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国土交通省が発行している原状回復のガイドラインに基づき、適正な負担割合と客観的な退去費用の相場情報を提供しています。

特約に明記されていない費用は賃借人の負担対象外となるのか?

原状回復をめぐるトラブルとガイドラインの冊子

賃貸借契約における原状回復(元の状態に戻すこと)費用の負担は、契約書の特約条項が重要な判断基準となります。

しかし、賃貸人が特約に記載されていない費用まで賃借人に請求するケースが後を絶ちません。

今回ご紹介する仙台簡易裁判所平成12年3月2日判決は、この問題に明確な答えを示した重要な判例です。

この事例では、賃貸人がフロア張替え費用やクリーニング費用を含む高額な原状回復費用を請求したものの、裁判所は「特約条項に規定のない費用負担は認められない」と判断しました。

本記事では、特約の明文化の重要性と、通常損耗(普通に使っていてできる傷み)に関する賃借人負担の要件について、この判例を通じて詳しく解説いたします。


行政書士 松村 元
監修者

1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。

日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号


目次

概要

本事例は、約1年6ヶ月の賃貸借契約終了後の敷金(入居時に預ける保証金)返還を巡る争いです。

平成9年11月に締結された賃貸借契約は、平成11年5月に合意解除となり、賃借人は物件を明け渡しました。

マンションの外観
  • 契約期間
    平成9年11月〜平成11年5月(約1年6ヶ月)
  • 敷金
    16万5000円
  • 争点となった金額
    原状回復費用21万7857円(賃貸人請求額)
  • 裁判所の結論
    敷金5万9955円の返還

賃貸人は原状回復費用として総額21万7857円を請求し、敷金16万5000円との差額5万2857円の支払いを求めて提訴しました。

請求の内訳は、畳修理代、襖張替え代、フロア張替え代、室内クリーニング代(清掃にかかる費用)、そして水道未払費用でした。

この事例の特徴は、請求額が敷金を上回る高額なものであったことと、契約書の特約条項に明記されていない費用が多数含まれていたことです。

比較的短期間の居住にも関わらず高額な原状回復費用が請求された典型的なトラブル事例となりました。

契約内容と特約の詳細

本件契約書には、賃借人の費用負担に関する特約条項が設けられていましたが、その範囲は限定的でした。

退去立ち合いを終えて空っぽになった室内の様子
  • 契約書に明記された費用負担項目
    • 畳修理代(契約書に明記あり)
    • 襖張替え代(契約書に明記あり)
    • 水道未払費用(債務として当然)
  • 契約書に明記されていない費用
    • フロア張替え代:7万6062円
    • 室内クリーニング代:3万6750円

敷金として16万5000円が差し入れられており、当時としては標準的な設定でした。

重要なポイントは、契約書の費用負担特約条項に「フロアの張替え及びクリーニングの費用負担の規定はない」ことが後に裁判所によって確認されたことです。

この事実は、特約条項の明文化がいかに重要であるかを示しています。

賃貸人は、明文の規定がない費用についても慣行や常識を理由に賃借人に負担を求めましたが、法的根拠としては不十分でした。

契約書の特約条項は、賃借人の負担範囲を明確に限定する機能を果たしており、記載のない費用は原則として賃貸人負担となることが確認されました。

賃貸人・賃借人の主張のポイント

賃貸人側は、物件の現状を根拠として包括的な原状回復費用の負担を求めました。

争点賃貸人側の主張賃借人側の主張
費用負担の根拠原状回復は賃借人の当然の義務であり、実際に要した費用を負担すべき特約に規定のない費用は負担義務なし
フロア張替え使用により損耗が生じており、張替えが必要通常使用の範囲内であり、特約にも明記されていない
クリーニング費用次の入居者のために必要な当然の費用契約書に記載がなく、説明も受けていない
損耗の程度通常使用を超える損耗が認められる正常な使用であり、善管注意義務を履行した

賃貸人の主張は、畳修理、襖張替え、フロア張替え、室内クリーニング、水道未払費用の5項目すべてについて賃借人負担を求めるものでした。

特に、フロア張替えとクリーニング費用については、賃貸借契約では一般的な費用であり、賃借人が負担すべきだと主張しました。

一方、賃借人側は特約条項に明記されていない費用の負担を拒否し、物件の使用は正常かつ善管注意義務(注意深く大切に扱う義務)を果たしたものであると反論しました。

また、通常の使用によって生ずる損耗・汚損を超えるものではないとして、特約に基づかない費用負担は不当であると主張しました。

裁判所の判断と法的根拠

裁判所は、特約条項の明文化の重要性と通常損耗に関する賃借人負担の要件について明確な判断を示しました。

判断項目裁判所の認定結論
特約条項の範囲費用負担特約条項には、フロアの張替え及びクリーニングの費用負担の規定はない明記されていない費用は賃借人負担の対象外
通常損耗の負担要件賃借人が義務を認識し又は認識し得べくして義務の負担の意思表示をしたことが必要単なる慣行では負担義務は発生しない
使用状況の認定通常の使用方法によらず生じさせた損耗、汚損があったと認めるに足りる証拠はない賃借人の責任による特別損耗は認められない

