【法テラスとは】弁護士に直接依頼した場合との違いをわかりやすく解説

賃貸物件を退去する際に原状回復費用でトラブルになった場合、法テラス(日本司法支援センター)を利用すると弁護士費用を大幅に抑えられる可能性があります。
ただし、法テラスの民事法律扶助制度には収入や資産に関する利用条件があり、利用審査に数週間から1ヶ月程度かかるため、緊急性の高いケースには向いていません。
国土交通省が発行している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」に基づいて、法テラスと弁護士への直接依頼のメリット・デメリットを詳しく解説いたします。

監修者
1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。
日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号
法テラスとは
法テラス(正式名称:日本司法支援センター)は、法的トラブルを抱えた方が経済的な理由で弁護士に相談できない状況を解決するために設立された国の機関です。
平成18年に総合法律支援法に基づいて設立され、全国各地に事務所を構えています。
法テラスの民事法律扶助制度の特徴
民事法律扶助制度は、経済的に余裕のない方でも法的サービスを受けられるよう、弁護士費用や裁判費用を立て替える制度になります。
賃貸物件の原状回復トラブルにおいても、この制度を活用することで負担を軽減できるでしょう。

- 弁護士費用の立て替え制度
- 分割での費用支払いが可能
- 無料での法律相談(1回30分程度)
- 全国各地に事務所を設置
- 国が設立した公的機関として信頼性が高い

法テラスは経済的に困窮している方のセーフティネットとして機能しており、原状回復費用の過大請求などでお困りの借主の方にとって心強い味方となります。
法テラスの利用条件
法テラスの民事法律扶助制度を利用するには、収入要件と資産要件の両方を満たす必要があります。
この条件は厳格に設定されており、事前に確認が必要でしょう。
収入要件の詳細基準
収入要件は世帯の人数によって異なります。
単身世帯の場合は月収18万2000円以下、2人世帯では25万1000円以下、3人世帯では27万2000円以下が基準となっています。
東京都や大阪府などの一部地域では、これらの基準額が約1.3倍に引き上げられます。
資産要件と審査のポイント
資産要件では、現金・預貯金・有価証券・不動産などの保有状況が審査されます。
単身世帯で180万円以下、2人世帯で250万円以下、3人世帯で270万円以下が基準です。
世帯人数 | 月収基準 | 資産基準 |
---|---|---|
1人 | 18万2000円以下 | 180万円以下 |
2人 | 25万1000円以下 | 250万円以下 |
3人 | 27万2000円以下 | 270万円以下 |



利用条件は比較的厳しく設定されており、一定の収入のある方は利用できない場合があります。まずは法テラスの公式サイトで簡易診断を受けてみることをおすすめします。
参照元:無料法律相談・弁護士等費用の立替 – お近くの法テラス(地方事務所一覧)
法テラスを利用する手順
法テラスの利用には一定の手順があり、申込みから実際の弁護士相談まで数週間から1ヶ月程度の時間を要します。
原状回復トラブルで急を要する場合は、この点を考慮して計画的に進める必要があります。
オンライン申込みの流れ
令和3年からはオンラインでの申込みが可能になり、利便性が向上しました。
法テラスの公式サイトから「民事法律扶助オンライン申込み」にアクセスし、必要事項を入力します。


- オンライン申込みフォームに必要事項を入力
- 収入証明書類などの必要書類を準備・提出
- 法テラスによる審査(2〜4週間程度)
- 審査通過後、弁護士との面談日程調整
- 弁護士相談・契約手続きの実施
必要書類の準備事項
申込みには給与明細書、源泉徴収票、預金通帳のコピーなどの収入・資産を証明する書類が必要になります。
また、賃貸借契約書や原状回復費用の請求書なども事前に準備しておくと、スムーズに手続きが進むでしょう。



