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国土交通省が発行している原状回復のガイドラインに基づき、適正な負担割合と客観的な退去費用の相場情報を提供しています。

「新品同様」への原状回復義務を巡る合意の明確性と賃貸人勝訴の要件

原状回復をめぐるトラブルとガイドラインの冊子

賃貸借契約における原状回復(元の状態に戻すこと)義務の範囲は、貸主と借主の間で頻繁に争われる重要な問題です。

特に「原状回復」という曖昧な表現が、どこまでの修繕や交換を含むのかは、しばしば法的紛争の原因となります。

今回ご紹介する伏見簡易裁判所平成7年7月18日判決(消費者法ニュース25-33)は、「まっさらに近い状態」への回復義務という包括的な原状回復特約の有効性を検討した重要な判例です。

この判例では、賃貸人が全面改装を前提とした高額な原状回復費用を請求したものの、裁判所は賃借人の義務負担の意思表示が不明確であることを理由に特約の効力を否定しました。

本記事では、この判例の詳細な分析を通じて、原状回復特約の成立要件と、賃借人保護の観点から求められる説明義務について解説いたします。


行政書士 松村 元
監修者

1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。

日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号


目次

概要

本判例は、約4年間にわたる建物賃貸借契約の終了時における原状回復費用の負担を巡る争いです。

平成2年4月1日に締結された契約は、賃料月額6万6000円、敷金(入居時に預ける保証金)19万8000円で開始され、平成4年の更新時には賃料が5000円増額されました。

マンションの外観
  • 契約期間
    平成2年4月〜平成6年1月(約4年間)
  • 月額賃料
    6万6000円(更新後7万1000円)
  • 敷金額
    19万8000円
  • 争点となった金額
    原状回復費用48万2350円

契約終了時の明け渡し立会いにおいて、賃貸人側の立会人は個々の箇所を詳細に点検することなく、一方的に「全面的に改装する」と申し渡しました。

賃借人が具体的な修理箇所の指摘を求めたところ、後日送付された修理明細表は全面改装の内容となっており、畳、襖、クロス(壁紙)、クッションフロアの張替え並びに清掃費用として48万2350円が請求されました。

この高額請求に対し、賃借人は敷金全額の返還を求めて提訴し、原状回復特約の有効性が争点となりました。

契約内容と特約の詳細

本件賃貸借契約には、賃借人に重い負担を課す包括的な原状回復特約が設けられていました。

退去立ち合いを終えて空っぽになった室内の様子
  • 契約条件の概要
    • 契約期間:2年間(以後自動更新)
    • 当初賃料:月額6万6000円
    • 更新後賃料:月額7万1000円
    • 更新料:12万円(平成4年更新時)
  • 原状回復特約の内容
    • 「契約時点における原状すなわちまっさらに近い状態に回復すべき義務」
    • 賃貸人の指示に従った全面的な改装工事の実施
    • 具体的な負担範囲や金額の明示なし

特約の文言は「契約時点における原状すなわちまっさらに近い状態に回復すべき義務」という包括的なものでした。

この特約により、賃貸人は経年変化や自然損耗を含むあらゆる劣化について、賃借人に新品同様の状態への回復を求めることができると主張していました。

しかし、契約書には具体的な工事項目や費用の算定基準、経年変化の考慮に関する記載は一切なく、賃借人が実際にどの程度の負担を負うのかが不明確でした。

また、重要事項説明(契約前の重要な説明)においても、この特約が通常の原状回復義務を超えた重い負担を課すものであることの説明は行われていませんでした。

賃貸人・賃借人の主張のポイント

賃貸人側は契約書に明記された原状回復特約を根拠として、「まっさらに近い状態」への回復義務の履行を求めました。

争点賃貸人側の主張賃借人側の主張
原状回復特約の効力契約書に明記された特約により、賃借人は「まっさらに近い状態」への回復義務を負う包括的な特約は無効であり、通常損耗の回復義務はない
工事の必要性約4年の使用により全面改装が必要な状態通常の使用による自然的損耗の範囲内
説明義務契約書に明記されており説明は不要重要事項説明で特約の内容が適切に説明されていない
費用負担全面改装費用48万2350円の全額負担敷金以上の負担義務はない

賃貸人の主張によれば、賃借人は契約時の新品状態に戻す義務を負っており、約4年間の居住により生じた損耗はすべて賃借人の責任で回復すべきだとしていました。

一方、賃借人側は通常の使用による損耗について回復義務はなく、包括的な原状回復特約は賃借人に不利益を課す無効な条項であると反論しました。

また、契約締結時および更新時において、この特約が具体的にどのような負担を課すものかについて適切な説明がなされていなかったことも重要な争点でした。

重要事項説明書では「賃借人の故意過失(わざとまたは不注意でつけた傷)による損傷を復元する規定」として説明されており、自然損耗まで含む包括的な回復義務の説明はありませんでした。