最も重要な判断は、「賃貸物件の通常の使用による損耗、汚損を賃借人の負担とすることは、法律上、社会通念上当然発生する義務とは趣を異にする新たな義務を負担させる」という法理の確立です。

この新たな義務を課すためには、「特に、賃借人が義務を認識し又は認識し得べくして義務の負担の意思表示をしたことが必要」との厳格な要件が示されました。

具体的な費用負担については、契約書に明記された畳修理代と襖張替え代、そして水道未払費用のみを賃借人負担とし、特約に記載のないフロア張替え費用とクリーニング費用は賃貸人負担と判断しました。

最終的に賃借人Yの主張をほぼ全面的に認め、敷金から正当な費用のみを控除した残額の返還を命じました。

判例から学ぶポイント

この判例は、賃貸借契約における費用負担の明確化の重要性を示した代表的な事例です。

六法全書を開いて調べている様子

特約条項に関する重要な原則

  • 明文化の必要性
    特約に明記されていない費用は原則として賃借人負担とならない
  • 意思表示の要件
    通常損耗の負担には賃借人の明確な認識と意思表示が必要
  • 証明責任
    特別損耗の存在は賃貸人が立証しなければならない

実務上最も重要な教訓は、契約書の特約条項に明記されていない費用について、慣行や一般常識を理由として賃借人に負担を求めることはできないという点です。

また、クリーニング費用のような「当然必要」と思われる費用でも、特約に記載がなければ賃借人負担とはならないことが確認されました。

賃貸借契約書が入ったクリアファイル

通常損耗負担の厳格要件

  • 単なる契約書記載では不十分
  • 賃借人の明確な認識が必要
  • 義務負担の意思表示が必要

この判例は、後の最高裁判例(平成17年12月16日判決)の理論的基礎となった重要な先例として位置づけられています。

特約の有効性について、形式的な記載だけでなく、賃借人の実質的な理解と合意が必要であることを明確にした点で、実務に大きな影響を与えました。

賃貸借契約における実践的対策

賃貸借契約書では、原状回復に関する費用負担を明確に区分することが重要です。

賃貸借契約書にサインをさせられる賃借人の様子

契約締結時の重要確認事項

  • 費用負担項目が契約書に具体的に明記されているか
  • クリーニング費用の負担についての明確な規定があるか
  • 「通常損耗」と「特別損耗」の定義が明記されているか

借主として最も注意すべきは、契約書に記載されていない費用について口約束や「常識」として説明されても、法的拘束力はないということです。

特にクリーニング費用については、多くの賃貸人が「当然賃借人負担」として扱いますが、特約に明記されていなければ負担義務はありません

契約締結前には、原状回復に関する負担区分(誰が費用を払うかの分け方)表の有無を確認し、曖昧な表現がある場合は具体的な説明を求めることが重要です。

また、退去時の立会いでは、特約に記載された項目以外の費用請求に対しては、この判例を根拠として明確に反論することができます

借主の権利を守るため、契約書の詳細な確認と、不明な点についての事前質問を怠らないことをお勧めします。

まとめ

仙台簡易裁判所の本判決は、賃貸借契約における費用負担の明確化原則を確立した重要な判例です。

「特約条項に規定のない費用は賃借人負担の対象外」との判断は、契約書の明文化の重要性を明確に示しています。

また、通常損耗について賃借人に負担を求めるには、単なる契約書記載では不十分であり、賃借人の明確な認識と意思表示が必要であることが確認されました。

この判例により、賃貸人の一方的な費用転嫁を防ぎ、公正な賃貸借関係の構築に向けた法的基盤が整備されました。

実務においては、契約書の詳細な検討と明確な負担区分の設定により、退去時のトラブルを効果的に予防することが可能となります。

重要なポイント
  • 特約条項に明記されていない費用は原則として賃借人負担の対象外となる
  • 通常損耗の負担には賃借人の明確な認識と意思表示が必要である
  • クリーニング費用も特約に記載がなければ賃借人負担とはならない
  • 契約書の費用負担項目は具体的かつ明確に記載される必要がある
  • 慣行や常識を理由とした費用転嫁は法的根拠として不十分である

参照元:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)【判例13】

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1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。

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