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国土交通省が発行している原状回復のガイドラインに基づき、適正な負担割合と客観的な退去費用の相場情報を提供しています。

【判例34】経年劣化を考慮した原状回復費用算定の新基準で変わる敷金返還

原状回復をめぐるトラブルとガイドラインの冊子

賃貸借契約における原状回復費用の算定方法は、賃借人の公平な負担を実現するうえで極めて重要な課題です。

特に、特別損耗の修復工事において通常損耗部分も同時に修復される場合、賃借人がその全額を負担することの合理性が問われてきました。

今回ご紹介する大阪高等裁判所平成21年6月12日判決は、この重要な問題に対して明確な解決基準を示した画期的な判例です。

この事例では、賃借人が特別損耗の修復において通常損耗部分も含めて工事を行った場合の費用負担について、経年劣化を考慮した公正な算定方法が確立されました。

本記事では、この判例の詳細な分析を通じて、原状回復費用の適正な算定方法と、実務上の対策について解説いたします。


行政書士 松村 元
監修者

1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。

日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号


目次

原状回復ガイドライン【判例34】の概要

本事例は、賃貸住宅の退去時における敷金返還を巡る争いで、特に経年劣化の考慮方法が争点となりました。

賃借人Xが賃貸人Yから住宅を賃借し、契約解約後に敷金から任意の返還を受けた金額を除く残額28万3386円の返還を求めて提訴した事案です。

マンションの外観
  • 裁判所
    大阪高等裁判所(控訴審)
  • 判決日
    平成21年6月12日
  • 敷金額
    40万円
  • 返還額
    19万円

第一審の神戸地方裁判所尼崎支部が賃借人Xの請求を一部認容したため、賃貸人Yが控訴しました。

争点の核心は、クロス等の内装材について特別損耗の修復工事を行う際、技術上不可避的に通常損耗部分も同時に修復される場合の費用負担の在り方でした。

本件では、経年劣化による減価割合の算定方法と、賃借人の公平な負担範囲の確定が主要な争点となりました。

原状回復ガイドライン【判例34】の契約内容と特約の詳細

本件は、一般的な賃貸住宅における標準的な契約内容で争われた事案です。

退去立ち合いを終えて空っぽになった室内の様子
  • 契約の基本条件
    • 敷金として40万円を賃貸人に交付
    • 賃借人は7年10か月間住宅に居住
    • 契約解約後、賃貸人が敷金から一定額を控除して返還
  • 争点となった補修項目
    • クロス等の内装材の張替え工事
    • 特別損耗部分と通常損耗部分の区分
    • 経年劣化による減価償却の考慮

本件の特徴は、特別な原状回復特約ではなく、一般的な賃貸借契約における原状回復義務の解釈が争われた点にあります。

賃借人Xは約8年間の長期間にわたり住宅を使用しており、この期間中に生じた内装材の劣化について、通常損耗と特別損耗の区分が重要な争点となりました。

特に、クロスの耐用年数が6年とされる中で、7年10か月の使用期間における経年劣化の評価と、それに基づく費用負担の算定方法が問題となりました。

賃貸人は従来の考え方に基づく原状回復費用を主張し、賃借人は経年劣化を考慮した減額を求めるという対立構造でした。

賃貸人・賃借人の主張のポイント

本件では、原状回復費用の算定方法について根本的な考え方の相違が争われました。

争点賃貸人側の主張賃借人側の主張
経年劣化の考慮減価割合の基準が不明確で場当たり的判断になる経年劣化を適正に考慮すべき
補修工事の範囲実際に要した修復費用を賃借人が負担すべき通常損耗部分は賃借人負担の対象外
費用算定の方法現実の工事費用に基づく算定特別損耗部分のみの負担で十分

賃貸人側は、経年劣化を考慮した減価割合の算定について、「依拠すべき基準がなく場当たり的な判断になる」と主張し、現実に要した修復費用を基準とすべきだと論じました。

一方、賃借人側は、クロス等の内装材について特別損耗の修復工事を行う際、技術上通常損耗部分も同時に修復されるため、賃借人は特別損耗部分のみを負担すれば足りると主張しました。

特に、通常損耗部分について賃借人が重複して負担することの不合理性を指摘し、適正な減価償却の考慮を求めました。

この対立は、原状回復費用算定における公平性の確保という根本的な問題を提起するものでした。

裁判所の判断と法的根拠

大阪高等裁判所は、原状回復費用の公正な算定方法について明確な判断基準を示しました。

判断項目裁判所の認定結論
経年劣化の考慮原則通常損耗部分の修復費について賃貸人が利得することは相当ではない経年劣化を考慮して賃借人負担範囲を制限
有益費償還請求権の適用賃借人は民法608条2項により通常損耗相当額を請求できる契約終了時は特別損耗分のみの負担で足りる
減価割合の算定基準減価償却資産の耐用年数等に関する省令を基準とするクロス耐用年数6年で使用期間7年10か月なら90%減価

