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経年劣化で退去費用は減額される判例と計算方法

経年劣化で退去費用は減額される判例と計算方法

この記事には広告・プロモーションが含まれています。

退去時に管理会社から「クロスの落書きがあるので全額張替え費用を負担してください」と言われたら、入居年数に応じた経年劣化の減額を主張できることをご存じでしょうか。

本記事で紹介するのは、国土交通省のガイドラインに収録された経年劣化と原状回復費用のトラブル事例です(ガイドライン事例集2)。

この事例では、約57か月間入居した物件のクロスへの子供の落書きやカーペットの汚損を理由に、貸主が35万6482円の原状回復費用を請求しました。

裁判所は借主の過失による損傷を認めつつも、57か月分の経年劣化による減価を考慮し、敷金21万9092円の返還を命じる判断を下しました。

入居時に写真で記録しておく賃貸物件の室内の様子
貸主の請求額
527,572円(リフォーム費用)
通常損耗分 不認定(償却に含む)
経年劣化分 不認定(減価考慮)
過失損耗分 認定(特別損耗)
裁判所の認定額
40,950円
約92%の減額

ゲン
監修者

1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。

日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号


目次

東大阪簡裁が示した経年劣化の考慮と原状回復費用の算定基準

退去費用トラブルの解決に利用する裁判所の外観
  • 子供の落書きによるクロス損傷で貸主が35万円超の原状回復費用を請求した経緯
  • 裁判所は57か月の経年劣化を考慮し敷金21万円超の返還を命じた
  • クロスの耐用年数6年と残存価値の計算方法を把握しておくことが重要になる
賃貸物件の退去情報サイト - 敷金ドットコム
この段落のポイント

「子供がクロスに落書きしてしまったから、張替え費用を全額負担しなければならない」と不安に感じていませんか。

この東大阪簡裁の判決は、借主の過失による損傷であっても入居期間に応じた経年劣化の減価を適用すべきことを明確に示した重要な事例です。

子供の落書きによるクロス損傷で貸主が35万円超の原状回復費用を請求した経緯

退去時に確認が必要な建物賃貸借契約書

まず、この事例の背景として、借主は平成9年5月から月額賃料9万3000円で賃貸物件に入居し、敷金として27万9000円を預けていました。

約57か月後の平成14年2月に退去した際、貸主は壁クロスへの子供の落書きや破損、床カーペットの汚損を理由に35万6482円の原状回復費用を請求しました。

これに対し借主は、入居期間中の経年劣化を考慮すべきだと主張し、実質的な借主負担額はわずか3320円であると反論しました。

民法第621条は通常の使用による損耗と経年変化を原状回復義務の対象から除外しており、過失損傷であっても経年劣化分を差し引くべきかが最大の争点となりました。

ゲン

過失による損傷でも、入居年数に応じた経年劣化の減額が認められることを知っておきましょう。

民法第621条:賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に回復する義務を負う。

引用元:第三款 賃貸借の終了 | e-Govポータル

裁判所は57か月の経年劣化を考慮し敷金21万円超の返還を命じた

経年劣化によってひび割れた賃貸物件のクロス

次に、東大阪簡易裁判所が経年劣化の減価についてどのように判断したかを整理します。

裁判所は借主が自認する過失損傷(子供の落書き)と延滞賃料を精算した結果、貸主が請求する原状回復費用の大部分は経年変化および通常使用による減価の範囲内であると認定しました。

最終的に裁判所は敷金21万9092円の返還命令を出し、貸主の請求額35万6482円の大半を否定しました。

この判決は、借主に過失があるケースでも入居期間に応じた減価償却を正しく計算すれば、貸主の請求額を大幅に減額できることを実証した重要な先例です。

ゲン

経年劣化の減額を正しく計算すれば、過失があっても敷金の大部分が返還される可能性があります。

民法第622条の2第1項:賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。)を受け取っている場合において、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときは、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。

引用元:第二款 賃貸借の効力 | e-Govポータル

クロスの耐用年数6年と残存価値の計算方法を把握しておくことが重要になる

経年劣化の目安となる年数設備・部位
耐用年数6年の製品・消耗品クロス
カーペット
クッションフロア

エアコン
ガスコンロ
冷蔵庫
インターホン
照明
ゲン

クロス・カーペット・クッションフロア等の耐用年数は6年です。要は入居期間が6年以上であれば、原状回復費用は発生しない(0円)ということになります。

さらに、この判決で争点となったクロス(壁紙)には、国土交通省のガイドラインで耐用年数6年が定められています。

定額法による計算では、入居1年目の残存価値は約83%、3年目で約50%、この事例の57か月(約4年9か月)時点では残存価値は約20%まで低下します。

たとえばクロス張替え費用が10万円であっても、57か月入居後の借主負担額は残存価値約20%の約2万円にまで減額されます。

退去費用の精算書を受け取ったら、経年劣化の減額が正しく反映されているか必ず確認してください。

ゲン

入居年数ごとの残存価値を計算ツールで確認すれば、適正な負担額がわかります。

民法第606条第1項:賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。

引用元:第一款 総則 | e-Govポータル

この判決から学ぶ経年劣化の減額ルールと退去費用への対処法

退去費用・原状回復の問題解決に役立つ六法全書と弁護士バッジ
  • 経年劣化による減価を原状回復費用に反映させる法的根拠と計算の仕組み
  • ガイドラインと判例は経年劣化の数値化を求める方向で一致している
  • 退去費用が不当に高いと感じたときは段階的に交渉を進められる
賃貸物件の退去情報サイト - 敷金ドットコム
この段落のポイント