オンライン申込みによって以前より手続きが簡素化されましたが、審査期間は変わりません。緊急性の高いトラブルの場合は、この点を考慮して早めに動くことが重要です。
参照元:無料法律相談・弁護士等費用の立替 – 無料法律相談・弁護士等費用の立替
弁護士に直接依頼するメリット
弁護士に直接依頼する最大のメリットは、迅速な対応と弁護士の自由な選択が可能な点にあります。
原状回復トラブルでは時間が重要な要素となることが多いため、状況によっては直接依頼が適している場合があります。
対応スピードの違い
弁護士への直接依頼では、即日または数日以内に相談が可能になります。
特に原状回復費用の支払期限が迫っている場合や、敷金返還の時効(2年間)が近づいている場合には、迅速な対応が必要でしょう。
弁護士選択の自由度
直接依頼では、不動産トラブルに特化した弁護士や、過去に類似事件で実績のある弁護士を自由に選択できます。
国土交通省のガイドラインに精通した弁護士を選ぶことで、より有利な解決につながる可能性があります。
分割払い対応の弁護士事務所
近年、多くの弁護士事務所が費用の分割払いに対応しており、経済的負担を軽減する選択肢が増えています。
法テラスの利用条件を満たさない場合でも、分割払いによって弁護士費用の支払いが可能になるでしょう。



弁護士への直接依頼は費用が高額になりがちですが、迅速な解決により敷金の早期返還や追加請求の回避ができれば、結果的に経済的メリットが大きくなる場合もあります。
法テラスと弁護士への直接依頼どちらがいい?
法テラスと弁護士への直接依頼のどちらを選ぶかは、経済状況、時間的余裕、トラブルの緊急性を総合的に判断して決定する必要があります。
国土交通省のガイドラインでも適切な法的支援の重要性が示されており、状況に応じた最適な選択が求められます。
法テラスが適している場合
月収や資産が法テラスの基準を満たしており、時間的余裕がある場合は法テラスの利用が有効でしょう。
特に単身で月収18万円以下、資産180万円以下の方は、費用負担を大幅に軽減できる可能性があります。
直接依頼が適している場合
原状回復費用の支払期限が迫っている、敷金返還の時効が近い、法テラスの利用条件を満たさない場合は直接依頼を検討してください。
また、特定の弁護士に依頼したい明確な理由がある場合も直接依頼が適しています。
判断基準 | 法テラス | 直接依頼 |
---|---|---|
費用負担 | 少ない(分割可能) | 高額(分割対応事務所あり) |
対応速度 | 遅い(1ヶ月程度) | 早い(即日〜数日) |
弁護士選択 | 制限あり | 自由 |
利用条件 | 収入・資産制限あり | 制限なし |
判断に迷った場合の対応策
どちらを選ぶか迷った場合は、まず弁護士事務所の無料相談を利用して状況を整理することをおすすめします。
多くの事務所が初回相談を無料で行っており、緊急性や費用対効果を客観的に判断できるでしょう。



原状回復トラブルでは、国土交通省のガイドラインを熟知した専門家の助言が重要です。まずは状況を整理し、最適な選択肢を検討してください。複雑な法的手続きが必要な場合は、認定司法書士や弁護士にご相談されることをお勧めします。
まとめ
賃貸物件の原状回復トラブルで法的支援が必要な場合、法テラスと弁護士への直接依頼にはそれぞれ明確な特徴とメリット・デメリットがあります。
法テラスは経済的負担を軽減できる反面、利用条件や審査期間の制約があります。
一方、弁護士への直接依頼は費用が高額になりがちですが、迅速な対応と弁護士選択の自由度が大きなメリットになります。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」に基づいた適切な解決を図るためには、自分の状況に最も適した選択肢を冷静に判断することが重要でしょう。
緊急性が高い場合は直接依頼を、時間的余裕があり経済的負担を抑えたい場合は法テラスを検討してください。
- 法テラスは費用を抑えられるが収入・資産要件と審査期間がある
- 弁護士への直接依頼は迅速対応と自由な弁護士選択が可能
- 緊急性の高いケースでは直接依頼が適している
- 分割払い対応の弁護士事務所も増加している
- 国土交通省ガイドラインに精通した専門家選択が重要

