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国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン ≫

未払賃料・原状回復費用(ドア、枠の塗装)が認められた事例

賃貸物件に住んでいると、契約内容や修繕費用の負担について気になることがあるかもしれません。今回は、実際に名古屋地方裁判所で行われた裁判をもとに、賃貸物件に関するルールや判例をわかりやすくまとめました。

この事例では、賃貸借契約に修繕特約が付されていても、通常の使用による損耗や消耗品の取替えは賃借人の負担とはならず、通常の使用を超える汚損についてのみ賃借人に修繕義務が生じるとの判断が下されています。

賃貸借契約における修繕特約の解釈と、賃借人の原状回復義務の限界を示す重要な事例となっていますので、給湯器の取換えや畳・襖・障子・クロス・カーペットの張替えによる退去費用でお困りの方はぜひ参考にしてください。


行政書士 松村 元
監修者

敷金の返還請求、立ち退きや退去費用に関するトラブルなど、様々な問題について、適切なアドバイスをしております。
裁判所での訴訟等については、業務の範囲外となるため、サポートに限りはありますが、借主の皆様が、より安心して住まいを利用できるよう、最善の解決策をご提案いたします。


目次

トラブル事例の概要

請求額の内訳/入居期間7年8ヵ月
入居期間7年8ヵ月
請求額の内訳
未払賃料
66万1,315円
給湯器の取替え
18万5,000円
畳・襖・障子・クロス・カーペットの張替え
50万4,200円
ドア枠の塗装工事
2万円
請求額の合計

1,370,515

関連記事:給湯器・シャワー水栓・洗濯機用防水パンなどの相場

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賃貸借契約からトラブル解決までの経緯

1980年8月31日

賃貸借契約

賃貸借契約

1980年8月31日、名古屋市内で賃貸マンションの契約が行われました。この契約は、賃貸人であるBさんと、賃借人Aさんの間で結ばれました。

賃貸借契約の概要
  • 賃料:月額12万円
  • 敷金:0円
  • 修繕特約:有
行政書士 松村 元

賃貸借契約書の修繕特約の内容には気を付けましょう。

1980年9月1日~1985年7月2日

賃借権の譲渡

契約後、Aさんの保証人であったYさんが、このマンションに住み始めました。その後、Aさんの同意を得て、Yさんが正式に賃借権を譲り受けました。

1985年7月2日

賃貸人の承継

1985年7月2日にBさんが亡くなり、賃貸人の地位は相続によりXさんに引き継がれました。

1988年4月30日

契約終了と明け渡し

1988年4月30日、契約が終了し、Yさんはマンションを明け渡しました。

1988年5月1日~1990年10月19日

退去費用の請求

未払賃料と費用請求

契約終了後、XさんはAさんとYさんに未払賃料66万1315円の支払いを求めました。また、給湯器の取替え工事費や畳、襖、クロスなどの退去費用として合計50万4200円を請求しました。

請求の概要
  • 未払賃料:66万1315円
  • 工事費:18万5000円
    • 給湯器の取替え
  • 修繕/原状回復費用:50万4200円
    • 畳・襖・障子・クロス・カーペットの張替え
    • ドア・枠の塗装工事
行政書士 松村 元

修繕費用と原状回復費用の違いは、修繕費用は、借主の故意や過失による損壊や故障を修理するための費用であり、原状回復費用は、借主の通常の使用による損耗や汚損を元の状態に戻すための費用の違いです。

1990年10月19日

名古屋地方裁判所判決

名古屋地方裁判所判決

裁判所の判決によると、温水器の取替え費用は賃借人が負担するものではないとされました。また、通常の使用による損耗や汚損については賠償義務がないと判断されました。

最終的に、賃借人Yさんが負担することになったのは、ドアなどのペンキ塗替え費用として2万円だけでした。

判決内容
  • 未払賃料:66万1315円
  • 工事費:0円
    • 給湯器の取替え
  • 修繕/原状回復費用:2万円
    • ドア・枠の塗装工事

まとめ:退去費用の内訳と合計

退去費用の内訳と合計/入居期間7年8ヵ月
入居期間7年8ヵ月
退去費用の内訳
未払賃料
66万1,315円
給湯器の取替え
長期間使用を前提とした設備であるため 0円
畳・襖・障子・クロス・カーペットの張替え
消耗品・耐用年数6年を満たしているため 0円
ドア枠の塗装工事
通常の使用を超える汚損のため 2万円
退去費用の合計

681,315

請求額の内訳
未払賃料
66万1,315円
給湯器の取替え
18万5,000円
畳・襖・障子・クロス・カーペットの張替え
50万4,200円
ドア枠の塗装工事
2万円
請求額の合計

1,370,515

修繕特約は短期間で消耗する箇所の修理を想定していますが、給湯器は長期間使用を前提とした設備です。

また、修繕特約は賃借人に一定範囲の小修繕を負担させる趣旨であり、賃貸人の修繕義務を免除することを定めているため、賃借人に修繕義務を積極的に課すには特別の事情が必要と言えるでしょう。

関連記事:給湯器・シャワー水栓・洗濯機用防水パンなどの相場

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参照元:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)

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