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国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン ≫

契約時に原状回復義務(畳・襖・クロス・ハウスクリーニング)の説明がなかったため、敷金が全額返還された事例

賃貸物件を退去する際の原状回復費用について、どこまでが賃借人の負担となるのか悩まれる方も多いのではないでしょうか。今回は、1995年に伏見簡易裁判所で行われた裁判をもとに、賃貸物件の原状回復に関するルールや判例をわかりやすくまとめました。

この事例では、賃貸借契約に原状回復特約が付されていても、賃貸中の自然な劣化や損耗は賃料によってカバーされるべきであり、「まっさらに近い状態」への回復を賃借人に求めるには、契約時の明確な説明と賃借人の同意が必要との判断が示されています。

賃貸借契約における原状回復特約の解釈と、賃借人の義務の限界を示す重要な事例となっていますので、畳、襖、クロスなどの張替えによる高額な退去費用でお困りの方はぜひ参考にしてください。


行政書士 松村 元
監修者

敷金の返還請求、立ち退きや退去費用に関するトラブルなど、様々な問題について、適切なアドバイスをしております。
裁判所での訴訟等については、業務の範囲外となるため、サポートに限りはありますが、借主の皆様が、より安心して住まいを利用できるよう、最善の解決策をご提案いたします。


目次

トラブル事例の概要

請求額の内訳/入居期間3年10カ月
入居期間3年10カ月
請求額の内訳
畳・襖・クロス・クッションフロアの張替え/ハウスクリーニング
48万2,350円
請求額の合計

482,350

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賃貸借契約からトラブル解決までの経緯

1990年4月1日

賃貸借契約

賃貸借契約

1990年4月1日、賃借人Xは、賃貸人Yとの間で建物の賃貸借契約を締結しました。契約期間は2年間、賃料月額6万6,000円、敷金19万8,000円が設定され、賃借人Xは同日に敷金を支払いました。

賃貸借契約の概要
  • 賃料:月額6万6,000円
  • 敷金:19万8,000円
  • 原状回復特約:有
行政書士 松村 元

賃貸借契約書の原状回復特約の内容には気を付けましょう。

1992年4月1日

契約更新

契約更新時に賃料が5000円増額され、賃借人Xは更新料として12万円を同年6月1日に支払いました。

賃貸借契約の概要
  • 更新料:12万円
1994年1月23日

契約終了と明け渡し

賃借人Xは建物を退去し、賃貸人Yに明け渡しました。

1994年1月24日~1995年7月17日

退去費用の請求

退去費用の請求

明け渡し時、賃貸人Y側の立会人は個々の箇所を点検することなく、全面的な改装を申し渡しました。賃借人Xが具体的な修理箇所の指摘を求めたところ、後日送られてきた修理明細表は全面改装の内容でした。賃貸人Yは、賃借人Xの負担で畳、襖、クロス、クッションフロアの張替えおよび清掃費用として合計48万2350円の請求を行いました。

請求の概要
  • 修繕/原状回復費用:48万2350円
    • 畳・襖・クロス・クッションフロアの張替え
    • ハウスクリーニング
行政書士 松村 元

修繕費用と原状回復費用の違いは、修繕費用は、借主の故意や過失による損壊や故障を修理するための費用であり、原状回復費用は、借主の通常の使用による損耗や汚損を元の状態に戻すための費用の違いです。

1995年7月18日

伏見簡易裁判所判決

伏見簡易裁判所判決

裁判所は、建物の賃貸借において賃貸中の自然の劣化・損耗は賃料によってカバーされるべきであり、「まっさらに近い状態」への回復義務を賃借人に課すには客観的理由が必要であると判断しました。本件では契約締結時にその義務についての説明がなかったことから、賃貸人Yの請求を棄却し、賃借人Xへの敷金全額(19万8000円)の返還を命じました。

判決内容
  • 修繕/原状回復費用:0円

まとめ:退去費用の内訳と合計

退去費用の内訳と合計/入居期間3年10カ月
入居期間3年10カ月
退去費用の内訳
畳・襖・クロス・クッションフロアの張替え/ハウスクリーニング
自然損耗のため 0円
退去費用の合計

0

請求額の内訳
畳・襖・クロス・クッションフロアの張替え/ハウスクリーニング
48万2,350円
請求額の合計

482,350

賃貸物件の原状回復において、自然な劣化や損耗は賃料に含まれており、賃借人が負担する必要はありません。

特に「まっさらに近い状態」への回復を求める場合には、以下の2つの要件が必要とされます:

  1. その必要性や合理性などの客観的な理由が存在すること
  2. 賃借人がその義務を認識し、明確な同意をしていること

本件では、契約時に原状回復義務の具体的な説明がなかったことから、賃貸人による48万2350円の請求は認められず、賃借人に支払われた敷金19万8000円は全額返還されることとなりました。この判例は、賃貸借契約における賃借人の権利保護において重要な意義を持つものと言えるでしょう。

関連記事:クロス・畳床・カーペット・クッションフロアの相場

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参照元:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)

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