
賃料3.12か月分の更新料特約は消費者契約法に違反しないとした事例【大阪高裁 平24.7.27判決】
賃貸借契約の更新のたびに支払う更新料について「この金額は高すぎるのでは」と疑問を感じたことはありませんか。
本記事で紹介するのは、大阪高等裁判所が平成24年7月27日に下した判決(RETIO 88号)です。
この裁判では、ワンルームマンションを4年間賃借していた借主が更新の際に支払った賃料3.12か月分の更新料について、消費者契約法10条に違反するとして返還を求めたことが争点となりました。
裁判所は更新料特約が消費者契約法10条に違反しないとして、借主の返還請求を棄却しました。

監修者
1982年にサレジオ学院高校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学し1987年に卒業。法曹界を志し、様々な社会経験を経た後、2016年に行政書士試験に合格。2017年4月に「綜合法務事務所君悦」を開業。法律知識と実務経験を活かし、国際業務を中心に寄り添ったサービスを提供している。
日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号
大阪高裁が示した更新料特約の有効性と消費者契約法の判断基準

- ワンルームマンションの賃借人が更新料の返還を求めた経緯
- 裁判所は更新料特約が消費者契約法10条に違反しないと判断した
- 耐用年数と残存価値の計算方法を把握しておくことが重要になる

「更新料が高すぎるから返してほしい」と考える方は少なくありません。
この大阪高裁の判決は、賃料の約3か月分の更新料特約が消費者契約法に違反しないとした重要な先例です。
ワンルームマンションの賃借人が更新料の返還を求めた経緯

まず、この裁判の背景を確認します。
賃貸人Yと賃借人Xは平成16年12月に建物賃貸借契約を締結し、Xはワンルームマンションに入居しました。
契約期間は平成17年4月1日から1年間で、賃料は月額4万7800円、共益費は月額5000円、更新料は1回あたり15万円と定められていました。
Xは平成17年、平成18年、平成19年の3回にわたり契約を更新し、合計45万円の更新料を支払いました。
平成20年11月にXが退去した後、Xは支払った更新料の返還を求めて大阪高裁(第一審は大阪簡裁)に提訴しました。
Xの主張は、更新料特約が消費者契約法10条に違反して無効であるため、支払った更新料は不当利得として返還されるべきだというものでした。
ゲン更新料は賃料の約3か月分にあたり、借主にとって大きな負担であったことがわかります。
民法第601条:賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
裁判所は更新料特約が消費者契約法10条に違反しないと判断した


次に、裁判所がどのような判断を下したかを整理します。
大阪高裁は、更新料について「賃料の補充としての性質」と「円滑な契約更新の対価としての性質」を持つものと認定しました。
本件の更新料15万円は賃料4万7800円の約3.12か月分に相当しますが、契約期間が1年であることを考慮すると、更新料を月額に換算した場合の実質賃料は約6万500円になります。
裁判所はこの金額水準が年間の賃料収入に占める割合として高額とまではいえないと判断し、消費者契約法10条に違反しないとしました。
判決では、最高裁平成23年7月15日判決(民集65巻5号2269頁)を引用し、更新料特約は賃貸借契約における合意の内容として基本的に有効であるとの考え方が示されました。
消費者契約法10条は「民法等の任意規定の適用による場合に比し消費者の権利を制限し又は義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」を無効とする規定です。



更新料特約は原則として有効ですが、金額が高額すぎる場合は無効とされることもあります。
民法第1条第2項:権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
耐用年数と残存価値の計算方法を把握しておくことが重要になる



クロス・カーペット・クッションフロア等の耐用年数は6年です。要は入居期間が6年以上であれば、原状回復費用は発生しない(0円)ということになります。
さらに、更新料の問題とあわせて、退去時の原状回復費用についても理解しておくことが大切です。
本件のように4年間入居した場合、クロス(壁紙)の耐用年数6年に対して残存価値は約33%まで下がっており、仮に退去時にクロスの張替え費用を請求されても借主の負担は大幅に軽減されます。
更新料と退去時の原状回復費用を合わせて考えると、入居期間中にかかる総コストの全体像が見えてきます。
入居前に更新料の金額だけでなく、退去時に発生しうる費用についても契約書で確認しておくことが、トラブルを防ぐ最善の方法です。



