賃貸借契約書に明記されていた修繕費用(クロス・畳)が認められた事例
賃貸物件に住んでいると、退去時の修繕費用の負担について気になることがあるかもしれません。今回は、実際に仙台簡易裁判所で行われた裁判をもとに、賃貸物件の修繕費用に関するルールや判例をわかりやすくまとめました。
この事例では、賃貸借契約書に明記された修繕項目であっても、クロスの汚損が通常の使用による損耗や経年劣化によるものと認められた場合には、賃借人の負担とはならないとの判断が下されています。
賃貸借契約における修繕費用の負担範囲と、賃借人の原状回復義務の限界を示す重要な事例となっていますので、退去時のクロスの張替えや畳の表替えの修繕費用でお困りの方はぜひ参考にしてください。
敷金の返還請求、立ち退きや退去費用に関するトラブルなど、様々な問題について、適切なアドバイスをしております。
裁判所での訴訟等については、業務の範囲外となるため、サポートに限りはありますが、借主の皆様が、より安心して住まいを利用できるよう、最善の解決策をご提案いたします。
トラブル事例の概要
賃貸借契約からトラブル解決までの経緯
賃貸借契約
1990年3月、仙台市内でアパートの契約が行われました。この契約は、賃貸人Aさんと賃借人Yさんの間で結ばれ、月額賃料は4万8,000円でした。
- 賃料:月額4万8,000円
契約終了と明け渡し
1994年4月、賃貸人Aさんと賃借人Yさんの合意により契約が解除され、Yさんはアパートを明け渡しました。
退去費用の請求
契約終了後、賃貸人Aさんから建物の保守管理を委託されていた管理受託者Xさんは、和室・洋室・玄関台所のクロスの張替え、畳の表替え、諸経費として合計22万8,200円の支払いを求めました。
- 修繕/原状回復費用:22万8,200円
- クロスの張替え(和室・洋室・玄関・台所)
- 畳の表替え
修繕費用と原状回復費用の違いは、修繕費用は、借主の故意や過失による損壊や故障を修理するための費用であり、原状回復費用は、借主の通常の使用による損耗や汚損を元の状態に戻すための費用の違いです。
仙台簡易裁判所判決
裁判所の判決によると、契約書に明記されていた畳の表替え費用2万7000円のみが認められました。クロスの汚損については、賃借人の責任ではなく、湿気や日照、通風の状況、経年劣化によるものと判断され、張替え費用は賃貸人負担とされました。
- 修繕/原状回復費用:2万7,000円
- 畳の表替え
畳の表替えは、畳の表面(畳表)を新しいものに交換する作業です。
まとめ:退去費用の内訳と合計
本件では、管理会社から請求された修繕費用のうち、契約書に明記されていた畳の表替え費用のみが認められました。
クロスの張替え費用については、賃借人の故意・過失による汚損ではなく、建物の構造上の問題や時間の経過による自然な劣化が原因とされたため、賃貸人が負担すべきものと判断されました。この判決は、契約書に記載があっても、通常の使用による損耗については賃借人に修繕義務を課すことはできないという原則を示した重要な事例といえるでしょう。