裁判所はまず、「クロスのように経年劣化が比較的早く進む内部部材については、特別損耗の修復のためその張替えを行うと、必然的に経年劣化などの通常損耗も修復してしまう結果となり、通常損耗部分の修復費について賃貸人が利得することになり相当ではない」との重要な判断を示しました。

次に、技術上の制約について、「賃貸借契約締結時の状態から通常損耗分を差し引いた状態までの補修にとどめることが現実的には困難ないし不可能」であることを認定しました。

そのうえで、民法608条2項の有益費償還請求権を根拠として、「契約終了時に賃借人自ら補修工事を実施しない時は、契約締結時の状態から通常損耗分を差し引いた状態まで補修すべき費用相当額を賃貸人に賠償すれば足りる」との新たな基準を確立しました。

さらに、減価割合の算定については、減価償却資産の耐用年数等に関する省令を基準とし、本件では通常損耗による減価割合を90%と認定しました。

原状回復ガイドライン【判例34】から学ぶポイント

この判例は、原状回復費用算定における公平性確保の重要な指針を提供しました。

六法全書を開いて調べている様子

経年劣化考慮の法的根拠

  • 通常損耗の重複負担禁止
    賃貸人が通常損耗部分で利得することは不当
  • 有益費償還請求権の活用
    民法608条2項により公正な負担分担を実現
  • 客観的基準の採用
    減価償却資産の耐用年数等に関する省令を基準とする

最も重要な教訓は、特別損耗の修復工事において技術上不可避的に通常損耗部分も修復される場合、賃借人は特別損耗分のみを負担すれば足りるという明確な基準が示されたことです。

また、経年劣化の算定について、従来の曖昧な基準ではなく、減価償却資産の耐用年数等に関する省令という客観的基準を採用したことで、予測可能性と公平性が向上しました。

賃貸借契約書が入ったクリアファイル

実務への重要な影響

  • 国土交通省ガイドラインの理論的基礎の確立
  • 長期賃借における経年劣化の適正評価
  • 原状回復費用算定の標準化促進

実務的には、この判例により「原状回復を巡るトラブルとガイドライン」の経年劣化考慮説に強固な法的根拠が与えられました

特に、耐用年数を超過した内装材については、賃借人の負担を大幅に軽減する効果があり、長期賃借における公正な費用負担の実現に貢献しています

賃貸借契約における実践的対策

賃貸借契約書において経年劣化の取扱いを明確に規定することが重要です。

賃貸借契約書にサインをさせられる賃借人の様子

契約締結時の確認事項

  • 減価償却の算定方法が明記されているか確認
  • 内装材の耐用年数の設定が適正か検証
  • 経年劣化考慮の具体的計算式を要求

借主の皆様には、まず契約書に経年劣化の考慮に関する条項があるかを確認していただきたいと思います。

特に、クロスの耐用年数が6年、畳や襖が3~5年程度とされていることを踏まえ、長期間の居住予定がある場合は、これらの基準が契約書に明記されているかをチェックしてください。

また、「原状回復を巡るトラブルとガイドライン」に準拠した負担区分表が添付されているかも重要な確認ポイントです。

契約書に経年劣化の考慮がない場合や、賃借人に不当に重い負担を課す条項がある場合は、この判例を根拠として交渉することが可能です。

退去時には、修復工事の見積もりについて、特別損耗部分と通常損耗部分の区分を明確にするよう求め、適正な減価償却の適用を主張することをお勧めします。

まとめ

大阪高等裁判所の本判決は、原状回復費用における経年劣化の考慮について決定的な判断基準を確立しました。

「契約終了時に賃借人は契約締結時の状態から通常損耗分を差し引いた状態まで補修すべき費用相当額を賃貸人に賠償すれば足りる」との判断は、賃借人の公正な負担実現に大きく貢献しています。

この判例により、国土交通省ガイドラインの経年劣化考慮説に強固な法的根拠が与えられ、実務の標準化が促進されました。

減価償却資産の耐用年数等に関する省令という客観的基準の採用により、原状回復費用算定の予測可能性と透明性が大幅に向上しています。

賃貸借契約においては、この判例の基準に基づく公正で明確な原状回復条項の設定が、健全な賃貸住宅市場の発展に不可欠です。

重要なポイント
  • 特別損耗の修復工事で通常損耗部分も修復される場合、賃借人は特別損耗分のみを負担すれば足りる
  • 経年劣化の算定は減価償却資産の耐用年数等に関する省令を基準とする客観的基準を採用
  • 通常損耗部分で賃貸人が利得することは不当であり、有益費償還請求権により調整される
  • 長期賃借では経年劣化の適正な考慮により賃借人負担が大幅に軽減される場合がある
  • 国土交通省ガイドラインの経年劣化考慮説に強固な法的根拠が与えられた

参照元:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)

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1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。

正しい情報を掲載するよう注意しておりますが、誤った情報があればご指摘ください。

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