裁判所の判断と法的根拠

裁判所は、賃貸借契約の本質的性格と賃借人保護の観点から明確な判断基準を示しました。

判断項目裁判所の認定結論
原状回復義務の本質建物賃貸借における自然の劣化・損耗は賃料によってカバーされるべき「まっさらに近い状態」への回復義務は伝統的賃貸借からは導かれない
特約成立の要件客観的理由の存在と賃借人の明確な認識・意思表示が必要本件では成立要件を満たしていない
説明義務の履行重要事項説明では故意過失による損傷復元と説明されていた包括的回復義務の説明はなされていない

まず裁判所は、「動産の賃貸借と同様、建物の賃貸借においても、賃貸物件の賃貸中の自然の劣化・損耗はその賃料によってカバーされるべきである」との基本原則を確認しました。

その上で、「賃借人が明け渡しに際して賠償義務とは別個に『まっさらに近い状態』に回復すべき義務を負うとすることは伝統的な賃貸借からは導かれない」と判断しました。

特約の有効性については、「義務ありとするためには、その必要があり、かつ、暴利的でないなど、客観的理由の存在が必要で、特に賃借人がこの義務について認識し、義務負担の意思表示をしたことが必要である」との厳格な要件を示しました。

本件では、重要事項説明書等により賃借人の故意過失による損傷復元の説明はあったものの、自然損耗を含む包括的回復義務の説明はなく、賃借人の明確な認識と意思表示がないとして特約を無効と判断し、敷金全額の返還を命じました。

判例から学ぶポイント

この判例は、包括的な原状回復特約の有効性判断において重要な基準を確立しました。

六法全書を開いて調べている様子

特約成立の厳格要件

  • 客観的合理性の必要性
    特約の必要性と暴利的でないことの立証が必要
  • 明確な認識の要求
    賃借人が特約の内容を具体的に理解していることが必要
  • 意思表示の明確性
    賃借人が義務負担について明確に同意していることが必要

最も重要な教訓は、単に契約書に記載されているだけでは包括的な原状回復特約は有効とならないという点です。

賃借人の権利保護のため、特約が通常の原状回復義務を超える重い負担を課すものである場合、その内容と影響について十分な説明と明確な同意が必要とされました。

賃貸借契約書が入ったクリアファイル

説明義務の重要性

  • 重要事項説明における特約内容の具体的説明義務
  • 経済的負担の程度に関する情報提供
  • 通常の原状回復義務との相違点の明確化

また、賃貸借契約における自然損耗は賃料でカバーされるべきという基本原則が確認され、これを覆すには相当の理由と手続きが必要であることが明確になりました。

この判例は、その後の消費者契約法の適用や国土交通省ガイドライン(国が示した原状回復の指針)の策定にも影響を与えた重要な先例として位置づけられています。

賃貸借契約における実践的対策

賃貸借契約書における原状回復条項は、借主にとって最も重要な確認ポイントの一つです。

賃貸借契約書にサインをさせられる賃借人の様子

契約締結時の重要チェックポイント

  • 「原状回復」の具体的定義の確認
  • 「まっさらな状態」等の曖昧な表現の排除
  • 通常損耗と特別損耗の明確な区分
  • 経年変化に関する減価償却の考慮

借主の皆様に特にお伝えしたいのは、「原状回復」という用語が契約書に記載されている場合の注意点です。

「まっさらに近い状態」「新品同様」「入居時の状態」などの表現がある契約書は要注意で、これらの条項は今回の判例により無効とされる可能性があります。

重要事項説明の際には、原状回復の具体的範囲について詳細な説明を求め、口頭での説明内容を記録に残すことをお勧めします。

また、契約書に疑問のある条項がある場合は、署名前に「この条項により私の負担となる具体的な工事内容と費用の概算を書面で示してください」と要請することが重要です。

貸主側が明確な説明を避ける場合や、包括的な条項の削除・修正に応じない場合は、その契約の締結を避けることも検討すべきです。

借主の正当な権利を守るため、契約内容の十分な理解と事前の慎重な検討が不可欠です。

まとめ

伏見簡易裁判所の本判決は、包括的な原状回復特約の有効性について厳格な基準を示した重要な判例です。

「まっさらに近い状態」への回復義務という曖昧で包括的な特約は、賃借人の明確な認識と意思表示がない限り無効であるとの判断が確立されました。

この判例により、賃貸人側には特約の客観的合理性の立証と、賃借人への十分な説明義務が課されることが明確になりました。

実務においては、原状回復条項の明確化と適切な説明により、契約時の誤解や退去時のトラブルを防止することが可能となります。

賃貸借契約における公正性の確保は、健全な住宅市場の発展と賃借人の権利保護の両面から極めて重要な課題です。

重要なポイント
  • 包括的な原状回復特約は賃借人の明確な認識と意思表示がない限り無効となる
  • 自然損耗は賃料でカバーされるべきであり、特約による負担転嫁には客観的理由が必要
  • 重要事項説明では特約の具体的内容と経済的影響の詳細な説明が必要
  • 「まっさらな状態」等の曖昧な表現を含む契約条項は特に注意が必要
  • 契約書への記載だけでは特約の有効性は担保されず、適切な説明手続きが不可欠

参照元:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)【判例6】

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1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。

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