判決の要点を理解したうえで、実際に退去費用を請求されたときにどう活用すればよいか気になる方も多いでしょう。

ここでは、経年劣化の減価を原状回復費用に反映させる法的根拠と、不当な請求を受けたときの具体的な交渉手順を解説します。

経年劣化による減価を原状回復費用に反映させる法的根拠と計算の仕組み

退去費用の法的根拠を調べるために六法全書を開いている様子

まず、この判決が経年劣化の減価を原状回復費用に反映させた法的根拠を解説します。

国土交通省のガイドラインは、借主の過失による損傷であっても設備の耐用年数に応じた残存価値のみを借主が負担すべきと定めています。

たとえばクロスの耐用年数は6年であるため、この事例のように57か月入居した場合の残存価値は約20%となり、クロス張替え費用が10万円であれば借主の負担は約2万円にまで過失損傷でも経年劣化減額の対象になります。

この東大阪簡裁の判決もガイドラインの考え方に沿い、過失があっても入居年数に応じた減価を適用すべきとする立場を明確にしました。

ゲン

ガイドラインの考え方を正しく理解していれば、管理会社との交渉で大きな武器になります。

民法第400条:債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。

引用元:第一節 総則 | e-Govポータル

ガイドラインと判例は経年劣化の数値化を求める方向で一致している

国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン

加えて、この東大阪簡裁の判決だけでなく、他の裁判例でも経年劣化の数値化を重視する傾向が確認できます。

最高裁判所は平成17年12月16日の判決で、通常損耗の原状回復義務を借主に負わせるためには契約書への具体的な明記か口頭での明確な合意が必要と判示しており、経年劣化分を無視した請求は認められにくい状況です。

国土交通省のガイドラインも平成23年の再改訂で経過年数の考え方をより明確化し、設備ごとの耐用年数に基づく残存価値の定額法による算定基準を示しています。

管理会社から経年劣化を無視した請求を受けた場合は、ガイドラインと裁判例の両方を根拠にして反論できます。

ゲン

ガイドラインと判例の両方を根拠にすれば、交渉の説得力が格段に上がります。

民法第1条第2項:権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

引用元:第一章 通則 | e-Govポータル

退去費用が不当に高いと感じたときは段階的に交渉を進められる

退去立会いができない場合に弁護士に相談している様子

最後に、退去費用が不当に高いと感じたときの具体的な対処法を解説します。

まずは管理会社に「ガイドラインに基づく経年劣化の減額が反映されていない」旨を書面で伝え、精算書の各項目について耐用年数に応じた残存価値の再計算を求めることが第一歩です。

交渉で解決しない場合は、国民生活センターや消費者センター(消費者ホットライン188番)への無料相談や、60万円以下であれば簡易裁判所の少額訴訟制度の利用を検討しましょう。

既に支払ってしまった退去費用であっても、経年劣化の減額が未考慮であれば不当利得として返還を請求できます。

ゲン

段階的に交渉を進めれば、経年劣化の減額分を取り戻せるケースは少なくありません。

民法第703条:法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

引用元:第四章 不当利得 | e-Govポータル

よくある質問

経年劣化による減額は借主の過失があっても適用されますか

はい、適用されます。

国土交通省のガイドラインでは、借主の過失による損傷であっても設備の耐用年数に応じた残存価値のみを借主が負担すべきとされています。

この事例でも子供の落書きという過失を認めつつ、57か月の経年劣化を考慮して敷金の大部分が返還されました。

クロスの耐用年数6年を超えたら張替え費用は0円になりますか

ガイドラインの考え方では、クロスの耐用年数6年を経過すると残存価値は1円となるため、借主が負担すべき金額はほぼ0円になります。

ただし、故意に破損させた場合や特約で別途定められている場合は、耐用年数を超えていても費用を請求される可能性があります。

退去費用の精算書に耐用年数を超えた設備の費用が含まれている場合は、ガイドラインを根拠に減額を求めてください。

子供がクロスに落書きした場合の退去費用はいくらになりますか

費用は入居年数と損傷の範囲によって大きく変わります。

この事例では57か月入居のケースで、貸主の請求額35万円超に対し、裁判所が認めた借主の実質負担額はわずか数千円程度でした。

経年劣化による減額を正しく計算すれば、入居4年以上であればクロスの残存価値は30%以下となり、張替え費用の大幅な減額が期待できます。

経年劣化の減額を管理会社に認めてもらうにはどうすればよいですか

まずは国土交通省のガイドラインを根拠に「クロスの耐用年数は6年で、入居○年の残存価値は○%です」と具体的な計算結果を書面で管理会社に提示してください。

それでも認められない場合は、消費者センター(消費者ホットライン188番)への相談や少額訴訟の利用を検討しましょう。

この事例のように裁判所はガイドラインに沿った判断をする傾向が強いため、根拠を持って交渉すれば減額が認められる可能性は高いです。

まとめ

この判決は、過失時でも経年劣化による減額適用を明確に示した重要な先例です。

退去時に高額な原状回復費用を請求された場合は、まず「経年劣化による減額が正しく反映されているか」「耐用年数に基づく残存価値の計算が適正か」を確認することが重要です。

この記事のポイントを振り返ります。

この記事のポイント

管理会社から届いた精算書の金額に疑問を感じたら、まず入居年数と耐用年数から残存価値を計算してみましょう。

  • 敷金ドットコムは、情報提供を目的としたサイトです。行政書士が記事の監修および執筆を行っておりますが、根本的な問題やトラブルの解決を目的としたものではありません。トラブルの解決については、弁護士または認定司法書士にご相談ください。

ゲンのアバター ゲン 監修者

1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。

正しい情報を掲載するよう注意しておりますが、誤った情報があればご指摘ください。

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