更新料と原状回復費用の両方を契約前に確認しておくと、退去時の負担を予測しやすくなります。
民法第621条:賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に回復する義務を負う。
この判決から学ぶ更新料特約の有効基準と退去時の対処法


- 最高裁は更新料特約を原則有効としつつ高額すぎる場合は例外を認めている
- 更新料が無効と判断されるかどうかは賃料との比率や契約期間で決まる
- 更新料に疑問がある場合は専門機関への相談が有効な手段になる


判決の要点を理解したうえで、更新料の有効性がどのような基準で判断されるのかを確認しましょう。
ここでは、最高裁の判断基準、更新料の有効・無効を分ける具体的な要素、そして更新料に疑問がある場合の対処法を解説します。
最高裁は更新料特約を原則有効としつつ高額すぎる場合は例外を認めている


まず、更新料特約の法的な有効性について、最高裁の判断基準を確認します。
最高裁は平成23年7月15日の判決で、更新料は「賃料の補充」「賃貸借契約を円滑に継続するための対価」としての性質を持つと判示しました。
そのうえで、更新料条項が賃貸借契約書に明確に記載されており、賃借人が認識して合意している場合には、原則として有効であるとしています。
ただし、更新料の額が賃料に比べて高額すぎる場合や契約期間に照らして不相当に高い場合には、消費者契約法10条により無効と判断される可能性があると最高裁は示しています。
本件の大阪高裁判決は、この最高裁の基準に従って賃料の3.12か月分の更新料を「高額とはいえない」と認定したものです。





更新料が高すぎると感じた場合は、まず賃料との比率を確認することが重要です。
民法第90条:公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
更新料が無効と判断されるかどうかは賃料との比率や契約期間で決まる


加えて、更新料特約の有効性を判断するうえで裁判所が重視する具体的なポイントを確認しましょう。
まず、更新料の金額が賃料の何か月分に相当するかという比率です。本件では3.12か月分で有効とされましたが、賃料の5〜6か月分を超える更新料は高額と判断される可能性が高まります。
次に、契約期間との関係です。契約期間が1年の場合に賃料の3か月分であれば、年間の支払い総額に占める割合は一定の範囲に収まりますが、契約期間が2年で同じ更新料であれば実質的な負担は軽くなります。
更新料を月額に換算した実質賃料が近隣の相場と比較して著しく高額でないかどうかも重要な判断要素になります。
裁判所はこれらの事情を総合的に考慮して、更新料特約が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するかどうかを判断しています。



更新料の妥当性を判断するときは、金額だけでなく契約期間や周辺相場との比較が大切です。
民法第604条:賃貸借の存続期間は、50年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、50年とする。
更新料に疑問がある場合は専門機関への相談が有効な手段になる


最後に、更新料や退去費用に疑問がある場合の具体的な対処法を確認します。
まずは契約書を確認し、更新料の金額と賃料の比率、契約期間を整理しましょう。
本件の判決基準に照らして更新料が高額すぎると考えられる場合は、まず賃貸人や管理会社に減額交渉を試みることが第一歩です。
交渉で解決しない場合は、消費者センターや法テラス(法律支援センター)への無料相談を利用し、法的な助言を受けることをおすすめします。
既に支払った更新料であっても、消費者契約法10条に照らして無効と判断される場合には、不当利得として返還を請求できる可能性があります。





更新料に関する疑問は一人で抱え込まず、まず専門機関に相談してみましょう。
民法第703条:法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
よくある質問
まとめ
この判決は、賃料の3.12か月分の更新料特約は消費者契約法10条に違反せず有効であり、支払った更新料の返還は認められないことを示した先例です。
更新料を支払う前に、その金額が適正かどうかを賃料との比率や契約期間から判断し、疑問がある場合は早めに専門機関に相談することが大切です。
この記事のポイントを振り返ります。
- 更新料は賃料の補充と契約更新の対価としての性質を持つ
- 賃料の3.12か月分の更新料は消費者契約法10条に違反しないと判断された
- 最高裁は更新料特約を原則有効としつつ高額すぎる場合は例外を認めている
- 更新料の妥当性は賃料との比率や契約期間で総合的に判断される
- 疑問がある場合は消費者センターや法テラスなどへの無料相談が有効


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