理解することが重要です。
契約書類の適切な保管と記録の維持
賃貸借契約書、重要事項説明書、その他の関連書類はすべて原本とコピーを作成し、別々の場所に保管してください。
契約期間中のやり取り(修繕依頼、家賃変更の通知等)は、日付と内容を記録し、書面による確認を心がけましょう。
デジタル化による保管も効果的で、スキャンやデジタルカメラによる記録を複数の媒体に保存することをおすすめします。
家賃の支払い記録、修繕履歴、近隣トラブルの対応記録など、賃貸借関係に関わるすべての記録を時系列で整理してください。
契約更新時や退去時には、保管している記録が重要な証拠資料となるため、定期的な整理と確認が必要です。
入居時の現状確認と記録の重要性
入居時には室内の状況を詳細に写真撮影し、傷や汚れ、設備の不具合について書面で記録を残してください。
設備機器の動作確認を行い、正常に動作しない部分があれば速やかに管理会社や貸主に報告しましょう。
立会いを行う場合は、確認事項について相手方と共同で記録を作成し、双方が署名・押印した書面を保管してください。
入居後1週間以内に発見した不具合については、速やかに書面で報告し、対応を求めることが重要です。
近隣の騒音状況や共用部分の使用状況についても、初期の段階で確認し、問題がある場合は記録に残しておきましょう。
契約内容の変更時の正しい手続き方法
家族構成の変更、同居人の追加、ペット飼育の開始など、契約内容に関わる変更がある場合は事前に書面で申請してください。
貸主や管理会社からの承諾を得る際は、口約束ではなく書面による確認を必ず取ることが重要になります。
家賃や共益費の変更については、変更理由と法的根拠について説明を求め、納得できない場合は専門家への相談を検討しましょう。
契約期間の延長や更新については、更新料の妥当性と更新条件の変更内容を慎重に確認することが必要です。
変更に伴う書面は契約書と同等の重要性を持つため、適切な保管と記録の維持を継続してください。



入居後も契約書は生きた文書として機能します。日常の記録維持と適切な手続きにより、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。特に現状確認は退去時の原状回復で重要な証拠となります。
問題を専門家に相談するメリット


- 法的根拠に基づいた適切な契約内容の判断
- 複雑な契約条項の解釈と交渉支援
- トラブル予防と早期解決のための専門的助言
賃貸契約の内容確認や契約後のトラブル対応において、専門家の助言は非常に有効です。
法的な判断を要する事項や複雑な契約条項については、早期の専門家相談により適切な対応が可能になります。
問題の予防から解決まで、専門家のサポートを活用することで安心した賃貸生活を送ることができるでしょう。
法的根拠に基づいた適切な契約内容の判断
行政書士や弁護士などの専門家は、賃貸借契約の条項が借地借家法などの関連法令に適合しているかを正確に判断できます。
借主に不利な条項や法的な有効性に疑問のある条項について、法的根拠に基づいた助言を受けることが可能です。
敷金・礼金の妥当性、原状回復費用の負担範囲、更新料の法的根拠についても専門的な見解を得ることができます。
特約条項の有効性や消費者契約法に基づく条項の無効性について、専門家の判断により適切な対応を図ることができます。
契約前の相談により、不適切な条項の修正や削除を求めることで、より安全な契約締結が可能になります。
複雑な契約条項の解釈と交渉支援
専門用語が多用された契約書や重要事項説明書の内容について、分かりやすい言葉での説明を受けることができます。
曖昧な表現や解釈の余地がある条項について、借主の立場から最も有利な解釈を導き出すサポートを得られます。
契約条件の交渉において、法的な根拠を示しながら貸主や不動産業者との話し合いを進めることが可能です。
行政書士は書面作成の専門家として、契約条項の修正案作成や交渉書面の準備をサポートすることができます。
複雑な権利関係や義務関係についても、専門家の助言により適切な理解と判断を行うことができるでしょう。
トラブル予防と早期解決のための専門的助言
専門家 | 対応範囲 | 費用目安 |
---|---|---|
弁護士 | 法的紛争全般・訴訟代理 | 相談料1万円〜 |
行政書士 | 書類作成・相談業務 | 相談料5千円〜 |
消費生活センター | 消費者トラブル全般相談 | 無料 |
専門家の助言により、契約締結前の段階でトラブルの原因となりやすい問題を事前に発見し、対策を講じることができます。
入居後に生じた問題について、法的手続きを含めた解決方法の選択肢と手順について具体的な助言を受けることが可能です。
敷金返還、原状回復、近隣トラブルなど、賃貸に関する各種問題について、専門的な見地から最適な解決策を提案してもらえます。
初回相談は比較的低料金で対応している専門家が多いため、早期の相談により効果的な問題解決を図ることができるでしょう。



賃貸契約の確認では、専門家の客観的な判断が非常に有効です。契約前の相談により、将来のトラブルを大幅に減らすことができます。早期相談により、より安全で有利な契約締結を実現してください。
まとめ


重要事項説明書と契約書の適切な確認は、賃貸トラブルを防ぐための最も効果的な対策です。
重要事項説明書では物件情報と契約条件を詳細に確認し、契約書では当事者の権利義務関係を正確に把握することが重要になります。
契約後も適切な記録維持と書面による確認を継続し、変更が生じた場合は正しい手続きを踏むことが必要でしょう。
複雑な契約条項や法的判断を要する事項については、専門家への早期相談により安全で有利な契約関係を築くことができます。
- 重要事項説明書と契約書の法的位置づけと相互関係を理解する
- 物件情報・契約条件・費用負担を詳細に確認する
- 禁止事項と解約条件は具体的な事例で確認する
- 入居時の現状確認と継続的な記録維持が重要
- 専門家への早期相談によりトラブル予防と安全な契約を実現