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[事例22]設備使用料等の合意が、公序良俗に反し無効とされた事例

この事例の概要

本件は、賃借人Xが賃貸人Yとの間で締結した賃貸借契約において、敷金の返還と「設備協力金」および「設備使用料」の不当利得返還を求めた事案です。裁判所は、修繕費負担特約の無効性と設備使用料の公序良俗違反を理由に、賃借人Xの請求を認めました。


行政書士 松村 元
監修者

サレジオ学院高等学校を昭和57年に卒業後、法曹界への志を抱き、中央大学法学部法律学科へと進学。同大学では法律の専門知識を着実に積み重ね、昭和62年に卒業。
その後、さまざまな社会経験を経て、より専門的な形で法務サービスを提供したいという思いから、平成28年に行政書士試験に挑戦し、合格。この資格取得を機に、平成29年4月、依頼者の皆様に寄り添った丁寧なサービスを提供すべく「綜合法務事務所君悦」を開業いたしました。
長年培った法律の知識と実務経験を活かし、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えできるよう、日々研鑽を重ねております。

日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号


目次

事例の背景

賃借人Xは、平成6年5月に賃貸人Yと月額賃料7万1000円の賃貸借契約を締結し、敷金として21万3000円を支払いました。

さらに、契約時に「設備協力金」として15万円を支払い、更新時にも「設備使用料」として各15万円(2回)を支払いました。

平成12年10月、賃借人Xが物件を明け渡した際、賃貸人Yは自然損耗による修繕費として27万9980円を請求し、敷金を差し引いた6万6980円の支払いを求めました。

これに対し、賃借人Xは修繕費負担特約の無効性と設備使用料の不当利得返還を主張して提訴しました。

  • 修繕費
  • 設備協力金

裁判所の判断

裁判所は以下の点を判断しました。

賃借人の負担項目

  • なし

賃貸人の負担項目

  • 修繕費全額
  • 設備協力金

裁判所は、修繕費負担特約が有効となるためには、①特約の必要性と合理性、②賃借人の認識、③意思表示が必要であると指摘し、本件では契約締結時に具体的な説明がなく合意が成立していないとして特約を無効と判断しました。

また、設備使用料については、公庫法が禁止する「権利金・謝金等の金品」に該当し、本件の使用料が公庫の指導金額の約倍と著しく高額であることから、公序良俗に反するとしました。

その結果、賃借人Xの敷金返還請求および設備使用料等の不当利得返還請求を認め、賃貸人Yに対して返還を命じました。

まとめ

結論
賃貸人からの請求金額:729,980円
裁判所の判決:0円
預け入れた保証金:663,000円
保証金の返還額:663,000円

本判決から得られる実務的な示唆は以下の通りです。

  • 賃借人に対する十分な説明と合意
  • 高額な使用料は公序良俗違反
  • 特約の有効性は、賃借人の理解と合意が鍵

賃貸借契約において、修繕費負担特約を有効とするためには、賃借人に対する十分な説明と合意が不可欠であり、特約の内容が客観的・合理的であることが求められます。

また、設備使用料等の徴収は、公庫法の規制に抵触しない範囲で行う必要があり、高額な使用料は公序良俗違反とされるリスクがあります。

特約の有効性は賃借人の理解と合意が鍵となるため、契約締結時に十分な説明を行い、公庫法の規制を遵守して賃借人に不当な負担を課さないよう注意することが重要です。

参照元:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)

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