特約有効の理由とは?裁判所が示した適正な原状回復費用の決め手
この記事では、賃貸借契約を交わしたXさんとYさんの間で起こったトラブルとその裁判の結果について述べています。Xさんが契約終了後に求めた清掃費用と鍵交換費用の返還を巡る裁判で、裁判所の見解と判決が示されています。

監修者
サレジオ学院高等学校を昭和57年に卒業後、法曹界への志を抱き、中央大学法学部法律学科へと進学。同大学では法律の専門知識を着実に積み重ね、昭和62年に卒業。
その後、さまざまな社会経験を経て、より専門的な形で法務サービスを提供したいという思いから、平成28年に行政書士試験に挑戦し、合格。この資格取得を機に、平成29年4月、依頼者の皆様に寄り添った丁寧なサービスを提供すべく「綜合法務事務所君悦」を開業いたしました。
長年培った法律の知識と実務経験を活かし、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えできるよう、日々研鑽を重ねております。
日本行政書士会連合会 神奈川県行政書士会所属
登録番号 第17090472号
賃貸借契約
賃貸借契約を交わしたのは平成19年5月27日のことです。
賃借人のXさんは、賃貸人Yさんから月額5万6000円の家賃と2000円の共益費、そして5万6000円の敷金を払う契約で借りることにしました。
同じ日に、Xさんは貸室の鍵を交換する費用として1万2600円も支払いました。
契約期間は2年間でしたので、Xさんは快適な生活を期待していました。
- 契約期間: 2年
- 賃料: 月額56,000円
- 共益費: 2,000円
- 敷金: 56,000円
- 鍵交換費用: 12,600円
トラブルの発端
トラブルが発端したのは契約終了後の平成20年2月17日でした。
Xさんは契約通り貸室をYさんに返還しましたが、Yさんは特約に基づき、敷金からハウスクリーニング費用2万6250円を差し引きました。
さらに、Yさんは鍵交換費用1万2600円も取得しました。
これに対し、Xさんはこの特約が無効であると主張し、返還を求めて訴訟に至りました。
- ハウスクリーニング費用: 25,000円(消費税別)
- 賃借人Xの費用負担特約
- 契約終了時の清掃を行う
- 退去時の汚損の有無及び程度に関わらず負担
- 専門業者による清掃
- 消費者契約法10条違反に該当しない
- 鍵交換費用負担特約
- 明確に合意されている
- 賃借人Xの防犯に資する
- 鍵交換費用: 12,600円
- 消費者契約法10条違反に該当しない
裁判および判決
裁判所はまず、清掃費用負担特約に関しては契約書や説明書に明確に合意されていることから、有効であると認定しました。
一方、鍵交換費用負担特約についても、契約締結時に説明がされていたため、こちらも有効とされました。
裁判所は、特約の金額や内容が適正であり、消費者契約法にも違反していないと判断し、最終的には賃借人Xさんの請求は棄却される結果となりました。
- 清掃費用負担特約について
- 第一審: 特約は合意されていないとして敷金26,250円を返還
- 控訴審: 特約の合意が成立しており、消費者契約法10条違反に該当しないため、賃借人Xの請求を棄却
- 鍵交換費用負担特約について
- 第一審: 特約が成立しているとして請求を棄却
- 控訴審: 特約の合意が成立しており、消費者契約法10条違反に該当しないため、賃借人Xの請求を棄却
- 最終判決: 原判決における賃貸人Y敗訴部分を取り消し、賃借人Xの請求を棄却
まとめ
この記事では、XさんとYさんの賃貸借契約に基づくトラブルが焦点となっています。
Xさんは契約終了後に清掃費用と鍵交換費用の返還を求めましたが、裁判所は両方の特約が有効であると判断しました。
特に重要なのは、特約が契約書や説明書に明確に記載され、適正な金額であったことが裁判所の判決の決め手となった点です。
この判決は、特約の重要性とその内容の明確な合意が消費者契約において重要であることを示しています。
高齢者の皆さんにとっても、契約の内容をしっかりと理解し、記載された特約に注意を払うことが大切だと感じていただける内容となっています。
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